能登

 今回、講演のついでに奥能登を訪ねました。
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奥能登は、輪島、珠洲、穴水、能登などですが、この2市2町に伝わる1976年、国の重要無形民俗文化財に指定された珍しい儀礼があります。この儀礼が、先日の10月2日にユネスコ無形文化遺産として認められたことが石川毎日新聞に掲載されていました。その儀礼とは、「奥能登のあえのこと」という素朴な行事で、風雪厳しい自然と向き合い、神に収穫を感謝するというものです。この儀礼は、先祖代々受け継がれてきたとても面白いもので、日本のおもてなしの心をよくあらわしており、今回登録されたことによって、今後、海外からも注目されることになるでしょう。
 「あえのこと」は、稲の生育と豊作を約束してくれる田の神をまつる農耕儀礼で、このようなおもてなしをします。まず、収穫が終わった12月、正装した農家の主人が田の神を田んぼに迎えに行き、まるでそこにいるかのように手を差し伸べます。この田の神は目が不自由とされ、主人は気遣いながら「どうぞこちらへ」と家に案内します。
 家では、種もみ俵とふたまた大根でしつらえた神座のある奥座敷で、まず、1年間の農作業を報告します。そして、入浴後、小豆飯やブリの刺し身など山海の幸を盛ったお膳でもてなし、収穫を感謝します。神様はその家で年を越し、翌年の耕作前の2月、豊作を祈願して田に送り出すのです。この儀礼は、30年くらい前まではどこの家庭でもやっていたそうですが、最近の農業の衰退と共に減ってしまっているため、伝統の継承に危機感を抱き、「奥能登のあえのこと保存会」が発足しています。そして、20年前から、能登町柳田植物公園内にあるかやぶき民家を移築した「合鹿庵」で毎年、「あえのこと」を一般公開しています。
 日本の伝承文化は、その儀礼の形だけではなく、日本古来の文化の影響を見ることができ、そこに今後の日本の在り方を考えるヒントも隠されている気がします。そういう意味では、同じ輪島の朝市もあります。輪島の朝市は、日本三大朝市の一つとして有名ですが、今回、その朝市も見ることができました。
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輪島の朝市の歴史は古く、平安時代から1000年以上も行われています。最初は、神社の祭礼日などに生産物を持ち寄って、物々交換しあっていました。それが、室町時代には毎月4と9の付く日に市が開催されるようになり、明治時代には毎日、市が立つようになって今に至っています。
輪島朝市は通称「朝市通り」と呼ばれている約360mの商店街に200以上の露店が立ち並びます。そこには、地元の人、観光客が混じって、とても活気があります。この露店は、誰でも店を出せるわけではないそうです。ここに店を出す営業権利は、朝市組合への加入が必要です。そして、その加入を証明するために、店先に自分のフルネームが書かれている看板を見えるところに付けておきます。この営業権利は先祖代々引き継がれていくそうです。
 この輪島の朝市は日本三大朝市の一つといわれていますが、実は、輪島(石川県輪島市)、高山(岐阜県高山市)は、どの資料を見ても入っているのですが、もうひとつについて呼子(佐賀県呼子町)か勝浦(千葉県勝浦市)のどちらか競っているそうですが、日本4代朝市にすればいいと思います。
何にしても、朝市には、その地域の人々を長い間支えてきた生活や文化、そして交流などあらゆるものが詰まっていて、ぶらぶら見て歩くだけでも楽しいものです。