「オーシャンズ」のような野生動物を描いた映画が話題になっていますが、野生動物を描いた小説にも傑作が数々あります。私が子どもの頃、図書室で借りて夢中になった物語のひとつに「シートン動物記」があります。この物語は、アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンによって書かれたものですが、彼は主に動物作品を書いており、全部で55編もあるそうです。また、彼は、美術大学にも入学していますので、その物語の挿絵も彼自身で描いています。彼はどうしてそんなに野生動物に魅せられたのでしょうか。
彼は、全集の各巻の前書きで、野生動物について語っています。「物語の結末がすべて悲劇で終わっているということは、物語が真実を語ったものだという、何よりの証拠である。なぜなら野生動物の最後は常に悲劇的な終局を迎えるものだからである。」「威厳、優雅さ、知力、逆境の巧みな利用、反抗に基づく両極の悲哀などが、以前の本と同じ形で示されるであろう。」などは、彼の作品を読んでも感じることです。
私が覚えている有名な作品に「ロボ-コランポーの王様」という作品があります。この作品は、彼の出世作で「動物記」の代名詞的な作品ですが、その名前を聞いてわからない人が多いと思いますが、日本では一般的に知られた標題は「狼王ロボ」といいます。アメリカ合衆国西南部、ニューメキシコ州北部に、コランポーと呼ばれていた地があり、その地の王は、一匹の灰色オオカミでした。土地の人びとは、力と知恵を併せ持ち、並み外れて強い集団を軍隊のように統率する彼に畏敬の念を込めて「王様ロボ」と呼んだのです。この話も悲劇で終わるのですが、決してロボを悪者としては読まず、その威厳の素晴らしさに感動し、結末に何とも言えぬせつなさを感じたものでした。
日本でも、野生動物を描いたら世界にも引けを足らない人がいます。その人は、「椋鳩十」です。彼は、長野県に生まれ、自然に囲まれた環境と、山好きの父の影響で、幼い頃から自然や動物と親しむ生活を送ってきました。大学卒業後、鹿児島県に教員として赴任してから作家活動を始め、戦後、鹿児島県立図書館長となりましたので、彼の作品のはずいぶん鹿児島弁が出てくるようです。
数々の作品の中で私が印象に残っているのは、「片耳の大鹿」です。鹿児島県の屋久島で、少年たちはシカ狩りの名人吉助おじさんたちと、冬の山へ片耳をもがれたシカの大将を撃ちに行きます。ところが急にあらしになり、ずぶぬれになった一行8人はほら穴にもぐりこみますが、そこには仲間をつれてあらしをのがれた大シカがいました。少年たちは、思わず、シカの群れの中へもぐって、冷えきった体をあたため、命が助かるのです。この作品で、命の尊さと、シカと人間との心のかよいあいが描かれます。他にも教科書に取り上げられている「大造じいさんとガン」という作品もありますが、おじいさんとガンの関係が描かれています。
あと、特に印象に残っているのは、ニコライ・A. バイコフの作品「偉大なる王(わん)」です。この作品は、私が子どもの頃、誕生日プレゼントとして両親からもらった紙芝居で知りました。 誇り高い一頭のシベリア虎の物語で、威厳と力と英知を備えた王者になるまでの一生を、克明に描く長篇です。季節ごとに変化する森林の美しい描写とともに、野生動物の生態を活写する、動物文学の最高傑作といわれています。
どの作品も、どんな動物でも誇りと威厳を持ち、一生懸命仲間を守りながら生きているリーダーのあるべき姿を描いていて、学ぶことが多かった気がします。
以前この欄で、鹿児島在住の時、椋鳩十先生にお会いしたことを書きました。当時勤めていたのが教科書会社で、先生の作品を掲載していた関係でご自宅に御挨拶にお邪魔しました。信州から鹿児島に来たいきさつや、鹿児島での思い出をお聞きしました。私が小学校の時、先生の本が大好きでよく読んだことをお話しすると、とても喜んでいただいたのを覚えています。今となっては、読んだ本のことはほとんど覚えていませんが、自然への畏敬の念、動物たちの生きるための知恵、人と動物の関わりなど、いろんなことを学ぶことができました。今の子供たちにはもっと動物文学に親しんでほしいですね。
なるほど、リーダーのあるべき姿は動物からも学ぶことができるんですね。動物の方が見栄や欲などでおかしな行動をとることはあまりなさそうなので、確かに勉強になるかもしれません。そこから得た学びを、知恵を使ってどう生かすかが大切なんだと思います。学びの場は無限にあるとつくづく感じます。
「シートン動物記」は子どもの頃読んだという記憶がありますが内容をほぼ忘れていることに今回のブログで気付きました。岩波の少年文庫を購入して読もうとしています。そしてその中に幸い「シートン動物記」もありやがて読むことになるでしょう。「椋鳩十」さんの作品はいろいろな機会に目にしました。子どもの頃の読み物や国語の教科書、そして最近読んだ椋鳩十作品は新聞に連載されていたものでした。今読んでも感動します。「誇りと威厳を持ち、一生懸命仲間を守りながら生きている」姿を作品の中に読み取ることができます。私たち人間もこうあらねばなりませんね。動物たちの生き様から学ぶことは多くあります。所詮私たち人間も動物。このことを忘れてはいけないと思いました。
小学校の頃でしょうか、祖父母の部屋に本棚があるのですが、滅多に見ない本棚を、ある時たまたま見ていたらファーブル昆虫記を見つけました。開いた瞬間に文章だらけで、すぐに読むのを諦めたのを思い出しました。
動物の王様と言われると、私の中ではライオンのイメージです。そしてディズニーの「ライオンキング」を連想します。幼い頃の主人公に親のライオンが「王様とはどういう存在なのか?」という教えを聞いて主人公のライオンが成長し、王様になるというストーリーですが、その教えの中で「仲間を守る」というのを覚えています。一見シンプルな考えですが、シンプルだからこそ、奥が深く、難しいような気がします。