変革期

 P・F・ドラッカーは、21世紀という急激な変化と不確実性の時代にあって、経営戦略自体が前提とすべきものは何か、何か確実なものはあるのかという問いに対して、これからの時代にあって確実なものは、「先進国における少子化」「支出配分の変化」「コーポレート・ガバナンスの変容(企業統治。株主などが自分たちの利害や、企業の経営方針などについて対話できる制度、また、その理念)」「グローバル競争の激化」「政治の論理との乖離」と言っています。ここでトップに挙げられているのは、先進国における少子化です。これは、確実にくるであろう時代です。特に日本においては、かつて人類が経験したことのないスピードでその変化は起きています。
 人は、変化に対して抵抗します。変わることを恐れます。それは、変化には改革が伴わなければならないからです。少子化に対してもそれを食い止めようとします。それは、高齢者の増加に反して労働人口が減少し、労働活力が低下したり、高齢者を支えるシステムが成り立たなくなったり、社会にひずみが起こるからです。ですから、少しでも生んで育てやすい社会を作ろうとします。しかし、生みやすいといって、親が誰でもいいからと言ったり、育てやすいといって、たとえば子育て費用を負担したり、かつての保育所のように託児機能を増やそうとしますが、たとえ、そのために子どもが増えたとしてもいくつか問題があります。その子どもたちが、労働しようとしなければ、高齢者を支えなければ意味がありません。また、かえって支えなければならない若者が多くなればもっと負担になります。ですから、子どもを増やすだけでなく、その子どもをどう育てるかの取り組みがなければいけないのです。そこで、「支出配分の変化」が必要になってきます。
 子どもをどう育てるかということになると、その子どもの育つ環境は今までと大きく違うところがあります。それは、少子社会で、子ども集団がなくなり、子ども集団で育つ力が育ちにくくなっているということへの変化です。これが「少子化」です。少子化は、それを食い止めるだけでなく、少子社会での育ちの文化を新たに創造していかなければならないのです。すると、託児としての保育所機能から、子ども集団の育ちを保障する保育所への変化が必要になってくるのです。もう一度、子ども集団を考えていかなければならないのです。
 ドラッカーは、10年前、15年前の経営書や経営セミナーが取り上げていた「変化への抵抗」という問題は最近なくなったと言います。変化が不可避なことは、誰もが納得したからです。しかし、まだまだ変化を拒否する人たちが経営に直接関係のない分野には多くいます。それが、教育、保育界です。しかし、その分野こそ、未来を担う人材を育てているところだけに「変化はコントロールできない。出来ることは、その先頭に立つことだけである」必要があるのです。変化はリスクに満ち、楽ではありません。悪戦苦闘を強いられます。また、今後数十年どころか、今後数年のうちに顕在化してくるに違いない諸々の問題に対し、準備することは不可能である。そこで、変化に対処するのではなく、変化の先頭に立たないかぎり、企業、大学、病院、保育園、幼稚園いずれにしても、生き残ることはできないといわれています。「急激な構造変化の時代にあっては、生き残れるのは、自ら変化の担い手、チェンジ・リーダーとなるものだけである。チェンジ・リーダーとは、変化を機会としてとらえるもののことである。変化を求め、機会となすべき変化を識別し、それらの変化を意味あるものとするものである。」というドラッカーの言葉は、政権が交代した今、もう一度私たちに訴えてくるものがあります。自ら変化していく力を持ちたいものです。

変革期” への5件のコメント

  1. 本日のブログを拝見して驚愕しております…
    いろいろ今後の弊社中期見通しを考えていたところでした。
    先生に心の中を読まれたようで、もしや超能力者ではなどと思ってしまいました。(笑)
    また無料でご教授いただいてしまいました。
    今週末の打ち合わせで是非引用させてくださいませ。

  2. いわゆる平成元年の「1.57ショック」以降、少子化対策が本格化したように思いますが、これまでは「産めよ増やせよ」で子ども人口の増加を主たる目的としたものが多かったのではないか。たとえ少々増えたとしても、働く意欲がなければ、高齢化社会の下支えにはならない。少子社会が子どもの成長に及ぼす影響への検証が十分になされていなかったのか。フリーターやニートへの就労支援対策も大事だが、藤森先生のおっしゃる「少子社会での集団による育ちの文化の創造」を急がないとこれからの日本はかなり危ない。私たち民間企業とは違って、保育園や幼稚園は公的な機関。本来、国の将来に最も敏感でないといけないと思うのですが…。

  3. 変化の先頭に立つ。自らが変化の担い手になる。この2つのことの重要性を今回のブログから強く感じます。そのためにも問題の本質を正しく掴んでおくことは必要ですし、広い視野も必要です。そしてそんな立場にあることに対して「腹をくくる」ことが大事だと思います。頭でいろいろ考えるだけ、現状を嘆くだけでなく、自ら先頭に立つことに対して腹をくくること。まだどこか腹をくくりきれていない自分にはありがたい内容でした。

  4.  まずは「P・F・ドラッカー」が誰か知らなかったので、調べてみました。まさか、こんなにも偉大な人物だとは思ってもいませんでした。そんな彼の言葉というのは、私のような人でも聞くと、なるほどと思いますし、とても納得します。確かに様々な変化に対して抵抗することはよくあります。変化に意地になって抵抗するのでなく、その変化を「機会」として捉えて、先頭に立つ必要があるのですね。藤森先生の言われる通り、私も自ら変化していく力を身に付けたいと思います。

  5. 8月30日の衆議院総選挙の結果によって政権交代が明白となりました。これまでの与党の施策の多くが変わろうとしているように見えます。先の米国大統領選挙ではChangeを表明したオバマ氏が選ばれました。このChangeは変化。私の関わる保育界・教育界は「変化」を口にしてもいざ実践ということになると守旧的動きが顕著になります。慎重に、ということをよく耳にします。その表現の背景には「変化」に伴う「混乱」に対する「恐怖感」があるからではないか、と考えます。保育・教育の対象は次世代を担う子どもたちです。その子どもたちは従来の保育・教育に「辟易」としています。そしてそのことに大人たちも気付いています。しかしいろいろな理屈を並べてその気づきを覆い隠します。変化に伴う混乱という恐怖感があるからです。事は極めて単純です。子どもたちは従来の保育・教育を変えて欲しいと「強制的やらされ表情」と「意欲のなさ」によって示しています。その思いに大人は素直に寄り添うべきです。

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