新陳

「新陳代謝」という言葉は、夏目漱石の造語であるとは驚きですが、夏目漱石は、何をもとにしてこの言葉を考えたのでしょう。この時期、同じように数々の造語をつくった人に福沢諭吉がいますが、彼のつくった造語のほとんどは、英語の訳からつくられています。では、新陳代謝という英語は何かというと、「metabolism」です。この単語を見ると、私たちの世代では恐縮してしまいます。それは、「メタボリックシンドローム」に使われているメタボだからです。ですから、「メタボリックシンドローム」の日本語訳は「代謝症候群」の意となります。では、このメタボをどうしてこのような漢字に当てはめたかというと、新陳代謝という四字漢字は、意味から来ています。
まず、「新陳」ですが、この言葉は最近、この新陳代謝という四字熟語でしかあまり使わなくなりました。「陳」という字は、おおむね三つの意味があります。一つは、「陳列」などと使うように、「並べること」を表します。二つ目の意味に「陳述」と使うように「述べること」があります。「の・べる」には、主に「述べる」を使いますが、他にも「宣べる」「陳べる」と使うことがあり、1、考え・意見などを口に出して言う。2、文章で表す。という二つの意味があります。三つ目の意味として、「陳腐」などと使う時の「古いこと」があります。ということで「新陳」とは、この四番目の意味で、「新しいことと古いこと。新しいものと古いもの。」ということになります。
「新陳代謝」が[古いものと新しいものが代わる」ということはわかるのですが、では、「謝」という漢字にはどんな意味があるのでしょう。この「謝」という漢字は、いろいろな所に使われる漢字で、いろいろな意味がありますが、そこにはおもしろい共通点があります。「謝」という字は「言」+「射」から出来ています。この「射」は「弓を射る」という意味です。これにことばを表す「言」がつくことで、「弓を射た後の緊張感を口にする“言”のこと」ということで、それまでの負担や緊張がなくなり、心がゆるむ、気楽になったことを表しています。つまり「謝」というのは個々の行動を表す語ではなく、個々の行動へのその後の反応を表す語なのです。ですから、まったく正反対のいろいろな意味があるように思えますが、一環しているのは、ある人からされたことへの反応に使うことです。まず、ありがたいという気持ちを表すことから、「感謝する」という漢字に使います。また、相手からの働きかけに対して、断わるということから、「謝絶」というように使います。そして、相手にわびるということから、「陳謝する」というときに使います。この時の「陳」は、考えなどを口に出すという「のべる」という意味です。ということで、「心の中で陳謝する」というのは、口に出していないので、間違った使い方です。そして、最後が、「勢いが無くなってしまうこと」を表します。これが「代謝」です。
新陳代謝は、なにも体や肌にだけ言えるのではなく、いろいろな世界でも必要です。保育の世界の新陳代謝は、「実践から摂取した子どもの姿を素にして、生きていくために必要な力を作ることであり、子どもが持っている好奇心、探究心、意欲、思考力などを、その後の学びに使えるような形に変えることであり、このようにして、保育の質が新しく生まれ変わるためのエネルギーを生み出しているわけなのです。」ということになるのでしょうか。

新陳” への5件のコメント

  1. 先日の民主党代表選の決選投票で、某候補が背広を脱いで野田氏に投票を促すように同志にサインを出したことで野田氏が逆転勝利を果たしました。民主党もこれまでの「古い上着」(小沢支配)を脱ぎ捨てて、党内の新陳代謝が進むのか、と思いきや、新代表が選んだ幹事長は、しっかり古い上着を着込んだ方でした(笑)。親分と二人で政界の二人羽織を演じてくれるのか?この老獪な政治家の動きから目が離せません。かたや、この党が仕分けで凍結したはずの豪華な公務員宿舎の建設が始まったそうです。歳出のメタボの削減を目指したはずなのに、また税金の無駄づかい。マニフェストも実現できず、歳出の削減もままならないことを民主党は国民に心から陳謝すべきです。

  2. 「新陳代謝」、よく使う四字熟語ですが、「新陳」についてはその意味を考えたことはありませんでした。そしてこの場合の」陳」の意味を知るにはブログにあるとおりその漢字の字義を知る必要があります。「並べる」「述べる」そして「古い」。そしてこの「新陳」は新旧。なるほどとまたまた感心したところです。夏目漱石の漢字力の凄まじさを思い知りました。確かに私たちは日々「新陳代謝」です。この新陳代謝の事実からしても「お変わりありませんか?」という時候のご挨拶には「えぇ、おかげさまで、毎日変わっています。」とお応えしなければなりませんね。変えてはならないことを変えないため変わる、これこそが「新陳代謝」の本義。できるだけ変わろうとしない業界は老廃物の権化と化すことでしょう。

  3. 新陳代謝という言葉が造語であるということ、そして造語であるということはどんな思いで漢字を当てはめたのか、そんなことからここまで考察できるのかと驚きました。何度も何度もこの言葉を書き込んでいると思いますが、意欲があればどんなことからも学ぶことができるということですね。いつもそのことを忘れてしまいます。
    最後の言葉は、保育者・教育者の言葉としていただくことにします。ありがとうございます。

  4.  「新陳代謝」という言葉は私もよく聞く言葉ですが、夏目漱石が造ったとは知りませんでした。勝手なイメージで中国から来た言葉だと思っていましたが、まずこの「新陳代謝」という言葉を聞くときは、体に関しての本やテレビを見るときに聞く言葉です。一つ一つの文字も分解し、意味を汲み取っていくと、「新陳代謝」はブログの最後に書かれているように体や肌にだけ言えることでないですね。色々な世界でも通用する言葉で、進化し続ける為には大切な言葉です。藤森先生が言われた保育の世界での新陳代謝・・・ずっと大切な言葉にしていきます。

  5. 文字の力というのはすごいですね。改めて「漢字」の奥深さ、日本語の楽しさをブログを読んで思いました。新陳代謝という言葉は体のことだけではなく、最近では企業の古い体制を変えるときにも使われることがありますね。どうもまちがった使い方のように感じたんですが、そうではないということが分かりました。言葉の意味、内容を知ることで気を引き締める気持ちになりました。どんな世界にも「新陳代謝」をして発展・成長する気概が必要ですね。

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