10月8日のダイヤモンド・オンライン メールマガジンに面白い問題が書かれてありました。こんな問題です。
「最近、子どもに対する虐待が本当に増えたよね。ネグレクトとかもよく話題になるし」「この前見た資料だと、統計を取り始めた1990年に比べて、児童虐待の相談件数は30倍以上に増えたんですって。30倍以上よ!」「いやな時代よね」「本当に」「でも、30倍以上ってすごいわね。平成時代になって、どんどん若い親が無責任になっているのかしら。それとも、昔に比べて、子どもに対する愛情というものが薄れたのかしら」
このような会話はよく聞かれます。しかし、この議論には問題点があるのです。この問題点のことを“Apple to Orange”というそうです。それは、本来、単純に比較してはいけないものをそのまま比較してしまい、間違った推論をしてしまうというものです。
 例に出された会話は、児童虐待の相談件数が、ここ20年ほどで30倍以上に増えたことを理由に、若い親が無責任になった、あるいは子どもへの愛情がなくなってきたという推論をしています。しかし、そもそも、児童虐待の相談件数は、本当に児童虐待の実態件数を反映していると言えるでしょうか。見方を変えて言えば、20年前は、児童虐待の数が本当に現在の30分の1以下だったのでしょうか?常識的に考えれば、やはり急増しすぎの感があります。昔だって、たとえば育児ノイローゼから児童を虐待する親はいたでしょう。
 児童虐待の報告件数から、虐待件数を推測してしまったのです。というのは、報告件数、相談件数が増えた可能性を考えると、1)マスコミ等の報道によって児童虐待に対する関心が増した結果、昔だったら相談しなかったような人でも、相談してくるようになった。2)児童虐待というものに対する認識の基準が厳しくなった。たとえば、昔であればちょっとした躾として許容されたような行為(例:軽くつねる)が、あざが残るなどして、児童虐待ではないかと疑われるようになったなどが考えられます。それは、「ネグレクト」などの報告件数も似たような傾向にあるでしょう。「ネグレクト」というような概念は比較的最近のものだからです。そんな理由から増えたように見える数字になってしまっているだけです。
 最近は、よく統計的な数字が出ることが多いですが、数字は、1つの数字のみでは意味を持ちません。別のある数字(過去の数字、予算の数字、他社の数字など)と比べて、初めてそこに意味合いが生まれます。しかし、その比較する数字の定義はどうか、調査対象が同じであるか、集計方法が同じであるか、調査した時期や場所はどうかを考慮する必要があるのです。そして、本当に比べて意味のある数字同士となっているのかを考えないといけないのです。これを、“Apple to Apple”になっているかを考えることが必要であると言っています。
 「最近の若者は」「最近の親は」「最近の子どもは」「昔は良かった」というような言い方は気をつけなければなりません。