企業論理

 店舗の戦略を見ると、時代を感じることがあります。そのニーズに対して合わせるような対応をする職業と、そのような傾向を把握したうえで、修正をしなければならない職業がある気がしています。それを判断するためには、常々確認が必要な「流行と不易」の見極めです。時代に合わせることが必要なことと、時代によって変えてはいけないものを見る力です。子どもに関わる仕事をしてる人たちは、子どもの育ち、発達は守らないといけませんし、子どもに対してつける力は、将来子どもたちが大人になったときに必要な「生きる力」を見通して「今をよりよく生きる」ことを目指すことです。しかし、どうしても、その子どもの親は、わが子を思ってのこととはいえ、その時代に対応することを求めることがあります。「今をよりよく生きる」ことを、「今を心地よく生きる」「今を楽に生きる」ということと少し違うのです。
 そうはいっても、企業における成功している経営には参考になることが多くあります。外食チェーンである「一蘭」と「餃子の王将」の違いは、その戦略にありますが、この2社の共通点は、「ドメイン」の考え方にあるとエムエス研修企画代表取締役の渋井正浩氏が分析しています。ドメインには3つの要素の考え方があると言われています。1、顧客⇒誰に(ターゲット顧客)、2.機能⇒何を(顧客ニーズ)、3.技術⇒どのように(どうやって実現するのか)の三つです。この場合は、「技術」とは製造技術やIT技術だけにとどまらず、接客や仕入れ、販売などの幅広い意味での技術を含んでいるもので、外食産業では、店舗形態やメニューに具現化されるものです。
 このドメインを考えると、幼児施設はどのように考えればいいのでしょうか。しかし、そこでまずぶつかるのが、最初に抑えなければならない「顧客」の絞り込みです。特に、保育所では、「誰に」が2元化されています。「親に代わって」という施設であれば、「親」の思いがニーズになりますが、それは、「子どもの代弁者」としての「親」であるはずが、しばしばその思いが食い違うときに何を優先するかが問題になります。
次のドメインである「機能」である「何を」にしても、絞ることが難しくなります。店舗と違って、そのラーメンの味を味わいたいからとそこを訪れるのと違って、来てからその店のラーメンを食べてみて、このとんこつ味は自分の好みと違うからしょうゆ味にしてと要求することに対して、では、しょうゆ味の店に食べに行けばとは言えないからです。次の「技術」にしてもいろいろと問題があります。「どのように」という内容である「どうやって実現するか」ということは、顧客、機能を絞ることができないと、その技術にも工夫が要ります。まず抑えなければいけないことは、ラーメンをつくって、それを提供する側と、それを提供されて食べる人というように役割がはっきり分かれるのに対して、保育という仕事は、子どもが成長することは、「成長させる側」と「成長する側」に分かれるのではなく、「自ら成長することを保障する」ということは、一方的な受け身の立場にはならず、受けての主体としての行動になることと、親と子どもの関係同様、共に影響しあって、ともに育つという要素があるからです。
どうも、企業論理を、教育、福祉の分野に当てはめるのには無理があるようです。最近、その分野に企業参入が盛んで、企業的な発想は保護者に支持されることも多いようですが、私はドメインを園に持ち込んでも無理なことが多くある気がします。それは、人を育てるということは、人格が伝わる仕事であり、柔軟性が求められることが多いからです。