日本での政権が代わっただけでなく、いろいろな分野で変革期です。昨年、世界全体が経済危機に見舞われました。私は経済にはあまり強くありませんので、聞いた話ですが、経済のメカニズムを分析したことで評判になった書籍が、住友銀行から米国のゴールドマンサックスに転進し、その後独立してニューヨークで投資銀行を経営する神谷秀樹氏の書いた「強欲資本主義 ウォール街の自爆」(文春新書)です。もう1冊は、東京大学経済学部から大蔵省を経て、現在は慶応義塾大学ビジネススクールの准教授を勤めるハーバード大学経済学博士・小幡績氏の「すべての経済はバブルに通じる」(光文社新書)だそうです。そこで、この昨年度ベストセラーの著者同士が経済について対談した新書が今年の5月に発行されました。それが「世界経済はこう変わる」 (光文社新書)です。
この本の中で、経済だけでなく、他の分野にも参考になる話が多くあります。私は、そこで書かれている「変革期のリーダー」は、とても示唆に富む内容である気がします。小幡氏は現在の日本が停滞している理由を「デザイナー不足だと思う。国をデザインする人がいない。社会システムをデザインする人もいない。」と言っています。私も、日本には、保育がデザインされていないと思います。デザインには、その国にマッチしなければなりません。日本の風土、歴史、伝統にマッチするデザインを考えないといけないと思います。そのために、明治維新以後急速に入ってきた欧州文化、戦後あこがれた米国文化から独立し、逆に世界に発信していけるような保育のデザインが必要な時期だと思います。
小幡氏は、こう説明します。「官僚はすごく頭のいいエリートではあるが、昭和30年代以降は、そのエネルギーを、社会のデザインを考えることには投入せず、既存のデザインを守ることに終始してきた。たしかに、よくできた社会のデザインをむやみに変えようとする昨今の一部を見るとそれも一理あると思う。目先の利害でめちゃくちゃにされるよりは、かえってよく練られて作られていたデザインを維持しようとする守旧派の官僚にも、自己正当化する論拠はある。しかし、社会を見直し、そこで暮らす人々の話を聞けば、それが全く誤りであることに気づくはずです。1950年の社会と21世紀の社会は全く違うのです。社会が違えば、制度も根本からデザインを変えないといけない。」
そんな変革期におけるリーダーの在り方にも言及しています。「理想のリーダー像が“良きに計らえ”では、変革期のリーダーは務まらないと思う。リーダーは、まず、いいデザインを組んで、方向性を与えている。そうして、組織のメンバーには、ある程度自由にやらせるから、彼らは、いきいきと、自ら一生懸命働く。さらに、生き生きとした個々が集団でまとまり、すべての構成員が組織全体を高めることを考えていくことができており、組織のために頑張る。」
そして、今までの「方向性は、売上拡大、シェア拡大、という右上がりの成長を目指せばよく、欧米に追い付き追い越せで、同じものをより効率的に、より高品質で作ればよかった。外交も政治も米国追随、欧米型の社会の成立を目指すということで、方向性は決まっていた。つまり、リーダーのビジョン、方向性の決断は必要なかったし、構成員は、みな誰でも、それは分かっていたのである。そういう分かりやすい時代だった。しかし、今後は、そうではない。」と言います。そんな時代のリーダーは、「方向性も、そして、不断に起こる右か左かの決断を行わないといけない。そして、その戦略の意図を組織に伝えないといけない。リーダーの仕事ははるかに難しくなってきている。したがって、今後は、ビジョンと決断力、決断力すべてを備えたリーダーが必要である反面、単なるトップダウンではなく、組織が内部から、自発的に盛り上がるスタイル、これが新しい組織の形になると思う。」
この考え方は、特にノンプロフィットである職種においてはなおさらです。保育、教育におけるリーダーは特にこうあるべきことは、ドラッカーも「非営利組織の経営」の中で述べています。
「変革期のリーダー」の条件を明治維新の立役者をイメージして考えてみました。まず「私心」がないこと。そして「国の将来像の構想」を持っていること。もうひとつは、「民の苦しみ」に耳を傾けることができること。およそ100年前、日本は素晴らしい青年のリーダーたちによって、封建国家から近代国家へと生まれ変わることができた。今が、あれほどの変革の時期かはわからないけど、新政権の面々がはたして本物の改革者かどうか、この三つの条件に照らしてどうなのか、注意深く見ていきたい。
向かう方向が間違っていたら、どんなに努力しても間違いが大きくなるだけだという話をよく聞きます。方向性は大事です。そして決断ですが、決断しなければいけない場面によく出くわします。判断ではなく決断こそリーダーの役目だと考えているので、そのときの決断を支える考え方を日々磨かなければいけないと思っています。今は本当に大きな変革期だと思います。社会も変わらなければいけないし、自分も変わらなければいけない、そんなやりがいのある時代を生きていると考えたいです。
そもそも時代は変遷する、と私は考えています。そして時代時代のパラダイムが求められる、と思います。小幡氏が言うように「1950年の社会と21世紀の社会は全く違う」、まずはこの認識が求められます。時代性を読み解かずには「デザイン」は不可能です。そしてその時代の読み解きによって「デザイン」が可能となり「方向性も、そして、不断に起こる右か左かの決断」も可能となります。そしてどんな時代にも求められるのは「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」人だろうと思います。瞬時たりとも静止することはできない。君子豹変す。本来、諸行無常の世界。少なくとも私たちの身体自体が日々変化している。諸行無常という不変の真理を根本にすえて変化していく。そして方向性はよりよく生きることを考え変わっていく。リーダーでなくてもブログの内容は重要な示唆に富みます。
変革期の理想のリーダー像というのも時代の変化によって、変化していくのですね。どんな状況でも的確に判断し、どんどん決めていく決断力、そして組織が自らやる気を出し、盛り上がっていく形がこれからの時代に必要な姿なんですね。