閉店

 園のそばで、私が毎日通勤する道の途中のビルの1階に空き家がありました。その場所は商店街ではありませんが、割と人通りがあります。そのうちにその空き家を改装し始めました。外観はなんだかしゃれていて、厨房があり、いいレストランができるといいなあと期待をしました。そのうちに内装が始まり、やはり食べ物屋のようです。外にはネオンによる掲示板が取り付けられました。出来上がってくると、どうも洋風な居酒屋のようです。店内にはオーナーらしき人がいます。小学生らしき子どももいて、多分、父親がいつか自分の店を持つのが夢だったのがやっと実現するという雰囲気です。すべてきれいに完成し、いつ開店するだろうと思っていると、数ヶ月間もそのままです。ネオンも点灯しません。そのうちに、その店舗がシートで覆われました。どうしてだろうかと思っていると、そのシートの中でせっかくきれいにつくった店舗を、すべて壊し始めたのです。最近、もう骨組みだけで、先日は壁材を運びこんでいました。
 こんな光景が東京ではよく見かけられます。しかし、開店前にもう取り壊し始めるのはどうしたのでしょうか。店が壊されていく過程は見ていて、主人の夢が壊れていくのを見ている感じです。また、新しい内装が壊されていくのを見るともったいない気がします。壊されたものはいくら新しくても廃棄物でしかなくなります。しかし、もし無理して開店しても、また、せっかく作っても、今後ただ赤字が増えていくのであれば、早い決断が必要なのかもしれません。
 最近、政権が交代していろいろな事業の見直しを見ていると、ダムにしても、空港にしてもなんだか似ているような気がします。すぐに閉店している店舗を見ても、政府の箱モノを作っていく事業を見ても、計画の時点できちんとマーケティングをしたのだろうかと思ってしまいます。
マーケティングという言葉は、市場で取引するという意味の動詞「マーケット(market)」から派生した動名詞で、20世紀の初め、アメリカで使われ始めた造語のようです。どうしてそのような言葉が生まれて言ったのでしょうか。当時のアメリカは、工業先進国であるイギリスやフランスと違い、植民地がなく、海外に市場を持っていませんでした。工業製品の生産力が向上してくると、それらの製品をどこで、どのように消費していくかが問題になります。そこで、国内でのシェアを巡って各企業間で激しい販売競争が繰り広げられていきます。しかし、市場で飽和状態になってくると在庫が増えてきます。その処分などが課題になり、「シェア拡大のための戦略的な販売活動」や「新たな需要創造」が経営手法の中で必要となってきました。その経営手法の概念を「マーケティング」という言葉であらわすようになったのです。
 そして、ただ競争原理だけを基にすると価格競争になり、結局は自分たちの首を絞めることにもなりかねません。そこで、巨大企業間で価格競争を回避するような協調なども行われるようになっていきます。しかし、しかし、マーケティングが単に企業の利益追求のためだけを考えていたら限界があります。そこで、消費者の意思を取り入れ、「消費者ニーズやウォンツを探り、それらに応える活動」というように変化してきたのです。
 マーケティングとは、営利企業であろうが、非営利組織であろうが必要な活動です。もう少し考えてみたいと思います。

閉店” への4件のコメント

  1. 藤森先生が、ずいぶん昔、講演の中で「蝶の写真家」の話をしておられましたね。目前の蝶が、次の瞬間、どの枝に向かって飛ぶかあらかじめ予想していないとベストショットをものにできないということでした。販売対象のニーズやウォンツが今どうなのかを調査して、商品を開発して市場に投入するようでは実は間にあわないと思う。本当のマーケティングとは、未来志向でないと企業の発展はない。あのシャープは、50年前から太陽光発電が時代の主流になると読んで、営々と開発研究を続けた。そして近年「世界のソーラーカンパニー」になると宣言できるまでになった。藤森先生と出会った時には、この先生の理念は今に時代の本流になると確信した。この先生についていこうと思った。今、それは確かな直感だったと胸を張って言える。

  2. 新宿の園の近くのお店の話、なんだか悲しい気持ちになります。様々な要因があるんでしょうが、せめて開店するところまではやってもらいたいと、勝手ではありますが思ってしまいます。
    マーケティングについては、どんな調査をするかだけでなく、対象を誰にするのかでも結果はずいぶん違ってくると思います。例えば保育園なんかでマーケティングをするとしたら、対象を保護者にするのか子どもにするのか、子どもにするとしたらどんな調査をするのか、いろいろ考えなければいけないことが出てきます。何のために、誰のためにがきちんと定まったマーケティングを、ぜひ国でも行なってもらいたいですね。

  3. なんでもそうでしょうが、維持し続けることは始めることに比べると大変なような気がします。いわゆる箱モノといわれる建造物も建てることより維持することの方にお金も労力もかかるのではないでしょうか。そうした意味では「マーケティング」を十分に行わないと作られたモノがやがてお荷物になり金食い虫として厄介なものになりかねません。お店の話にはいろいろなことを考えさせられました。開店、というゴールに至る前に引き返えしてご破算にしなければならいな事情があったのでしょう。始めるだけが能ではない。準備している途中でダメだと思えることがあれば止める勇気も必要ということでしょう。準備を開始する前に展望なり見通しを持つことが必要です。展望、見通しが持てなければ撤退やむなし。そして準備開始の条件としてそこに無理が無いかどうかを見極めることがまた必要であると思いました。

  4.  私の家の近くにおそらく中華料理の店だと思いますが、看板が出来たので、いつオープンするのかと思っていたら、気づいたら違う店の看板に変わっていました。そう思ったら、またまた看板が変わり…。身近にあるせいか、そんな店はどんどん多くなってきているような気がします。やはり、理想と現実は大きく違うのでしょうか?実際にそうだと、少し寂しい気がします。マーケティングという言葉は知っていますが、詳しく知りません。ただ、お店を始めたり、会社を起こすときは、様々な状況を想定して、問題が起きても解決できるように、対策等を、なるだけ、多く考える必要があるのかな?と思いました。

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