育児と保育

 今月の7日に、こんなニュースが流れました。
「 厚生労働省は、認可保育園への入園を待つ待機児童が4月現在で2万5384人おり、前年同月と比べ約3割に当たる5834人増えた、と発表した。低年齢児の待機児童数は全体の81.9%を占める。そのうち1、2歳児の待機児童数が1万7492人ともっとも多い。不況下で共働きの家庭が増えたのが原因とみられている。」
 このニュースの中で、共働きの家庭が増えたのは不況だからでしょうか。母親の就業率が急増したのは、多くの国では産業化が進んだことによってです。たとえば、アメリカでは、1975年には39%であったのが、2000年には67%になっています。過半数の母親が働いているのです。そうなると当然、母親以外での保育が必要になってきます。誰がどのような保育をするか、誰の責任で保育を保障するか、その状況への対応は各国で違っています。就学前児を持つ母親の85%が働いているスウェーデンでは、保育を提供することは国家の責任であると考え、子どもは高い水準の公的保育を受けることができました。一方、20世紀の英語圏の国々では、保育は私的なものと考えられていて、公的援助はほとんど行われていませんでした。ですから、当然保育の質やタイプは大きなばらつきがありました。たとえば、1990年代のアメリカでは、働いている母親のための乳児保育は、施設型が10%、個人による保育、ベビーシッター、乳母などでの保育が24%、親戚が保育するのが28%、20%は父親が保育をしました。今でも、アメリカでは、保育の質、形には大きなばらつきがあるようです。その理由に、それぞれの州の保育に関する規制が顕著に異なるからだといわれています。
 そのような状況の中で、当然危惧されるのは、母親以外の人が保育するときに、子どもにどのような影響を与えるかということです。特に、乳児にとってはどうなのでしょうか。から名前のことですが、中国に行ったときに幼児園が月曜日に預けて金曜日に迎えに行くまで、すべて寮生活のような全託でした。そのときに、私が「親との関係はどうなのですか?」と質問をしたら、怪訝な顔をされました。「親との愛着形成はどうなのですか?」と繰り返したら「えっ?だって、親は素人ですよ!」と答えられた時にはびっくりしました。しかし、それは、子どもは親のものではなく、国家のものだということもあるようです。
 日本では、明治政府の近代教育制度の確立により、家庭の育児と学校の教育とが柱になり子どもが育てられてきました。戦後になると経済の立て直しが中心になり、核家族化が進み、保育が必要になってきました。しかし、保育はあくまでも育児の補助的なもの、さらには乳幼児にとってはよい影響はないとさえ考えられてきました。ところが、社会は豊かになり、物質的な豊かさでものが溢れるとともに、人間関係は希薄になり、人々の心もすさみ、子育てそのものにも問題が出てきました。そして、人類史上初めての体験である「少子化」を迎えています。
 こんな時代を迎えて、保育を働く親のために整備することから、保育の子どもへの影響を様々な観点からの研究がアメリカで行われました。その研究結果が、「アメリカ国立小児保健・人間発達研究所の追跡研究から」発表されています。その結果を要約してみようと思います。

育児と保育” への4件のコメント

  1. いろんな国の保育・教育施策を知るようになって、そこにはその国の姿勢が表れているのを感じるようになりました。少子化への対応の仕方にしても、姿勢によってこうも違ってくるのかと驚きます。7日のニュースを受けてテレビでもちょっとした特集をやっていましたが、子どものためにではなく、働く親のために保育園がもっと必要だという内容でした。子どものために必要だという声が何故同じ場で議論されないのか、もどかしい思いで観ていました。

  2. 国の体制で子ども施策がこうまで違うとは知りませんでした。親は素人だからともっぱら国が乳児を教育する中国。社会主義だと子どもまで国家の所有になるんですね。その点、アメリカは個人主義の国ですからとてもおおらかです。でも親の収入で子どもの教育程度が決まってしまいますね。「すべての子どもの人権を守る」ということでいえば、やはりスウェーデンやフィンランドのような北欧の福祉国家にはかなわない。ただし、世界中には貧困や紛争のせいで、あすの生命の保証のない悲惨な生活をしている子ども達が大勢いることを忘れてはならないと思います。

  3. 「アメリカ国立小児保健・人間発達研究所の追跡研究から」の「要約」、楽しみです。さて、人類初の「少子時代」という時代認識は当今教育に携わる先生方には必要不可欠です。「子どもは国の宝」と仰る方もおりますが、どんな意味で仰っているのでしょうか。そもそも「国の宝」である子どもが勉強嫌いで将来に夢も希望もない国とはどんな国でしょうか。欧米各国は乳幼児期への国家予算配分を「先行投資」と捉えています。「投資」というと不謹慎のそしりも受けそうですが、お金もかけずに現行の先生方の「質」「質」「質」の向上を声高に叫ぶのみのどこかの国に比べれば良としなければならないでしょう。それから「親は素人ですよ!」という中国の方の意見には首肯できます。私も一親としてド「素人」感を我が子を目の前にして日々感じています。園も学校も専門家集団です。その専門性をもっともっと前面に押し出して業務遂行してもよろしいでしょう。

  4.  子どもは親の物でなく、国家のものいう中国の考え方は、大きすぎて凄いと思いますが、なんだか納得いかない部分があります。確かに、国の将来はこれからの子ども達に期待するのは分かりますが、だからと言って親との愛着関係は必須だと思います。おそらく、それは文化の違いや、育ってきた環境の違いで考え方は違うのかもしれませんが、私は子どもには親の愛情は絶対に必要だと思います。ただ、少子化により子ども一人に対しての愛情が深すぎて、違った愛情に変化している気がします。そういう意味で、子どもを預ける事ができる施設を増やし、もっと子ども同士の関係を築く事ができるようになれば良いと思います。

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