影響

 1989年にイエール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士によって「EQ」という考え方が示されました。EQとはEmotional Intelligence Quotientの略であり、日本語では感情指数と呼ばれ、学問上では「EQは、情動状態を知覚し、思考の助けとなるよう情動に近づき、情動を生み出し、情動や情動的知識を理解し、情動面や知的側面での成長を促すよう情動を思慮深く調整する能力である」と定義されているものです。そして、ダニエル・ゴールマン氏によって、「EQ:こころの知能指数」という書物の中で有名になったのですが、ビジネスで成功を収める人々は皆このEQが高く、Fortune誌が選ぶトップ企業500社のうち約8割の企業がEQを人事制度に採用しているとも言われています。それによって、それまで学歴重視であったビジネス界を大きく揺るがすものになったのです。
アメリカでも当時、学歴が重視される社会でした。そこで、サロベイ博士とメイヤー博士のふたりがIQの高さとビジネスでの成功度合い(年収や役職など)との関連性を調べた所、「IQの高さとビジネスでの成功に関連性はない」という結論にたどり着きました。では、「ビジネスでの成功者たちに共通する要因はなにか?」と彼らの能力、性格、ビジネススタイルなどを調査していった結果、成功するための能力として、「自身の感情を的確に把握し、感情のコントロールがうまいだけでなく、他者の感情の状態を感じ取る能力にも長けている。それによって、周りの人間と良好な関係を築くことができ、結果として優秀な成果を上げていた」という結果が出たのです。つまり「対人関係能力に優れていた」というのです。そこで、この能力をEI(感情知能)と名付け、後にダニエル・ゴールマン氏によって「EQ」として世に知られることとなるのです。EQとは「心の力」いわゆる「人間性」を示すもので、昨日のブログの言い方で言うと、IQは表の道。EQは裏の道といえるかもしれません。
では、EQを構成する要素は、そのような能力のことを言うかというと、1:自分の感情を感じ取る能力、2:最適な感情を創り出す能力、3:他者の感情を把握し、相手の言動の中での感情の位置づけを理解する能力、4:自己成長を促すために感情をコントロールする能力と言われています。そして、これらの能力が優れているほど周囲の人間と円滑なコミュニケーションを取ることができると言われています。この能力は、ビジネスの分野だけでなく、「職種や役職関係なく全ての人間に必要とされる能力である」と言われています。それは、現在、学力というのは「コミュニケーション能力」であると言われているからです。
以前のブログで、米誌タイムが発表した「世界で最も影響力のある100人」を取り上げましたが、この「影響力」とはどんな力なのでしょうか。EQを世に広めたゴールマン氏は、社会的相互作用の結果を生み出す能力を影響力と呼んでいます。他人と向き合って、コミュニケーションをとり合う場合は、さまざまな感情、考え、理屈が飛び交います。それらをどのように調節し、良い結論を導き出すか、そこで働くのが影響力という社会的才覚であり、この技術に長けた人がいれば、うまく治まるのですが、そんな人が居ない場合は、座は白けたものになり、治まることもないだろうと言っています。
 たとえば、相手の怒りを静め,事態を平常におさめるためには相手との関係を建設的に処理しなくてはなりません。このとき、権威を持っている人、地位の高い人、年長者などは、ともすると強い力を発揮して押さえつけようとしがちです。しかし、それでは強制的な押しつけになってしまいます。相手をみて、どの程度の力の行使が必要かを見極める社会認知能力を発揮し、強い力を発揮したい衝動を押さえる自制力が無くては適切な影響力を発揮することはできないのです。
他人に影響を与える人は、社会的認知能力に長けた人なのです。

影響” への6件のコメント

  1. EQもIQと同じようにテストで数値化することができるのでしょうか。子どもの能力を数値化して相対評価するのはあまり好きではありません。親はそれを望むでしょうが。例えば、保育園での生活の中で、友達を思いやったり助けあったり、話し合って物事を決めていくような経験を一杯させてあげることで自然と身についていくものだと思います。その発達の過程を見て欲しい。年齢や発達や性格も違う子どもたち同士がより複雑に関わる環境が大事で、○○式といった特別なメソッドは必要ではない。今や、大学生の就活でも幅を利かせるEQ。社会にあっては、企業のトップや国を動かす政治家にも求められる能力です。日本で「政治は三流」と呼ばれるのは、この能力に欠けた人物が政治の中心にいるからです。

  2. 久しぶりの投稿です。悩んでいるときにも先生のブログは栄養剤になりますね。自分のEQがまだまだ未熟だとつくづく思う今日このごろです。でも、人の上に立つ人には必要な能力なんですよね。間近の大きな仕事を納めるべく、今まで以上にEQを磨いていこうと思います。ありがとうございます。

  3. うーん、読んでいて自分のEQについて考えたのですが、ずいぶんこの力が低いことがよく分かりました。自分の感情を感じ取ることについてはできるのですが、他者との関係の中でそれをコントロールすることができていない点が問題です。ということはコミュニケーションの力も低いということで、分かってはいたのですがやはり少しショックです。でも、そのできていない点を気づかせてもらえたということだけでも喜びたいと思います。

  4. IQ,EQの数値とは双方共基本、無縁に育ってきました。私自身時々相当時代から遅れているなと感じることがあります。EQなりEIが「ビジネスの成功者」に共通して高いとは知りませんでした。そして、企業がこれらEQ,EIに強い関心を寄せていることも。私自身のこれまでの経験から照らしても「対人能力」あるいは「コミュニケーション能力」がとても重要な時代に今私たちは生きていることがわかります。しかも、世界はグローバル。私たち日本人の価値観のみを諸外国の人々に押し付けても無意味なように、日本の中において、たとえば、年上だからというだけである価値意識を年下の者に押し付けることも最早意味がないと考えています。EQ,EI共に今後は意識していきたいと思います。

  5.  先日、電車に乗っている時、隣に座っていた若い男性がゲームを始めました。特別意識していたわけではありませんが、何のゲームをしているのかな?と気になり、ゲームの画面に目を向けたら「EQ」を高めるゲームをしていました。その時は「EQ??」と思い、少しだけ内容を見ていました。まず、画面に4種類の表情をした人の顔が出て「この中で、憎悪の表情は?」「悲しい時の表情は?」などの問題がいくつか出題されていました。どういうゲームなんだろうと思って見ていましたが、このブログを読んで謎は全て解けました。ゲームでEQを身につける・・・そもそもEQは対人関係の能力ですが、ゲームで高くなるのでしょうか?おそらく無理だと思いますが、しかし逆の視点から見ると、それだけ今の時代に対人関係で悩んでいる人が多い為、そういうゲームが出来たのかもしれません。対人関係をゲームで身に付ける時代まで日本は来ているという事は、かなり大きな問題だと思います。

  6. 「自然にわいてくる感情を抑制すること」これは確かに苦しいですね。私も自分の感情がすぐに出る方なので、自分の感情をコントロールするということがなかなかできません。「己に克つ」という境地にいくにはまだまだ道は遠いように思いますが、心がけていきたいと思います。「心の安らかさを保つ」ことは自分の中につねに余裕が生まれる事につながるように思います。

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