保育園におけるマーケティング2

保育園における保育をマーケティングととらえる時、最近定義されている概念を考える必要があります。それは、マーケティングを「組織が変化する社会環境に適応する行為」と考えることです。では、社会環境とは何でしょうか。企業では、変化する環境とは、業界環境、消費者環境、文化的社会的環境、政治的法律的環境などであると言われています。企業はこれらの環境の変化にあらゆる手段を使って適応していこうとし、そのような組織の志向をマーケティングと呼んでいるようです。
保育における業界環境に「待機児増加」「脳科学からの検証」などがあり、消費者環境には、「少子化」「ライフスタイルの変化」「学力低下」「青少年犯罪やニート」「格差社会」があり、社会的な環境として「保育所保育指針・幼稚園教育要領の改定」「地方分権」「民営化」などがあるかもしれません。
このような変化する環境のなかで、子どもたちの発達を保障し、成長を促していこうとするのであれば、子どもの外側での環境の変化に対応しようと努力して、行動を起こさなければ成らず、その努力と行動をマーケティングというのです。
このようなマーケティングは、どのように日本では導入されていったのでしょうか。日本にマーケティングが最初に紹介されたのは、1916年 神戸商高の内池廉吉がアメリカ留学から帰ってきた際にまとめた論文によるものであると言われています。そのころ、日本には現代の流通論の元になった配給論の研究が盛んに行われていました。保育も同様に、行政処分の一つである「措置」という制度の中、公的な配慮のもと運営が行われていたのです。ですから、その当時のマーケティングの概念は、企業では配給の考え方、保育は措置と同一のものと考えられてきました。それが次第に、「顧客をなによりも大事に考え、そのためにマーケティングについて考える」ということになり、日本語訳として、「市場活動」とか「市場開拓」「市場開発」と様々な言い方で表されてきました。そして、マーケティングとは、「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」と1990年に定義されています。
この定義により、「他の組織」という文言によって、営利を追求する企業のための活動だけでなく、その基本的な概念は、自治体や保育園やNPOなどの非営利組織にも適用できるようになったのです。そのために「グローバルな視野」に立たないといけないのです。また、今現在の状況に対しての対応をすることではなく、長期見通しの中で考える必要が出てくるのです。特に、保育という仕事は、まさに、将来、世の中を担っていく人材を育てる先行投資の観点を持たないと、そのつけはあとに来るのです。また、待機児対応を、目の前のニーズだけを見るのではなく、そこに内在している問題を考えないと解消はしていかないのです。マーケティング活動でも、組織と顧客の関係構築の活動と捉えられて、顧客が現在、直接に意識している欲求(顕在化しているニーズ)のみに応える活動を行っていては、長期的な利益と反する恐れがあるため、顧客が意識していない欲求(潜在化しているニーズ)や、長期的に欲求に応え続けられる仕組みをつくるために、「グローバルな視野に立ち」が定義に含まれているといいます。そして、その過程が、組織の一方的な顧客への押しつけではなく、顧客への啓蒙、理解を伴う必要があるために、「相互理解を得」ということも定義に含まれているのです。
ただ、顧客(保護者)の利益を考えているだけがマーケティングではないことを、保育界の人も知るべきです。