散歩

 今年の1月に「福沢諭吉展」に行ったときに、その展示構成がとても面白く感じました。その第一部は、「あゆみだす身体」というものでした。この展示の趣旨は、「一身独立して 一家独立し 一家独立して 一国独立し 一国独立して 天下も独立すべし」(中津留別之書)という諭吉の文章を引用して、「すべての始まりは「身体」にあり、健康を保ってこその、一家であり、一国である。」という「一人一人が丈夫な身体を作り、懸命に勉強して「独立」することが、世の中の出発点である」と、考えていた福沢を紹介しています。こう考えていた諭吉は、自身も毎日の運動をかかさなかったそうです。その中心が散歩でした。彼が創設した慶応の塾生と散歩党と称する同好会を作り、毎日散歩することを日課にしていたそうです。ということで、この第1部の展示に、彼の股引などの衣類や杖、散歩に行く塾生を集めるために使用したドラ等が展示されていました。また、ほかには、居あい抜きや脱穀も、福沢の日々の鍛錬の一つだったということで、居合い刀や臼杵の展示もありました。
sanpo.jpg
福沢諭吉は、すべての始まりは「身体」にあるということで、健康のために「散歩」をしていたようですが、もっと積極的な意味で散歩をしたことで有名な人に西洋最大の哲学者の一人アリストテレスがいます。彼は、よく学生を連れて、「散歩」をしながら学問の話をしていたそうです。この逸話はよく塾生と散歩をしていた諭吉と似ています。しかし、その動機は、アリストテレスの場合は健康と言うよりも、「散歩」をすることは、「発想」するのに適していることを知っていたからだとされています。最近の脳科学では、下半身の運動は、脳の前頭葉を活発にし、考える力や想像力などが強化され、認知症の予防になることも分かってきています。もともと、古代ギリシャ人は朝食・昼食・夕食・就寝の前に歩く習慣があったようですが、アリストテレスは晩年につくった学校での授業を「散歩しながら」おこなったといわれています。そこから名づけられのが「逍遥学派」です。「逍遥」とは「そぞろ歩き」のことです。
最近、テレビ東京の「カンブリア宮殿」という番組のゲストは、「ぐるなび」を作り、育てた会長の滝久雄でした。彼は、もともとは大手企業のサラリーマンでしたが、脱サラして、駅構内の交通広告の企画運営をしていました。その仕事の中で、公衆回線自由化をきっかけに、新しい情報メディアの可能性を探り続け、インターネットと出会って、飲食店の検索サイトである「ぐるなび」を開設したのです。いまの時代は、店探しは、インターネットや携帯が主流で、約8割の人が利用しているそうです。そのなかで「ホットペッパー」や「Yahooグルメ」など数ある飲食店検索サイトの中でもっとも多く利用されているのがこの「ぐるなび」だそうです。現在は、創業13年で、200億円にまで成長しています。そうなると、この会社の情報はとても重要で、その管理には気を使うでしょうね。また、会議も多いでしょう。番組の中で、この会長の滝久雄さんは、週に数回、皇居一周のウォーキング会議を行っていると言っていました。その理由は、「歩いているときに良いアイデアが浮かぶ!」ということと、「盗聴されないので、秘密の話ができる!」だそうです。
散歩は、健康にいいだけでなく、脳を活性化し、また、歩きながらの会話は、新しいアイデアを生み、その内容が漏れる心配もないというわけです。