手作り郷土

 いろいろな街に行くと、その町の顔があります。それは、様々な特徴を持っています。以前のブログで紹介した青森県の八戸港の蕪島は、ウミネコの一大繁殖地で、シーズンには3万羽を超え、「ミャー、ミャー」とまさに子猫そのものの鳴き声が波間に聞こえることから「日本の音風景百選」に選ばれています。また、平等院表参道の商店会約160mには多くのお茶屋が軒を連ね、茶を焙じる香ばしい香りが街角に漂っていることから「かおり風景百選」に選ばれています。また、昨年連れて行ってもらった奥能登の白米の千枚田は、「人と自然が織りなす日本の風景百選」に選ばれています。ここでは、高低差約50mの急斜地に小区画の水田が耕作されていて、平地が極めて少ない自然環境に立ち向かって生きてきた、奥能登の水田開発の歴史的遺産といえます。
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これもブログで紹介しましたが、私が以前「NPOフュージョン長池」の副理事長だった時に、この地域での活動が平成13年度都市景観大賞「美しいまちなみ賞」の大賞を受賞し、その受賞式に列席したことがあります。この賞は、空間の美しさに加えて、景観形成のための地元(公、民)の活動や、地域活性化・観光交流面への波及効果など、ハード・ソフト両面から様々な工夫や努力が行われている地区を総合的に評価されたものです。それは、当時、地域の景観の美しさではなく、地域の活動の美しさが評価されたとしてうれしかった思い出があります。
このように、美しさには、音であったり、かおりであったり、活動であったりすることがあります。今週初めに訪れた富山市八尾町は「手づくり郷土賞」を受賞しています。yatuomati.JPG
この賞は、地域の個性、魅力、活力を創出している良質な社会資本や活動を広く募集、発掘し、これらを全国に広く紹介することにより、社会資本整備にあたっての創意・工夫を促し、個性あふれ活力のある地域づくりに資することを目的として、昭和61年度に創設された国土交通大臣表彰制度です。
この八尾町は「越中八尾 おわら風の盆」として毎年たくさんの観光客が訪れるところです。その町並みは、「江戸時代につくられた当時のたたずまいを色濃く残し、どこか城下町の商人町を思わせる」といわれています。そこで行われる「おわら風の盆」は、毎年9月1日から3日にかけて行なわれている祭りで、越中おわら節の哀切感に満ちた旋律にのって、坂が多い町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露します。地元の人の話では、艶やかで優雅な女踊り手は、編みがさに顔を隠し、声を出さず、未婚の25歳以下の女性に限ると言っていました。また、その調べが観光客を魅了する哀調のある音色を奏でる胡弓を、以前この地を訪れた時に、目の前で弾いてもらい、私も少し弾かせてもらう体験をしました。
この「おわら風の盆」には、たくさんの観光客が訪れるのに、普段の町には高山に見るような、また、金沢にあるようなしゃれたグッズの店や民芸品の店などがほとんどありません。地元に人に聞くと、それにはあるポリシーがあると言います。「八尾に暮らす人々が大切に守り育んできた民謡行事であり、町民の生命ともいうべき特別な存在です。ですから、全国に名の通った民謡行事としては観光イベント的な要素は少なく、したがってお越しいただいた皆様をもてなすことはあまり上手ではありません。」こんな思いが「手作り郷土賞」なのかもしれません。
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手作り郷土” への4件のコメント

  1.  全国各地には音、かおり、風景など特徴がある地域には様々な賞があるのですね。例えば、平等院がある通りは歩いたことがありますが、お茶の香ばしい香りで「香り風景百選」に選ばれているとは知りませんでした。今まで旅行などで何気なく歩いている所でも、実は何かの百選に選ばれていた風景や通りがあったかもしれません。富山の八尾「おわら風の盆」は私も知っています。一度だけ家族旅行で実際に見た事がありますが、あまりにも人の多さで、よく見ることはできませんでした。しかし踊っている女性はとても美しく男性はとても力強く踊っている風景は鮮明に記憶に残っています。

  2.    八尾よいとこ おわらの本場 二百十日を オハラ 出て踊る
       見たさ逢いたさ 思いが募る 恋の八尾は オハラ 花が散る
    数年前、立山の帰りに富山駅前の郷土物産館で、初めておわら風の盆の映像を見ました。哀調を帯びた胡弓の音の響き、ゆったりと落ち着いた踊り、いっぺんで魅了されました。その唄は、日本の民謡の中でも最難度といわれ、古くから多くの歌い手たちの精進と工夫で完成されたそうです。八尾はタレントの柴田理恵さんの故郷で、毎年この時期には必ず帰省するとか。9月1日から3日までは、終夜に渡って賑わう八尾の町も、それが終わると何もなかったように普段の静かな暮らしに戻る。観光のための祭りではなく、あくまでも地域の伝統文化としての祭りを大事にする姿勢にとても好感が持てます。

  3. 〇〇選でピンと来るのは「名水百選」です。昨年訪れた熊本・阿蘇山の麓の名水・白川水源を思い出しました。「水源」つながりでやはり同じく熊本県は水俣市の水源に案内して頂いたことも良い思い出です。「百選」にはなりませんが東京には「湧水57選」があります。私が住んでいる近くにも湧水があり、この「57選」の一つに数えられています。そして私が勤める園ではその湧水を利用しています。考えてみると極めて贅沢なことです。その湧水を植栽の散水に利用したりめだかや睡蓮の場に活用したりしています。「おはら風の盆」は見たことがありませんが私には実に馴染みがあります。切手の中に「ふるさと切手」があります。この「おはら風の盆」がその切手の図案として採用され発行されているからです。「哀切感に満ちた旋律にのって、坂が多い町の道筋で無言の踊り手たちが洗練された踊りを披露」する様子がしっかりと図案化されています。実際の踊りを一度は観てみたいと今回のブログを読んでいて思ったところです。

  4. 八尾町の取り組みは大事なポイントにきちんと力を入れている感じがいいですね。盛り上げるために無理をして、そのことが大事な部分がおかしくなってしまうとしたら意味がないことになってしまいます。自分たちの強みは何かをきちんとおさえた上でどこにどのように力を入れるか、地に足のついた取り組み方は参考になります。

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