電車の中吊り広告で、いいコピーを見つけました。「年齢よりも意欲だろっ。」というものです。写真には、三浦雄一郎氏が大きなリュックを背負って雪山の前に立っています。

確かに、三浦雄一郎氏は、エベレスト大滑降、七大陸最高峰スキー滑降など、数々の冒険で日本中を沸かせました。2004年と今年、70歳、75歳で2度も世界最高峰のエベレスト登頂に成功したことは、私たち団塊の世代を初めてして、中高年の人たちを、十二分に元気づけました。普通の人であれば、この年齢になると歩くこともおっくうになったり、足だけでなく、呼吸も苦しくなり、体力もなくなるのに、どうしてそれほどまでに元気なのか?と思います。また、なぜいつまでも挑戦し続けるのだろうか?そして、生き生きと輝いているのだろうか?不屈の冒険家として、いつまでも夢を失わず、確かな目標を立てて進む姿は感動します。そんな意味で、彼の生き方は、中高年世代の生きる師として、生きるモデルとなると思います。
しかし、この中吊り広告を読んで「?」と思ってしまいました。なぜかというと、この広告にある文章を読んでみると、「いくつになっても働くことのできる社会を」と書かれてあります。「働きたい、という気持ちに年齢制限はありません。身に付けてきた技術や能力を活かしたい。これは高齢者の強い想いであり、社会の願いです。」と書かれてあります。
この広告は、厚労省を初めてして、独立法人高齢・障害者雇用支援機構などが、高齢者の雇用促進のキャンペーンです。その趣旨には、こんなことが書かれていました。昨年、団塊の世代680万人の全員が60歳代になり、3年後の2012年には65歳に到達し、高齢化はさらに急速に進んでいます。しかし、わが国は厳しい経済環境がなお続いていますが、人口・労働力の減少と高齢化は確実に進行しています。このように多くの困難に直面しているときこそ、将来を的確に展望し、活力ある社会の構築に向けてわが国の高齢者の高い就業意欲と経験・技能を活かし、いくつになっても社会の支え手として活躍するとが出来る仕組みづくりに取り組むことが必要です。高齢・障害者雇用支援機構が昨年行った調査によると企業の3社に2社が「70歳雇用への取り組みが必要」と考えており、多くの企業では70歳まで働ける企業の実現を目指した具体的な検討を進める段階にきているようです。
しかし、このポスターを眺めていると、三浦雄一郎は、どう見ても働いているのではなく、仕事をリタイアした後、自分への挑戦、冒険をしている姿にしか見えません。昨年、ドイツに行ったときに、保育者たちが1週間のストライキをしていました。その要求のひとつが、定年が延長される中、「57歳定年」でした。「いつまで、私たちを働かせつもりか!」というものです。その背景には、退職後に充分な生活保障があるからでしょうが、一生懸命に働き、社会に貢献してきたのだから、老後は、自分の好きなことをして日々を過ごしたいというのでしょう。このポスターの三浦さんを眺めていると、好きなことには年齢が関係ないし、意欲は、好きなものだからこそ持てるのだと言っているかのようです。
だからと言って、私は早くリタイアしたいと思いません。それは、好きなことを仕事にしているからです。私が提案したいのは、今の子どもたちに、自分は何が好きなのか、何によって自分を発揮できるのかを見つけてほしい気がしています。そして、それを仕事にすることができれば、意欲的に生きていくことが出来ますし、世の中に貢献することができるのではないかと思うのです。
先日、商工会の新年交礼会の卸・小売部会の役員のため挨拶をさせられました際、以下のような要旨で恥ずかしながら短いスピーチをしました。
【「好きこそものの上手なれ」ということわざがある。その通りにできれば本人も周囲も幸せである。努力が苦にならず、放っておいても自分で力を付けていく。上司としてすべきことは「邪魔をしない」「機会を与える」「適切なアドバイスができる人を見付けてやる」程度である。
特に「好き」という意識がなかったものでも、人はできるようになると好きになるのが普通だ】
これは、まごうことなく、自分か書き貯めて大切にしておりますノートの自称【藤森語録】の一節を引用させていただいたものです。
よかったです~、どうやら間違ったこと言わずに済みました。改めてお礼申し上げます。
三浦雄一郎さんもすごい方ですが、父親の三浦敬三さんもアンチエイジングのお手本のような方です。日本の元祖プロスキーヤーで、還暦過ぎて海外での滑降を始めて、70歳でヒマラヤ、77歳でキリマンジャロ、99歳でモンブラン山系を滑り下りたというから半端ではありません。この親にしてこの子あり。父の背中を追って、三浦雄一郎さんもエヴェレスト登頂という偉業を成し遂げたわけで、とても素敵な家族ですね。自分は今年55歳。一つの人生のターニングポイントですね。好きなことを仕事にしていますが、これからの後半生、もっと大きな夢を描いてもいいのではと思っています。
短期的にみれば確かに60歳を過ぎても働いてもらった方がいいでしょうが、そうするのであれば、それ以上に子どもたちに力を注がなければ、長期的には大変なことになるでしょうね。子どもたちにどんな大人になってもらいたいかを考え、それに向けてどう動くかが中吊り広告に登場する日は来るのでしょうか。
70歳にもなって二度もエベレスト登山に成功させたのは、本当に凄いことだと思います。「年齢よりも意欲だろ」という言葉。とても良い響きです。私も年を取っても、何事にも挑戦し続ける姿勢を持っていたいと思います。ただ、確かにキャッチフレーズの下の文章を読むと、少々おかしな感じがします。もしかしたら写真は彼の仕事かもしれませんが、彼を知らない人が見たら明らかに自分の趣味をしている感じに取れます。
自分の趣味が仕事であれば、これほど幸せなことはないです。そうなれば年齢は関係なく意欲は常にあると思いす。
「好きこそものの上手なれ」と申しますが、「好き」でなければ何事も成就しない、と思います。高齢者の労働を奨励する電車の中刷り広告に対して「どう見ても働いているのではなく、仕事をリタイアした後、自分への挑戦、冒険をしている姿にしか見えません。」との見解は全くその通りだと思います。「自分への挑戦、冒険」が「仕事」と重なるなら「年齢」は関係ないと思います。それこそ「死ぬまで」その道を歩み続ける、これ以上のことはないでしょう。そして道として「仕事」を厚くしたり深めたりするにはあちこち歩いて見聞を広め、広めた見聞を基にして更に道楽を厚くし深めることが大切でしょう。まぁ、さまざまな制約があるのは無論ですが、その制約の中で道を楽しみたい、と思います。