いよいよオリンピックですね。今年の開会式はどんな趣向でしょうか。第29回オリンピック競技会北京大会の開会式はすごかったですね。逆にあまりにすごかったために、オリンピックという祭典の意味など考えさせられました。もうひとつ、世界中をびっくりさせたというか、中国の変化に驚いたことがありました。それは、開会式が、中国の歴史や改革開放後の姿を絵巻物の形で演出した中で、沢山の孔子の弟子たちが、おのおの竹簡をもって登場し、「論語」の名文句の一つ「四海之内、皆兄弟也」(顔淵第十二)を唱えたことでした。そのあとも、中国古代の4大発明の一つである活字印刷をモチーフにした演出でしたが、画面に大きく映し出されたのは印刷に用いる字体の異なる「和」の活字だったのです。それがなぜ驚くのかというと、これもまた「論語」の理念「和為貴」(学而第一)を表現していたからです。
この開会式の中心であった「論語」は、もちろん孔子の言葉ですが、35年くらい前には、中国の思想のうち、「法家を善とし儒家を悪とし、孔子は極悪非道の人間とされ、その教えは封建的である」とした時期があったのです。それから何十年たって、世界中が注目する世界の祭典オリンピックの開会式の中で、「論語」を、中国文化の誇りとして紹介したのです。
 この「和為貴」ということは「(有子曰く、礼の用は、和を貴しと為す。」ということで、これは「礼を行うには和が根本になければならない」と説いた有子のことばです。その言葉は、まさにオリンピック精神にのっとるものです。その言葉は、私がブログで取り上げた中庸の中の「喜怒哀楽がまだ発していないところを、中という。現したものがことごとく、中そして節であるならば、それは和という。この世において、中は、大いなる本である。和は、求めるものに達することのできる道である。中和に至りて、この世は、落ち着き、あらゆる物が育つ。」の「和」にも通じるものです。この「和」は、「庸」に通じ「共生」に通じるのです。
「和」の字の偏であるノギヘンは「禾・か」と読み、よい穀物、特に稲の粒粒が充ち満ち一杯についた稲という意味を持っています。それに「口」がついているわけですから、「和」の原義は、味しい食べ物が口に入ると、人はみなにこやかになり、心が安らいで、和やかな気分になってくるということです。中国最古の文字解説書「説文解字」に拠れば、「和」は「相応也」とあるように、お互いにつりあって、ふさわしい心のあり方を指しています。「和気あいあい」という言葉がありますが、「和気」はお米を大事にする心がけと、人としてお互いが調和しあい、和み合っていくことが必要であることを説いているのです。
一方、中庸には「故君子和而不流」とあるように、「君子というのは、他に対し反発せず受け入れ、和するが、これに流されてしまう事はない」とも言っています。何でもかんでも自分の理論で相手をねじ伏せよう、自分の考えを押し通そうということではなく、お互いの調和の道を探るべきです。しかし、それは人の言いなりになるということではありません。ただ人の言いなりでは自分を見失い、かえって正しい道は見つかりにくくなってしまいます。孔子の言う「和而不同」と同様なことです。その時に「中庸」という道が必要になるのでしょう。

” への4件のコメント

  1. 今回は和の原義について学ぶことができました。いい言葉ですね。このブログには共生、貢献、調和といった言葉がよく登場します。お話の中でもこの言葉が中心にあることが多いように思います。今まではあまり意識していなかった言葉ですが、何度も何度も考えているうちに、何かを決断する際にこの言葉が頭に浮かぶことが多くなりました。ここからスタートする考え方が自然に身につくようになれば、「七十而従心所欲…」に近づくことができるんでしょうか。

  2. 確かに北京オリンピック開会式の演出には驚かされました。と同時に中国の中国たる姿を見たような気がしました。今回のブログでは文革時代の「論語」及び「孔子」の位置づけが紹介されていました。そしてその運動の影響を私たち日本の若者も被ったのではないか、と思います。若い頃、「論語」を古臭いものと思っていましたから。「和」の原義が「味しい食べ物が口に入ると、人はみなにこやかになり、心が安らいで、和やかな気分になってくる」と解説されています。ご飯を食しながら和む、という観点から和を捉えたことはなかったので「和」の意味がとても新鮮なものとして頭の中に入ってきました。そうそう、食育にも通じますね。そして君子は和して流されず、とあります。「お互いの調和の道を探る」・・・肝に銘じたいですね。

  3. 一昨日放送のNHKスペシャル「ランドラッシュ~世界農地争奪戦」では、自国民の食料を確保しようと農地を囲い込む「ランドラッシュ」と呼ばれる争奪戦が展開されている様子が紹介されています。地球温暖化による気候変動やバイオ燃料への転換によって、ここ数年世界で起きた食糧危機は、特に貧困層の多い途上国に深刻な影響をもたらしていて、大地震のあったハイチをはじめ、アフリカやメキシコなどでも国民の抗議活動が頻発しています。ところが、あろうことか先進国は自国民の食料を確保するために、アフリカや東欧の広大な農地の買収に走っている。仁義なき食糧の奪い合いです。「衣食足りて礼節を知る」ー人間はおいしい食べ物を欲しいだけ食べられることで心の平安も保たれ社会も安定する。今後、世界の食糧を調整する「食糧国連」のような機関が、「和」の精神で、世界の人々の共生を実現することを期待したいと思います。

  4.  考えると長野オリンピックの開会式はじっくり見なかった気がします。開催国の文化をアピールする開会式は、私が思っている以上に見る価値があったのかもしれません。そういう意味で北京オリンピックの開会式は論語を文化の誇りとして紹介したとなると、見てみたかったと思いました。
     「和」という漢字はブログにも書かれていますが、「平和」「場が和む」「和気あいあい」など優しい言葉が多く使われている印象を持ちます。そして少し前のブログで中庸が書かれていましたが、その中庸の中に「和」が出てきました。自分の考えを他人に押し付けず、他人の考えの言う通りにならないように、お互いの調和が大切。言葉の意味は分かりますが、まだまだ私には遠い課題のような気がします。

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