私の園には、「省」という字がつかわれています。そして、園には「三省」という保育の振り返りの観点が三つ掲げられています。このときに「省」という字を見て、どのような印象を持つかは人によって違うようです。私がこの字を使うときには、「かえりみる」という意味で「せい」と読みます。ある人は、厚労省などに使われるように、「しょう」と読みます。また、ある人は、「はぶく」と読んで、除かれるというイメージを持ちます。そこで、字統という辞書を読んでみてもなんだかはっきりしませんでした。しかし、「47ニュース」というサイトに、文化勲章を受けた漢字学者の白川静さんの研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画がありました。小山鉄郎さんという共同通信社編集委員兼論説委員が、白川静文字学をやさしく紹介しています。その漢字の中に「省」という字が開設されていました。
私が、絵画指導をしていたときに、子供たちに目鼻がない顔に、目や口やまゆ毛を置いて、いろいろな顔の表情を作ってもらったことがありました。顔の表情が変わるのは、おもに目とまゆ毛の傾きによることを子供たちは気がつきました。ですから、この二つが美しければ顔が美しいことになるので、「眉目秀麗」という言葉があるくらいです。小山さんは、まず、「眉」について解説しています。
古代文字では、横形にかかれた「目」の上に「眉」があります。これは単なる眉ではなく、呪術的な力を増すための眉飾りをつけている字形なのだそうです。「眉」に飾りをつけ「眉」と「目」の力を強調したのです。確かに、この二つを強調することによって、顔に神秘的な表情を表したのでしょう。この眉飾りのついた漢字に「省」があります。「省」という字は、「目」の上に「少」が付いていますが、この部分が眉飾りだといいます。なぜ、呪術的な力を増す眉飾りをつけた目が必要だったかというと、その目で地方を見回り、取り締まることが「省」のもとの意味だそうです。さらに自分の行為を見回ることに意味を移して「かえりみる」になり、見回った後に除くべきものを取り去るので「はぶく」意味となったようです。こう考えると、「はぶく」という意味の「省」は、除くべきものをとり除くということなので、いわゆる事業仕分けかもしれません。
 「直」という字も眉飾り関係の漢字だそうです。これは「十」と「目」と「 」を合わせた形で、この「十」の部分が眉飾りで「少」の省略形です。つまり「十」と「目」とで「省」のことになります。「 」は塀を立てる意味です。つまり「直」は「省」に「 」を加えた形で、ひそかに調べて不正をただすことという意味になり、そこから「なおす」意味になったそうです。
 「徳」も呪術的な力を増す眉飾りをつけ、各地を見回ることを表す文字だそうです。この「徳」という漢字は、「十」「 (ヨコメ))」「彳」「心」でできた文字です。「十」と横長の目である「 (ヨコメ))」の部分は「目」の縦横が違いますが、「直」の字から「 」を除いた部分と同形です。「彳」は十字路の左半分の形で、道を行くことです。そういう人が持つ本当の力は、その人の内面から出ていることが自覚されて「心」の字形が加えられて「徳」の字ができ、「人徳」「道徳」などの「徳」の考えが生まれたのだと言います。
 「省」という漢字は、「直す」につながり、「徳」につながる、なかなかいい漢字です。

” への5件のコメント

  1. 改めてご解説いただきましたが、何年も前から漢字の意味からとても素敵な名称でそして何より発音してもいいなあと憧れのようなものも感じます。
    最近、仕事でよく遭遇しますが、学童さんや園児さんの各種申し込み袋のお名前欄のお名前が読めないので特に感じます。
    たとえは大変宜しくないですが、日本語の「特攻」が「KAMIKAZE」という英語になったように、近い将来、先生のご理念が世界に広まり、省我が「SEIGA」という英語になり先生のご理念を示す単語になるような気がしてなりません。

  2. 「省」の字の成り立ちを通して、漢字のもつ意味の奥深さを感じています。大変僭越なことですが、藤森先生のお名前の「平」と「司」もとてもいい字をお使いだと思います。「平」は先生の平等大慧な精神と温和なお人柄を、「司」は保育の世界の指導者としてのご活躍のお姿を象徴していると勝手に思っています。名は体を表す。さて、私はどうなんだろう?

  3.  「目」という漢字に漢字を組み合わせることで色々な漢字に変化し、変化した後の漢字の意味も「目」に関係する意味になっています。冷静に考えれば普通の事かもしれません。「省」に関しては反省の省という字もあり、自分の行為を見回る事と、見回った後に除くべき物を取り去る事で「はぶく」
    漢字一文字の意味は特別考えたことはありませんが、「省」だけでも、とても立派な意味があり、そして他の漢字に繋がるとは、省我の「省」はとても素敵な漢字なのですね。

  4. 「はぶく」の意味が見回った後に除くべきものを取り去るということで、「かえりみる」とのつながりがよく分かりました。常に行動を省みて、おかしいと思うことは省くことは、どんなときでも必要なことです。今の自分にとってとても大切な言葉です。徳につながっていくのはまだまだ先のことですが、「省」を大事にしたいと思います。

  5. 今回のブログを読んで、端的に、漢字は凄い、と思いました。本家本元の中国における漢字についてはあまりよくわからりませんが、日本語における「漢字」はまずその音に注目させられます。すなわち、一口に「漢字」と言っても音の側面から、漢時代の音、三国史の呉の音、そして日本から留学生が盛んと渡海した唐の音、そして我が国の音で表されます。「省」が「せい」や「しょう」あるいは「はぶ」くという音で表されるのは以上のことの例です。まぁ、日本語が世界中の言語の中でも難しい語の部類に入れられる所以の一つがこの漢字の読み方でしょう。そして次に意味。「省」の一字を取っただけでも「見回る」「取り締まる」「かえりみる」そして「はぶく」という意味があるのですね。実に奥深い!さらに「呪術的な力を増すための」という部分が私としてはとても気にかかります。これはこれでもっと反応したいところですが、今回はここまで。

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