左右脳

 2月5日の日経新聞の夕刊に「脳にみる男と女 北澤茂さんに聞く」という特集がありました。サブタイトルは、「助け合ってこそ能力輝く 気配りは女性が得意」というものです。北澤さんは、神経生理学者で、最近、主に脳のなかでの情報統合の研究に携わり、男女の脳の使い方の差や自閉症の解明、治療法の開拓に取り組んでいます。
 北澤さんは、脳の使い方が違う背景には進化も絡んでいると考えています。「いまはイクメンがはやり始めていますが、人類の長い歴史では育児、子供の面倒は女性が担ってきた。言語能力が未発達で泣くとか片言しかしゃべらない幼い子供の意図を読み取って、コミュニケーションをとる。赤ちゃんに抑揚豊かに語りかける。右脳を使いその能力にたけた女性のいる集団の方が子供の言語能力が発達し、集団として力を持つ。そんな流れがあったとしても不思議はありません。」
 10年ほど前に、男女の違いについての論文を書いたのですが、当初、反論もあったそうです。男女平等であるということが、男女同質であると思われていたり、差を認めることは差別につながるとして否定されたりしていました。しかし、最近は、男女の違いを示す結果が、次々と報告されています。「脳の言語機能は左脳というのが100年以上続いた通説でした。朗読の声を聴かせてみると、確かに男性はほとんどが左脳だけで話を聴いている。ところが、大半の女性は話を聴いている時に右脳の対称的な部位も使っている。時間的に短い音や単語レベルの言語処理はもちろん左脳ですが、時間的に長い文章全体の理解となると左右両方の脳を使っているのです」という理由が、先の長い間女性が担ってきた育児に関係があるのではないかというのです。
 「男性と違い、女性は腕力にものをいわせるわけにはいかない。対立を極力回避して賢く生きることができるように、話し方から相手の心、気持ちをしっかり読み取る能力を高める方向に行ったとも考えられます」この違いを理解することが相手を認めることにつながるのです。「違いから言えるのは、お互いの理解が大事ということです。男性は時に女性が論理的に話をしないと言ったりします。でも、実際は全体の状況が見えているのは女性なのに、男性は左脳で言葉通りにしか話を聴く力がなくていらいらしているのかもしれない。女性も男性は相手の気持ちを読むのが不得意なのでデリカシーに欠けると分かれば、鷹揚になれるでしょう」
どうしても相手に対して何も分かっていないと腹を立てることがありますが、実は、それらはお互いに悪気でしているわけではないのです。社会を考えれば、これまで以上に「お互いを知って補い合うことが何より重要でしょう」と北澤さんは言います。「ざっくり言ってしまえば、相手の気持ちを読むのが得意なのが女性。一方、男性は左脳だけを使い、抑揚とか連想にとらわれずに、言葉通りに受け取って判断する。その場の空気に左右されず、冷静で決断力があるとも言えるし、鈍感と言ってよいかもしれない。個人差があるからあくまで平均的な話ですが」
 「自分たちの脳を知るのは社会を知ること」とする北澤さんは、「すべてにおいて完璧な脳はありません。男女だけでなくだれでも脳に違いがあり、どこかに得意、不得意がある。それが様々な才能、ダイナミックな社会につながっている。社会の根底には脳があります。よりよい社会をつくるには自分の脳を知ることが大事だと思います」とまとめています。
 この言葉は、私は、「脳」という生理学的な表現ではなく、「特性」「個性」に置き換えてみるといいと思います。「子どもは、必ずどこかに得意、不得意があります。それが様々な才能、ダイナミックな社会につながっていきます。社会の根底を人それぞれの特性が支えています。よりよい社会をつくるには、我が子の特性を知り、それを活かすことが大事だと思います。」ということは、今日の保護者に向けての講演で話したことです。