学校では、いろいろなことを、教科書を使って学びます。私は、学校の学びは勉強なので、当然やらなくてはいけないものけど、つまらないものだという考えがあります。その勉強に使う教科書の内容もつまらないものだという印象があります。しかし、目的はいろいろな情報を子どもに伝えることとしたら、面白くしてもいいはずです。
最近、小学校で英語教育が始まっている学校が増えてきました。子どもたちは初めて英語に触れるために、歌を歌ったり、踊ったり、ゲームをしたり楽しみながら、まず英語に触れ合いさせます。子どもたちは、小学校に入学するとそのほかの強化に初めて触れます。国語や算数などですが、これらの教科では歌ったり、踊ったり、ゲームをしたりしないで、最初からきちんと椅子に座って机に向かっていわゆる勉強をさせられます。国語で文字を覚えるのにも、書き方ノートに「あ」から順に50音の練習をします。昔は、すべての文字を入れ込んでそれを一つの文章にしたのが少し前にブログで書いた「いろは」です。「いろは」47文字を声に出して読み上げ、その次にお手本を見ながら筆を使って書きながら一字ずつ覚えていったのです。
では、漢字はどのように覚えたのでしょう。やはり、ただ新出漢字を順に覚えていったのではなく、1,000の異なった文字が使った漢文の長詩である「千字文」というテキストを使って子どもたちは漢字を覚えていったのです。この「千字文」という漢字の初級テキストは、中国で6世紀に作られ、日本にもほぼ同時期に伝わりました。ひらがなを覚えたあとは、次にコレで漢字を覚えたわけです。これによって漢字を学ぶことは、平安時代では貴族の必須科目でした。が、室町期になると、特に庶民はすっとばして、「庭訓往来」を使用するパターンもあったようです。
この「千字文」の構成は、四字一句にまとめて、250句の詩にしてすべて違う1000字が表わされています。しかも、そのそれぞれの一句ごとにちゃんと意味があります。歴代の皇帝のエピソードとか、当時の都や宮廷の様子とか、道徳や教訓についてとか各分野にわたって書かれてあります。見事としか言いようがありません。
これを使ったのは、6世紀初頭に南朝の梁の武帝が、文官の周興嗣に作らせたもので、一夜で千字文を考えたそうです。それを考えるのにかなり頭を使ったために、一晩で白髪になってしまったという伝説があります。そんな傑作ですから、日本だけでなく、多くの国の漢字の初級読本として使用されました。また、この注釈本も多数出版されています。また、書道の手本用の文章にも使われています。
千字文の最初の句は「天地玄黄」です。「天地玄黄」という言葉は、古代中国の占筮の書であり、儒教の基本テキストである四書五経の五経の筆頭に挙げられる経典である「易経」が出典のようです。天は黒色ということで、玄人の「玄」に通じ、赤が含まれた色で、奥が深いとか、雄大さも表わしています。また、地は黄色であるということですが、中原とか華北とか呼ばれる地域には、黄土が広がり、中国では、大地は黄いろいというイメージなのでしょう。ですから、後に続く句は、「天地玄黄。宇宙洪荒。」で、宇宙は洪荒なりということで、なんと雄大な始まりなのでしょう。
文字を覚えながら教養も身につき、面白い世界を覗ける学習の始まりです。
目的と手段について考えますが、目的がしっかりしていれば手段はなにも1つでなくてもいいと思っています。手段にこだわるのではなく、目指すべきところについてこだわり、そこの議論を広げていく必要があると思っています。今はまだまだ足りていないと思います。それは置いといて、「千字文」はすごいですね。四字一句にまとめて250句の詩にし、すべて違う1000字が使われていると想像しただけでクラクラします。こんな漢字の勉強もあるというからも、勉強のあり方は広がりのあるものなんだと感じます。
私が最近自覚してきたことがいくつかありますが、そのうちの一つが、どうやら私は字を書くことが苦手の域を超えてLDの領域にあるのではないか、ということです。漢字や片仮名もひどいですが「ひらがな」は家内におおむね注意されます。そしてそういう注意をされるときには平仮名の元の漢字を示してもらいその筆順を再確認して平仮名を書いてみるようにしています(それでもなかなか上手には書けません、トホホ・・・涙)。平仮名の書き方を学ぶ時にはその元の漢字も同時に学んでもいいのではないだろうかと思います。字の音を学ぶだけではなくその成り立ちも教えてもらえれば字を書くことが楽しいものになるでしょう。我が子は漢字自体は好きなのようですが「書くこと」は私と似ているようです。それでも父親の私より自分の方が上手だといつも誇らしげです。低レベルなことで恥ずかしい限りです。
アルファベット26文字をすべて使って文章を作ることを「パングラム」というそうです。もっともよく知られたパングラムが、”The quick brown fox jumped over the lazy dog”これはタイプライターのテストによく使われます。全部の文字が一度しか使われないと、完全パングラムになります。例えば、”Jumbling vext frowzy hacks PDQ.”どう意味でしょうか?26文字でも結構難しいのに、千の漢字を見事に駆使して、一度も重複しないで長大な叙事詩を創るとは四千年の歴史を誇る中国ですね。史上最高の完全パングラムです。今、もし同じことをするとしたら、コンピューターなら可能なのでしょうか。
確かに小中高の教科書を読んで、面白いという印象を持った記憶がありません。大切な事がたくさん書いてあるのだから、もっと子どもが楽しく読めるよう工夫したら、もっと勉強が楽しくなると思うのですが、そう簡単に作れる物ではないのですね。
小学校の頃の漢字の勉強は、特別な漢字ノートというものに書き込んで、一字ずつ覚えていました。中学に入ると自分で用意した漢字ノートに書き込んで勉強していたので、中国のように1000の漢字を四字一句にして250句の詩で勉強したのは面白い覚え方と思います。ただ一字ずつ覚えるのでなく、いくつかの漢字も同時に覚えることができ、それと同時に教養も身につくとは、とても便利なテキストですね。