生き物は、不思議な遺伝子を持っています。特に、人間はとても複雑で、自分のことでありながら、その働きは解明されていないことがほとんどです。ですから、いくら文明が進んだとしても機械であるロボットでは、人間に近づくことは程遠い道のりです。たとえば、人間の1歳児のころの動きの真似をするだけのロボットを開発するのにも何数十年かかるでしょう。それを、人間は数カ月で獲得してきます。
 赤ちゃんの運動機能は頭に近いところから始まり、首、腕、腰とだんだんに下がっていきます。また、体の中心から末端のほうに向かって進んでいきます。それは、事実としての発達ですが、なぜそのような発達を遂げていくのかを考えてみると、人は何のために生きるのかにぶち当たります。まず、基本は、どの生物でも同じですが、自分たちの遺伝子を子孫に残そうとします。そのために当面は、敵や災害から身を守らなくてはなりません。自分に近づいてくるものが敵か味方か、判断しなければなりません。ですから、最初は、まず目でものを追う追視ができるようになります。この行動は、のちに直立して歩くために条件である首のすわりの準備です。
赤ちゃんは新生児のころから準備がはじまります。生後3ヶ月ころまでは、大きな音にびくっとしたり、聞き慣れた声を聞くと落ち着くようになります。そして、次第にその声がする方に顔を向けようとするのです。生後3か月のころから音のする方へ顔を向けようとしたり、音のする方を目で追おうとします。ですから、ガラガラなど、音のする玩具を喜ぶようになります。それは同時に、首がだんだんとしっかりしてきたからです。そして、うつぶせで首をわずかに左右に動かすようになります。次に、少しあごを上げられるようになります。さらに月齢が進むと、あごを上げたままの状態で、自由に首を動かして左右を見ることができるようになります。こうなって初めて首すわりが完成したと言えます。このように首が自由に動かせるようになっていくのです。
 人は、何かを近付くことを知ろうと、音のする方に顔を向けるようになります。それは、自分に危害を加えるものかどうかを確かめる意図もあると思います。そして、その能力は、大人になっても、身を守るときに必要なものです。後ろから大きな音がすると、急いで振り返って、それが何かを知ろうとして、危険だとよけようとするのです。もし、忍者がそっと近づいてきたらわかりません。
 後ろから車が近付いてきたとき、その音で気がついて振り向き、脇によけます。しかし、最近ハイブリッド車や電気自動車は、構造的に音がしなくて危険と感じるという意見が、自動車ユーザーや視覚障害者団体等から寄せられています。そのため、国土交通省では「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」を開催し、対策のあり方について検討を行っています。7月に行われた第1回の会議では、「何らかの対策は必要であろう」という方向性が出されています。それを受けて開催された第2回目では、実際にハイブリッド車や電気自動車を走行させて、「どの程度気がつきにくいものか?」「どのような対策をすればよいのか?」という部分を体験したようです。そして、11月5日には、「疑似エンジン音の義務化」を軸にする対策案を発表しました。現在同省は一般からの意見を募っていますが、どうでしょうか。エコカーは、環境保護だけでなく「静音性」というメリットも生み出したのですが、人間というのは、難しいですね。ただ、現在のところ静音性を原因とした交通事故は発生していないし、エンジン車とハイブリッド車との間で事故発生率にも違いがないようですが。

” への4件のコメント

  1. 今日は小西行郎さんの講演会に参加してきて、赤ちゃんの育つ力のすごさを再確認させてもらいました。それをロボットで再現するにはどうすればいいか考えることに意味はあるけど、再現できると思ってしまうと決めてしまうのは怖さがあると感じました。単純に動作やその意味を取り上げればいいのではなく、つながりなどを総合的にみる視点が欠けてはいけないと思います。
    音についても情報の1つと考えれば、静かなエンジンが危険と感じるのは目からの情報とのズレで、「車が動く=大きな音がする」という認識を、時間をかけてでも改めていくことがこれからの時代の課題かもしれないと思ったりします。

  2. 最近やたらと街中でプリウスが目につくようになりました。エコカー減税の恩恵を受けて注文が殺到して、契約しても半年は待たないといけないようです。低速時はモーター走行なので「ウイ?ン」という静かな音がするので、街の騒音でかき消されることもあるかもしれません。だからといって、「車が接近しています」なんて言う音声も結構うるさいだろうし、メロディーを流したらゴミ収集車と間違えそうだし…。車の騒音ではなく、今度は静かすぎて問題になるとはなんとも皮肉ですね。

  3. 私も赤ちゃんなのかもしれませんが音にはとても敏感です。特に夜眠る時静かな状態でなければ基本的に眠ることができません。好きな音楽を聴くことが私にとっての睡眠導入剤になります。しかしその逆である「いびき」はもういけません。保育研修の時他人と相部屋になることがありましたが、眠りに付くことが遅い私は相手が「いびき」をかき始めるともうダメです。徹夜を覚悟することにしています。音は自然音がいいですね。私が言う「自然音」は「騒音」ではない音、ということです。音に無理がなく、聴いていて心地が良い、そんな音ですね。音にも時代性がありますから自動車の「静音性」はこれからの時代の音なのでしょう。いずれにせよ、心地良い音がたくさんあることは人生を豊かにします。「騒音」はなるべくなら願い下げです。「騒音」の最たるものは大人の喧嘩そして戦争の音です。

  4.  私も後ろからハイブリッド車が近づいてきているのに、気づかなかった事が何度もあります。あの静音性能はとてもすごいですね。確かに、視覚障害の人にとっては音で反応するのだから、その音が聞こえなくなると危険かもしれません。その辺の問題は難しいと感じました。ただ事故が起きていないのならば、このままでも大丈夫のような気もしますが、そうもいかないのが、現実なんですね。自動車の騒音がうるさいという理由から、エンジン音を静かにさせたら、今度は静かすぎて危険という問題。本当に人間は難しいです…。

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