技術

 先日の日曜日に、福島県郡山市に行きました。それは、ある企業からの講演依頼だったので、まあ、半分付き合うの気持ちだったのですが、とても面白い体験をしました。主催者である「合同会社 地球と家族を考える会」の会長さんといろいろと話をしていると、何となく考え方が同じで、印象だけで活動は分からないということを実感しました。最初は会社の名前の「地球…」という名前がなんだか宗教じみていましたし、見学する予定だったモデルハウスの名前が「KUMIKO」というなんだか女性の名前のようなので、女性用の建物かと思っていました。すると、この「KUMIKO」とは、日本の伝統工法である木組みの技である「組子」に由来しているのだそうです。
以前、水俣に行ったときに、その地域の取り組みを「もやい」と言っていたのと同じで、「KUMIKO」という名称は、志を同じくする仲間で手を組んで、地域を活性化しようという取り組みを表しているのだそうです。また、そのモデルハウスは、この地で産まれたものをその地で生かしたいということで、100%福島の木を使い、その地域の風土に合った「地産地生の住まい」です。また、組子というように、日本古来の伝統工法に独自の技術を加え、金物に依存しない構造体を作っています。また、人が建物の中で過ごす時間は人生の9割を占めることから生きた人間が住むために、生きた材料を使い、自然エネルギーにこだわっています。
 日本におけるいろいろな技術は、もともとは中国大陸から伝えられたものが多いのですが、建築技法もそうです。しかし、その技法が日本の風土に合うよう様々な工夫がなされ、日本人の趣向に準じ、伝統技術として、今なお色あせることなく、それどころか、今の時代にもう一度見直されてきているのです。特に、鎌倉時代に再び中国と国交を回復すると、新形式の建築様式が伝来し、今までの建築様式を「和様」と、新建築様式を「大仏様」「禅宗様」と呼び区別されました。後の時代ではそれらが入り混じった様式「折衷様」が新しく実現されていき、「和様」と言われる日本独自の様式がつくられていったのです。
 鎌倉時代から受け継がれている日本の伝統的な木工技術に「組子」というものがあります。この技法は、細く割った木に、溝、穴、ホゾ加工を施し、カンナやノコギリ、ノミ等で調節しながら一本一本の木を、釘を使わずに手作業で組みつけていく繊細な木工の技法です。簡単にいうと釘を使わずに木を組み付ける技術のことをいいます。繊細なこの技術は、職人たちの伝統を守る心と情熱により、何世代にもわたって現代まで引き継がれてきました。今では、おもに障子や欄間にみることができます。
もともと伝統的な日本建築では、構造の軸になる部分は基本的に釘は使わず、ただ、「木と木を組み合わせて木栓のみ」で止めているだけです。それは、技術が低かったからではなく、あえて釘を使わないという、日本の風土が生み出した知恵なのです。中世になれば釘に不自由することはありませんでしたし、最近の釘よりもずっと質の良い和釘もありましたが、釘で木を殺してはいけないと木の本質を知っていたからこそ、中世の棟梁は釘を使うことはできるだけ避けたのです。また、日本では多い地震や台風等に対しての強さの秘密は、「木と木を組み合わせてこそ生きる」という基本的なことを、しっかりと守っている「貫」構造です。
子どもの遊びだけでなく、いろいろなところで、長い間残っているものは、経験上から今の科学以上の検証がされ、実証されてきたものが多いのでしょう。

技術” への5件のコメント

  1. ギビングツリーの会員集団を組子技法で建てられた城に例えれば、大黒柱は藤森先生で、toshi先生はじめ同じ価値観を持った全国の先生方が縦横に組み合わさって作られた難攻不落の城ですね。私ら業者でも、まあ、せめてくさびの一つにでもなれればいいですね。きっと何かお役に立てることがあると思います。それにしても、toshi先生、昨日はコメント5連発ですね(笑)。すごい!私なんか、一つのコメントを考えるのに、一日かかっています。頭悪いから、10回くらい読み返さないと書けないんです。

  2. 組子技法は柱を連続的に建て込んで壁にしたような工法なので、それぞれがしっかり自立していて、まとまるとなおかつ大きな地震力に対して耐力があるという、まるでGTメンバーのような技法ではないでしょうか。

  3. 今回のブログのように面白い出会いや体験につながっていくのは、強い思いがあるからなんだろうと感じました。偶然の出会いを意味あるものと受け取り、そこから様々な気づきを得られる姿勢は、まさに私が身につけたいものでもあります。自分にはまだまだ思いや覚悟が足りないんだと思います。行動、気づき、受容の大切さを、また教わりました。

  4. 「KUMIKO」と「組子」。スペルだけを見ると、女性の名前と勘違いします。それが木組みの技の名前が「組子」なんですね。釘を使わずにほとんどを木だけを使って建てた家はどのような物でしょう?なんだか想像ができません。障子や欄間は確かに釘などを使わずに組み合わせていますが、この技術が家を建てる為にその技を使うとなると、微妙な違いも許されないのでしょうね。日本の伝統的な木工技術というのは、人間の手作業なのに機械と同じくらいの正確さがあると思いますが、本当に素晴らしいと思います。

  5. yamayaさん、私の「5連発」には実は秘密があります。それは、一挙にコメントを5回分するためにその5回分のブログの内容をあれこれと考えながら日々を過ごしているのです。無論、四六時中考えていると仕事も生活もままならなくなりますから(ほぼ近いものはありますが)、時折しかも思いついた時に「あっ、このことをコメントしよう」ということでコメントしております。ですから、常にポイントがずれています。yamayaさんたちの的確さには適いません。さて、今回のブログはとても懐かしく拝読した次第です。「細く割った木に、溝、穴、ホゾ加工を施し、カンナやノコギリ、ノミ等で調節しながら一本一本の木を、釘を使わずに手作業で組みつけていく・・・」、父が大工だったものですから、このことを私は経験しました。「溝、穴、ホゾ加工を施し」、これを実際私はやってみました。私が溝を掘ったり、ホゾを加工した柱構造を持つ家が神奈川二宮町界隈に数軒あります。ちょっとした自慢です。

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