紅葉とトロッコ

 日本には、四季を感じる場所が各地にあります。桜の時期には、日本中桜が咲き乱れ、各地の桜の名所がそれぞれいろいろとイベントを行います。すると、今年はどこに桜を見に行こうか、夜桜をどこで鑑賞しようかと迷います。そして、それがブログに登場します。それは、桜自体を鑑賞するというよりも、桜の背景も影響します。都電と桜、お濠と桜、土手に咲く桜、桜の発祥の地の桜、菜の花と桜など日本では様々な組み合わせを味わうことができます。
 それはほかの季節でもそうですが、特に、秋の紅葉の時期は、桜とはまた違った楽しみがあります。しかも、紅葉は桜と違って、1本の木というよりも、山全体で味わうこともできます。日に映えて山が燃えるような姿は、とても美しいものです。
 今年は、「トロッコ電車と紅葉」を堪能することができました。
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「トロッコ」とは、もともとは、トンネルやダム等の工事現場からの土砂や石の運搬などに使用される貨車のことです。トロッコを見ると、乗り込みたくなります。その線路がどこまで続いているかもわからずに。芥川龍之介の「トロッコ」という作品が思い出されます。8歳の少年は、トロッコに乗りたいと思い、ある日土工と一緒にトロッコを押してあげて、そのあと一緒に乗り込みますが、あまりに遠くまで来たことに不安になり、一人で駆けて家に戻るまでの心細さを描いていました。
もうひとつ、最近、マイケル・ジャクソンが亡くなった時にコメントした彼の娘の本当の父親だと名乗ったマーク・レスターが、子どもの頃主演した映画「小さな恋のメロディー」のエンディングは、主人公の男の子と女の子が二人でトロッコに乗り込み、彼方へ消えていくシーンでした。芥川の作品同様、トロッコは、子どもの頃の将来の夢と不安へ誘うイメージがあるようです。
今回乗ったトロッコは、黒部峡谷の電源開発に伴い、その輸送手段として、電源開発が上流に延びるとともに軌道を延長してきた黒部軌道を走るトロッコです。宇奈月温泉から昭和12年に開通した終点の欅平まで、終わりに近づいた紅葉に染まる山々を背景に黒部峡谷を走っていきました。
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黒部峡谷は、北アルプスのほぼ中央の鷲羽山に源を発し、長さ86km、標高差3000mを流れ下る黒部川の上・中流域に、切り立った深いV字峡を形成する大峡谷です。昭和9年には、中部山岳国立公園に指定されています。峡谷は、黒部川の浸食によって深く刻み込まれ、黒部峡谷流域の平均斜度は36度と非常に勾配が強く、30度?45度の部分が全体の70%にも及びます。また、黒部川の上流にあたるのですが、流域が豪雪地帯に位置するため四季を通じて非常に水量が多く、流れも速いので、見ていて豪快です。また、とても水のきれいな川としても知られており、黒部川扇状地扇端部の湧水地帯の地下水は、「全国名水百選」にも選ばれています。
また、黒部川は、そのところどころに築かれたダムが有名で、「黒部の太陽」のドラマや舞台化で有名です。昭和36年に完成した黒部ダムが有名ですが、実は黒部川における電源開発の歴史は大変古く、今から85年前に始まりました。「くろよん」と言いますが、ダムが四つあり、トロッコで走っていく途中の「黒部川第二発電所」は富山の建築百選にも選ばれている、戦前、日本の建築界ばかりか土木界でも評判となった名建築です。
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