保育園におけるマーケティング

 日本マーケティング協会のHPでは、マーケティング(marketing)とは、企業や非営利組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客の欲求と満足を探り、創造し、伝え、提供することにより、その成果として利益を得ること」だと説明されています。
保育所保育指針には、保育の目標として、「入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、」と書かれてあります。これは、ある意味でマーケティングですが、保育園の難しいところは、誰が顧客かということです。「顧客の欲求と満足」とは、誰の欲求と満足を図るのかがよく議論になるところです。顧客が「保護者」なのか、「子ども」なのかです。もちろん、子どもでなければなりませんが、保護者はその代弁者というとらえ方をしています。ですから、保育所保育指針の中の保育の方法では、「一人一人の保護者の状況やその意向を理解、受容し、それぞれの親子関係や家庭生活等に配慮しながら、様々な機会をとらえ、適切に援助すること。」と書かれているように、「保護者の欲求」と書かれてはなく、「保護者の意向」という言葉になっています。そして、欲求では答えるとなるところが、「理解」「受容」するという言葉になっています。では、欲求という言葉は、どこに使われているでしょうか。保育所保育指針の中では、情緒の安定の内容のところに「子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。」ということが書かれてあります。これが、保育園の本当のマーケティングかもしれません。
 この「応答的な」ということをマーケティング理論から考えてみました。なぜ、研究領域としてのマーケティング理論が成立したのかというと、それまでは、経営は、企業家の勘や経験に依存していました。しかし、客観的に、誰にでも取り入れらるように構築していくことが求められてきたのです。これは、保育園で言うと、「保育課程」になるのかもしれません。
日本マーケティング協会の定義と違って、アメリカマーケティング協会(AMAでの定義では、「マーケティングとは、個人および組織の目標を満足させる交換を創造するため、アイディア、財、サービスの概念形成(コンセプト)、価格、プロモーション、流通を計画・実行する過程である」とされています。この中で、私は、目標を満足させる交換を創造するために「アイディア、財、サービス」の「コンセプト」が必要というところに納得します。しかも、これらマーケティングが必要なのは、「個人および組織」としているのは、企業という営利組織に限らず、営利活動を前提としない個人の活動や非営利組織においても考える必要があるということなのです。「交換」という言葉は、Tradeという商取引を意味するのではなく、Exchangeという言葉を使っているのは、他者との交換(かかわり)を創造するすべての活動が想定されている概念です。ですから、アイディアが必要になるのです。このように考えると、まさに保育園における保育にもその考え方が成り立つのです。
企業やその他の組織の目的は存続と成長があります。ここにも保育園にも言える概念があります。あらゆる組織は変化する環境の中に存在している。この変化する環境の中で永続的に存続と成長を志向しようとすると、変化する環境に適応する行動が必要となるといわれています。マーケティングはこれらの環境変化への適応を志向する概念であるといわれています。環境の変化に適応できなければ存続も成長もできないというのです。
保育園などでは、存続は変わらないことと思われているところがあります。保育園の民営化のときなどに「保育を変えないでほしい」という要求がされることがありますが、これではかえって子どもの姿を存続できないのです。マーケティングの世界では、閉鎖的、孤立的に自給を続けることによって存続と成長を志向することはできないとされ、外部環境の変化を察知し、それに適応できるように自らをコントロールしていくことがマーケティングの本質だともいわれています。