フィンランドの「キッズスキル」という手法をいくつか紹介しましたが、また、どこかで残りのステップが紹介できたらと思っています。このように、フィンランドの取り組みはとても参考になることが多いのですが、それだけではなく、その取り組みから、子どもたちにどんな力をつけていくのか、そのためにどんな教育方法がとられているのかという点でとても参考になることが多くあります。

読売新聞より
そのひとつに、「起業家精神教育」というものがあります。それについて、昨年の夏ころに、第15回「よみうりほっと茶論」の中で、東海大国際文化学部教授の川崎一彦さんと北海道教育大教授の庄井良信さんが、紹介していました。
今や、世界の中では、製造業では中国が大躍進をし、いわゆる先進国は製造業から「知業」へ移行しています。知業とはソフトや情報、デザイン、ブランドなどの知的財産を生み出す産業です。この発想の転換に日本は乗り遅れている感があります。フィンランドでは90年代前半に当時最大の貿易相手国だった旧ソ連が崩壊し、不況に陥りました。しかし、90年代後半には、戦後最大の経済成長を遂げたのです。それは、一言で言えば、知業化が進んだためであり、そのための教育をしてきたからだと言われています。そのための教育のひとつが「起業家精神教育」なのです。
フィンランドでは80年代から、起業家精神を「外的」「内的」の二つに分けて考えるようになったそうです。外的起業家精神とは物やサービスの提供で付加価値を創造することで、いわゆる日本でよく言われるような起業家精神というものです。それに対して、内的起業家精神とは、創造性や自信、柔軟性、活動、勇気、イニシアチブ、リスク管理、協調性など、起業家としての資質を言います。この内的起業家精神をつけていこうという教育です。その教育は、フィンランドでは、「大企業に勤めようが公務員であろうが、必要になる」と早くから考えられていて、教育省も就学前の早い段階からこの精神を学ばせる必要性を認識していたと言われています。
今、世界では乳幼児教育が、教育では最優先に考えられはじめていますが、この取り組みも幼児教育の一環として取り組まれています。川崎教授の話では、東海大付属の小中高校では、このフィンランドモデルの教育を実践しているそうです。具体的には、中学生にオリジナルの札幌ツアーを企画させたり、自分たちの校舎の新しいデザインを考えさせたり、付属幼稚園では車を作るプロジェクトをさせたりもしました。この試みは、創造的で勇気があって、目的意識が明確で、協調的で根気強く、ほかの子とうまくやっていける――そんな子供を育てることを目指していると言います。
この「内的起業家精神教育」は北欧諸国に共通したものかどうかというインタビューに対して、川崎氏は、「この言葉は1980年代にフィンランドで初めて使われ始めた。90年代にはスウェーデンなどにも広がり、一般的に使われている。フィンランド以外の国は、まだ結果を立証できる段階になく、PISAの順位表の上位には現れていない。しかし、保育園から大学までスウェーデンで教育を受けた私の子供を見ていても、日本に比べ、向こうでは「考えさせる教育」が行われている。」と答えています。
これからの学力が「コミュニケーション能力」「問題解決能力」のほかに、「創造性」「自信」「柔軟性」「活動」「勇気」「イニシアチブ」「リスク管理」「協調性」などが必要になってくるでしょう。
アマゾンから「フィンランド式キッズスキル」が届いたので、早速読み始めました。なんだかゲーム感覚で面白そうです。藤森先生の解説を期待しています。幕末から明治期にかけて、日本は封建的な農業国家から富国強兵によって近代国家に変身を遂げたわけですが、大きな時代のうねりの中で、起業家精神を発揮したのが、坂本竜馬や岩崎弥太郎たちです。彼らを育んだのが江戸期の寺子屋教育だとするなら、第3次産業革命といわれる現在、もう一度寺子屋教育の精神を蘇らせることができないのでしょうか。学校を「教師が子どもに教える場」ではなく、「子どもたちが共に学びあう場」に変えていかないと、とてもフィンランドにはかないそうもありません。
起業家精神教育と聞くと、そんなことが学校で必要なのかという話になってしまいそうですが、創造性や自信、柔軟性、活動、勇気、イニシアチブ、リスク管理、協調性と聞くと、どれも大切なことで、だからこそ教育の中にそれを高める要素が入っていなければいけないと思えてきます。このような発想が大事なんでしょうが、あまり聞かない話ですね。世界との距離がずいぶんと近くなっている現代ですが、日本は他国の動向の情報をあえて遮断しているんでしょうか。未来を生きる子どもたちのために、大人の本気を今こそ発揮すべきだと思うのですが。と偉そうなことを言いながら自分に喝を入れています。
「北海道教育大教授の庄井」さんの話は一昨年のフィンランドシンポのときお伺いすることができ、またお子さんの経験を分かりやすく話して頂きました。とても魅力的な子育てだと感心したことを思い出しました。企業家精神教育entrepreneurial spirit education の entrepreneurial は北欧及び中欧の幼児教育には普通に取り入れられています。今回のブログではその精神教育を「内的」と「外的」として紹介しています。日本でも学者の間では当たり前のこととなっていることでしょうが、乳幼児教育養護の現場では「へっぇ?企業家精神?」というリアクションが普通でしょう。日本における「学者」のみなさんの役割とは一体何でしょうか?川崎先生や庄井先生にはもっと頑張ってもらいたいと思いました。これもないものねだりか?
初めてPISAの学力調査のグラフを見ました。藤森先生の講演から日本の学力は低下していると聞いていましたが、実際にグラフで見ると改めて実感しました。フィンランドの「起業家精神教育」と聞くと難しそうに聞こえますが、将来、どの職業に就いても必要な能力を身に付ける事ができる教育方法とは、さすがだと思いました。内容もさすがと思いますが、それよりも今ではなく、未来を見据えた感じが日本と大きな違いのような気がします。