論語の中の「吾十有五而志于學」ではありませんが、15歳という年齢は志を持つ頃なのでしょうが、昨年暮れにこんなニュースがありました。
「12月18日から行方不明になっていたオランダのヨット少女、ラウラ・デッカーさん(14)が20日、カリブ海のオランダ領アンティル、サンマルタン島で見つかり、無事保護された。」という記事です。
ラウラさんは、昨年夏にヨットでの単独世界一周をしたいと父親に打ち明けます。彼女は、両親がヨットで航海中に生まれ、生後4年間も海上で暮らした筋金入りのヨット少女で、6歳でヨットの操縦をマスターしたそうです。この彼女からの申し出に、航海経験豊富な父親は同意をして、学校に長期欠席の申し出を入れます。そして、全長8メートルのヨットで2年間の世界一周に9月1日から出航しようとします。ところが、オランダの児童保護当局が、13歳の単独航海は危険すぎることや、2年間も学校を休学するのは好ましくないなどとして中止を要求します。
ラウラさんの両親も娘の単独航海を支持しますが、裁判所は、航海実現には児童保護当局の同意が必要と決定しました。この判決後、ラウラさんは「航海はうまくできる。恐れていない」と述べ、世界一周の準備を進める決意を表明。各地に寄港することから、実際に海上で3週間以上一人きりになることはなく、学校の勉強も続けることを今後、当局に説明したいと話しますが、この依頼を拒否します。そして、オランダの裁判所は、未成年のラウラが単独で航海することに対して、計画の一時中止を命じ、10月末の航海の禁止という結論を出しました。理由は、「成長期にあるラウラにとって、精神的にも肉体的にも極限の状況に一人で立ち向かわなくてはならない可能性のある単独航海は、将来、取り返しのつかない危害をもたらす可能性がある」というものでした。その結果、ラウラの行動は、ユトレヒトの青少年保護組織の管理下に置かれ、今後2カ月間にわたり少女の精神面に与える影響を調査するよう決定しました。
現在、児童保護当局が、ラウラさんが航海に精神的に耐えられるかなど調べていますが、母親は、ラウラさんから反対しないよう頼まれていたのですが、娘の身を案じて反対に踏み切ります。その結果、両親は離婚、ラウラさんは世界一周を後押しする父親と暮らしているそうです。そんな状況の中で、最初のニュースにあるように、夢を打ち砕かれ、ショックになったラウラさんが家出をしたというのです。この家出によって、担当機関であるユトレヒトの青少年保護ビューローは、来年の7月まで、ラウラさんを、現在同居している父親から引き離し、しかるべき保護機関のもとで監督する、という結論をだしました。
このニュースが、オランダで議論になっているようです。それは、子どもの教育(成長)の第1義的責任は親権者にあるが、その親権者が、子どもの健全な発育を保護しない、あるいはできない状況にある場合には、公的機関が子どもの発達の権利を守らなくてはならないという原則と、親の判断をどこまで認めるか、それに対して、公的機関が、いつ踏み込むべきかという議論です。今回の場合、父親は、ラウラさんの航海技術を育て、見守り、そして、本人の夢を果たしてやろうと支援したことが、子どもの成長の障害になるという判断をつけたことにどう考えるかということです。そして、果たして、学校が子どもの成長に最善の場であるのか、と考える親もいることに対してどう思うかです。
親、学校、行政、それぞれの立場からの「子どものため」の考えかたが分かれるところです。
15歳の少女がヨットの単独世界一周に出るなんて、まず日本では考えられない。ましてそんな冒険を許す親は日本にはいないと思う。子どもを危険から守ることが「子どものため」なのか、自立を促すことが「子どものため」なのか、とても考えさせる話です。オランダは、『公的機関が子どもの発達を守らなければならないという原則』があるという点も日本と違う。日本のように虐待で子どもが命を落とすなんてことはオランダではないのでしょうね。昨日、アマゾンからリヒテルズ直子さんの「オランダの個別教育はなぜ成功したのか」が届きました。今年はオランダのイエナプランにこだわってみようと思います。
それぞれの立場からの「子どものため」の違いによって離婚にまで至ってしまったのは残念なところですが、このケースはどの立場も理解できます。子どものためと言いつつ、後ろから大人の事情がプンプン漂ってくるケースもあることを考えると、とても考えさせられる内容です。自分がそれぞれの立場だったらどう判断するか迷いますが、第三者として向き合ったとき、どの立場の考えがどうというのは別にして、こうした議論が行われることのすごさを感じています。
13歳という年齢で世界一周、しかもヨットで更には単独で挑戦するのは考えられません。もし私の子どもが、技術や経験を持っていたとしても、全力で止めると思います。しかし子どもの、そんな大きな夢を簡単に踏み潰してしまうのも心苦しいのは確かです…。ただ、これは親と子どもの間で解決する問題のような気もしますので、ここで児童保護当局や裁判所も出てくるとは驚きます。それも子どものためと思って行っていると思いますが、それぞれが子どものための考え方はやはり違うのですね。
「オランダのヨット少女」が「カリブ海のオランダ領アンティル、サンマルタン島で見つかり云々」、ということはラウラさん、大西洋を横断!したことになります。まずはこの快挙に驚きます。かのタイタニック号も氷山に激突して沈没した大西洋です。どんなルートを通って「カリブ海」に達したのかcurious Georgeが頭を擡げます。さて、オランダの大人たちはそれはそれは客観的に「こども」たちのことを考えさまざまな施策対策をそれぞれの立場で真剣にトコトン協議し講じています。今回の「ヨット少女」の一件を巡る「オランダの大人たち」の対応の根底には同国のこどもたちに対する悩ましいほどの真摯さを感じます。児童保護当局、裁判所、青少年保護組織とその対応の是非はともかく一少女の暴挙と片付けてはいません。それは「子どもの最善の利益」を巡って良い意味での喧々諤々を展開しているような気がします。