脳研究

 昨日紹介した今月号のニュートンは、“「脳」の研究の今”ということで、研究者たちが脳解明の最先端について解説しています。脳科学がいろいろな場面で言われはじめて久しくなります。育児、保育、教育分野でも盛んに脳科学が論議されています。確かに、子どもたちはいろいろな経験を脳で感じ、脳で覚え、次の行動を脳で考えます。私たちは今では、誰も「心で感じる」ということが「心臓」で感じるとは思っている人はいません。しかし、「胸が裂ける」「胸がすく」「胸が潰れる」「胸が塞がる」「胸に一物」「胸に迫る」「胸に畳む」「胸を躍らせる」「胸を撫で下ろす」など、いろいろなことを胸で感じます。そのかわり「頭で考える」「頭を使う」というように、考えるのは頭だと思っているようです。しかし、感じたり、覚えたり、考えたりはすべて脳であり、その違いは脳の部分の違いであって、心臓は、血液を全身に送り出す臓器であることは子どもでも知っているようになりました。
 しかし、子どもでも知っている脳の働きではあるのですが、実は、先端の研究者たちでも本当の脳の働きは解明されていないのです。ですから、単純に脳がどうだからどうしなければならないというようなことは言えないのです。たとえば、脳が早く完成するので、小さいうちにいろいろなことを教えなければならないだとか、乳児のころに英語をやらないとバイリンガルの脳にならないであとで苦労するとか、早期教育に結び付けてしまう人がいますが、そんな簡単な話ではありませんし、「坂の上の雲」の秋山真之が非常に英語が堪能であったからといって、彼は早くから英語をやっていたわけではなく、子どもの頃は、野山を友達と駆けずり回っていただけです。人間は、もっともっと複雑なものです。
 そうはいっても、先端の脳についての知識は知っておくべきだと思います。今月号のニュートンには、「成長する子供の脳では何がおきているのか?」という章があります。この研究は、成長期の脳の中で起きる神経細胞のネットワークの変化についての研究ですが、その仕組みの解明が、脳の発達障害の原因解明につながると言われています。
 脳の神経細胞のネットワークとは、神経回路と呼ばれるもので、このつなぎ目である「シナプス」の数は、どんどん増えていくのではなく、1~3さお前後までは急激に増えていくのですが、その後は徐々に減っていくということが1970年代にはわかっています。それは、神経細胞は、とりあえず最初は広く手をつないでおき、あとで不要な手を離すという戦略をとっているのだと言われています。「多めにつくってあとで減らす」方式のほうが、「必要に応じてふやす」方式よりも、周囲の状況の変化に敏感に対応することができるからです。
 たとえば、乳幼児が細やかな指の動きが出来ないのは、指を動かすための神経細胞のネットワークが必要以上に広くつながり合っているためです。成長と共に不要な回線がなくなって必要な回線だけが残り、細かい指の動きができるようになるのです。
しかし、最近の研究では、手のつなぎ方の変化だけでなく、神経細胞自体の性質にも巧みな変化が起きていることがわかってきたそうです。人間の不思議さは図りしれません。

脳研究” への4件のコメント

  1. 脳の研究の多くは、限られた対象者から特殊な環境の中で多くのデータをとり、その中からこんなことが言えるんじゃないかというもの見つけているんだと思います。人はいろいろですし、脳もいろいろなので、それが全員に当てはまる絶対的な答えと考えるのは怖いことだと思っています。でも、だからとって全く的外れと考えるのも違うと思っていて、そうした結果からどんな傾向を読み取るか、それを踏まえた上で人はいろいろなんだということを感じることが、いい接し方なのではないかと今のところは思っています。様々な人と関わり、様々な環境と関わり、その中で変化してく人間は、それだけを考えても不思議さを感じます。

  2. お茶の水女子大の榊原教授の「子どもの脳の発達・臨界期・敏感期」という本を読みました。生まれてから三歳児までの間にできるだけいろんなことを経験させたほうが、シナプスが増えて脳の発達にいいというのが、いわゆる三歳児神話です。(実は私も最近までそう思っていた)しかし、ハッテンロッカーらの研究によると、八ヶ月から十二ヶ月にピークに達したシナプス密度は、その後発達に従って減っていくのだというのです。つまり「シナプスが多いほど脳は優秀である」ということはまだ誰も証明していない。それどころか、様々な学習活動によって、余分なシナプスを刈り込む必要があって、それが十分でないと、発達障害の原因になるそうです。また、脳の臨界期も三歳でピークになるのではなく、おおよそ八歳までと考えるのが定説になっているようです。

  3. 「脳の研究」も盛んですが、遺伝子研究も盛んで、その研究の結果、遺伝子は自らを存続させるために協力し合うということが解明されてきている、とか。ならば、脳の働きの根本も種の保存にあるのでしょうから遺伝子同様「協力」が脳本来の働きなのではないかと想像します。また脳には脳本来の働きがあるわけですから「バイリンガルの脳」にするために早期英語を、というのも本末転倒な気がします。脳はそもそも自然でしょうから「不自然」なことはやはり脳の大敵なのでしょう。それから「必要は発明の母」と言われますが、「それが必要だ」と脳が判断すると「それ」が習得される。「必要」とはそもそも発達に合った自然なことでしょう。シナプスのこともおもしろいですね。シナプスのトリミングを想像します。

  4.  感情を表す時に「胸が○○」などの表現を使いますが、感じたり、考えたりするのは脳であるから、胸で感じる事はないですね。藤森先生の講演の中で赤ちゃんの脳の話しがあったのを思い出しました。やはり赤ちゃんは生まれてから何も知らないで、成長するごとにたくさんの事を覚えていくにつれてシナプスが増えるというイメージがあったので、それは全くの逆というのは本当に驚きました。ブログに書いてある指の動きの話しにしても、脳の不思議さ、人間の体というのは不思議な事がとてもたくさんあると思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">