ユネスコが窓口になって、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重なたからものでもある「世界遺産」が選ばれていますが、この中に日本の石見銀山が入るかどうかが話題になったのは、もう2年前の7月のことでした。そして、平成13年から日本の暫定リストに挙げられている「平泉の文化遺産」が、いまだ登録になっていないことがニュースになったのも最近のことです。
これらの世界遺産には、次の3種類があり、有形の不動産が対象となっています。一つは「文化遺産」で、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観などが選ばれます。次に「自然遺産」で、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある動植物の生息・生息地などを含む地域が選ばれます。そして、「複合遺産」として、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産が選ばれます。これらについては、よく話題になるのですが、このような有形なものだけでなく、同じように無形なものに対しても決められています。昨日のブログで紹介した「奥能登のあえのこと(石川)」があるのです。
このような無形なものに対して2006年1月20日、「無形文化遺産の保護に関する条約(無形遺産条約)」の締約国が30カ国に達し、条約は、3ヵ月後の2006年4月20日に発効しました。この無形遺産条約は、これまで民族文化財、フォークロア、口承伝統などと呼ばれてきた無形の文化を人類共通の遺産としてとらえ、保護していくことを目的に作成され、2003年の第32回ユネスコ総会において、賛成120カ国、反対0、棄権8カ国で採択されました。日本は2004年6月、3番目の締約国として条約を締約しています。もちろん、反対する国はないでしょうね。
そして、昨年暮れには、無形文化遺産委員会では、これまでの傑作宣言に発表された90件が「人類の無形遺産の代表的な一覧表」に記載されることが決定しました。日本からは
13件が一覧記載されました。この一覧表には、能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎の3件は、審査なしで一覧表に統合されています。そして、今年13件が数日前の10月1日に決定しました。どんなものが決定したかというと、「重要無形文化財」として、<芸能>雅楽、
<染織>小千谷縮・越後上布(新潟)、<手漉(てすき)和紙など>石州半紙(せきしゅうばんし)(島根)です。
「重要無形民俗文化財」として、<祭礼>日立風流物(茨城)、京都祇園祭の山鉾行事(京都)、<年中行事>甑(こしき)島のトシドン(鹿児島)、<生産・生業など>奥能登のあえのこと(石川)、<神楽>早池峰(はやちね)神楽(岩手)、<田楽>秋保(あきう)の田植踊(宮城)、<風流>チャッキラコ(神奈川)、<渡来芸など>大日堂舞楽(秋田)、<語り物など>題目立(だいもくたて)(奈良)、アイヌ古式舞踊(北海道)です。それぞれの地域の方は、これらの存在を知っているでしょうか。意外と知らないかもしれませんし、知っていても、そんな重要なものだとは気がつかないかもしれません。そんな意味でも、この一覧表への記載は重要かもしれません。
しかし、注目を浴びることによって、無神経な人々によって、大切な文化が踏み荒らされないことを祈るばかりです。
石州半紙の存在を意識したのは、藤森先生の講演での一言がきっかけでした。でも「これだ!」という活用法をまだ見つけていません。近くにありながら存在を知らず、でも有り難いことに外の人から気づかせてもらったので、この流れは大事にしようと思っています。地域にある、後の世代にも伝えるべきものを守ろうとしている人との出会いも偶然あり、地域のことをいろいろ教わりましたし、おもしろい活動のヒントをもらいました。こんな風に気づかせてくれる出会いの大切さを強く感じています。
世界自然遺産の第1号登録はガラパゴス諸島ですが、そのことによって観光客が増大。登録当初は年間1万2000人だったのが08年には約16万人になり、このことが原因で島の環境が激変して、世界“危機”遺産に認定されたそうです。以下ー毎日新聞より。『訪れる観光客を当て込んで、島にはホテルやレストラン、土産物店ができた。仕事を求めた人々で人口が増え、現在3万人が暮らしている。おかげで大量のごみが発生、生活排水も海に垂れ流し。島にいなかった外来種も人間と一緒に入ってきた。病気のウィルスも持ち込まれ、動物たちに感染症も広がっている。』ー貴重な自然景観を後世まで保存するための「世界遺産登録」が皮肉にも「破壊」につながっているのも事実です。
重要無形文化財。よく耳にする言葉ですが、なかなか触れる機会がありません。文化遺産や自然遺産の方が、イメージとしてスケールが大きい印象があるせいか、どうも、そっちの遺産の方に興味がいってしまいます。ただ自分を含め、こういう考えをしている人がブログの最後に書かれていますが、大切な文化を踏み荒らしてしまったり、無くしてしまう可能性があるような気がします。一覧表によって記載されることで、無形文化遺産への関心を高め、大切にしていくと思います。
ユネスコが世界遺産として「無形遺産条約」を発行し「無形」なるものの価値に目を向けるようになったことは重要なことです。なぜなら、自然遺産は別ににしても、いわゆる「文化遺産」は往々にして権力者の遺産の場合が多いことに比して「無形遺産」は民衆の間で伝承されてきた文化であることが多いからです。昨日紹介された「奥能登のあえのこと」などもその一つで世界遺産候補に挙げられたことは慶賀のいたりです。今回のブログで紹介された「重要無形文化財」の中に「神楽」がありました。私の実家は巡業神楽の宿を長年提供してきました。我が家に投宿した神楽衆は古くから伝わる神楽舞を披露してくれたり各家の門を回って家内隆昌を授けます。「国指定・無形民俗文化財」として認められている神楽舞。守り続けていきたいものです。