真摯

 オリコンが発表する「2010年年間“本”ランキング」(全国の推定売上部数に基づき集計、期間は2009年11月23日?2010年11月21日)の総合(BOOK)部門第1位を獲得した本は、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの“マネジメント”を読んだら」略して「もしドラ」(岩崎夏海・著/ダイヤモンド社)で、いまだにそれが続いています。2009年12月の発売から累計発行部数181万部(書籍172万部、電子書籍9万部)も売りあげているそうです。また、昨年、最もブレークしたアイドルは、AKB48というグループです。その二つが最強タッグを組んで、来年6月公開予定の映画が製作されています。総合プロデューサーを務めるのが、このAKB48など様々な大ヒット作を生み出してきた作詞家、秋元康氏です。そして、12月から「スーパージャンプ」(集英社)にて漫画化、今年の3月からはNHK総合にてテレビアニメ化の放送が始まっているようです。
 この「もしドラ」の中で有名なフレーズに「マネージャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことができない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。」というドラッカーの言葉があります。この「真摯」という言葉を、最近は政治家たちの答弁で「真摯に受け止める」というように簡単に使いすぎる気がします。「マネジメント」という本の中でドラッカーは、「真摯さの定義は難しい。だが、マネージャーとしての失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない。」と言っていますが、だからといって、そんなに難しいことではなく、私は日本人の大切にしていた「まじめ」ということのような気がします。
 精神科医である和田 秀樹氏は、「まじめの崩壊 」(ちくま新書) [新書]という本の中で、こんな事を書いています。「日本の経済成長を支えたのは、日本人のまじめさであった。数多くの場面で、この国ではまじめを前提として、さまざまな仕組みが作られ、維持されてきたのだ。しかし、社会を見渡すと、日本人のまじめさはすでに崩壊している。精神医学からの性格の変化、競争させない教育、アメリカに倣った拝金主義などを通して、なぜ、まじめが崩壊したのかを探っていく。そして、まじめを前提とした日本に、まじめの崩壊がどのような影響を与えるのかを考察する。」
 このような真摯さを欠くマネージャーは、組織を破壊させるとドラッカーは警告しています。それは、こんな人だと言っています。「強みよりも弱みに目を向ける者」「何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者」「真摯さよりも頭の良さを重視する者」「部下に脅威を感じる者」「自らの仕事に高い基準を設定しない者」「実践家ではなく評論家である者」というタイプは、マネージャーとして不向きなのです。しかも、それは、後天的に獲得できない資質だというのです。
 最近、いろいろなところで、チームワークの在り方について聞かれることがあります。チームについて嘆く管理職がいますが、まず、チームワークが取れない職場は、そのマネージャーによるマネジメントができていない場合が多く、それは、上記の資質の問題のような気がします。ただ、それは後天的には獲得できないということに関しては、あまりにも切ない気がしますが。