地層を見て、それに魅せられる子もいるでしょうし、化石を見てとりつかれる子もいるでしょう。その違いはどうして生まれるのでしょうか。また、ほとんどの人は何かに取りつかれるものを持っているのでしょうが、それとの出会いはある意味では偶然でしょうから、自分は何に取りつかれるのかわかりません。また、その取りつかれたものが職業になるとは限りません。それがきっかけの場合もありますが、全く違う場合もありますから、子どもにはどんな環境を用意してあげればよいか、何を体験させてあげればよいかは難しいですね。
今年の1月に行われた気象予報士の試験で山崎一哉君が、合格時の年齢13歳7か月(中学1年)で、最年少気象予報士となりました。これまでの記録が14歳1か月ですから、半年ほど記録を更新したのです。今年で31回目となる気象予報士試験の受験者は4329人いた中で、合格者はたったの272人、合格率6・3%の狭き門です。今回の合格者の平均年齢は37・8歳で、逆に最高齢は65歳だったそうです。
山崎君は、幼稚園の頃に買ってもらったお天気の漫画をきっかけに、テレビの天気予報が大好きになり、最初は、雲の写真や図鑑などをよく見ていたといいます。小学生の頃、家族でハワイ旅行に行く途中の飛行機の中で見ていた「雲の本」に夢中になったのが、受験のきっかけになったそうです。そして、試験には小5の時から挑戦していたそうです。彼の将来の夢は、「化学者」だそうです。気象予報士は、直接職業には結びつかないようです。
そういえば、現在RAG FAIR(ラグフェア)のボーカルパーカッション(ボイパ)として活躍している「おっくん」こと奥村政佳さんは、10年前、高校2年生のころ最年少気象予報士として合格しています。その後、筑波大学(第一学群自然学類地球科学専攻)に入学しますが、アカペラサークル「Doo-Wop」に入り、「ボイパ」というものを世に知らしめました。私も、そのころテレビで大学生対抗のようなものがあり、それを知り驚いたものです。このときをきっかけにして、気象予報士の道ではなく、音楽に道を歩んでいます。
しかし、今でも天気図を眺めるのが好きなようです。彼のある日のブログを読むと、「ただいま新幹線。空は青空、山は緑。天気図チェック合間にブログの更新でもいたしましょう」ではじまり、その日のブログの最後は「さ、そろそろ天気図に戻りますか。」で終わっています。パソコンでたえず気象情報をチェックしているようですね。また、彼は大学時代は保育士のバイトをしていたこともあり、メンバーの中で子ども好きで有名ですが、保育士にはなっていません。
人は、いろいろな経験をする中で、何が好きか、何をしているときが楽しいかそれぞれ違います。また、職業として、どんなことをやるのかもそれぞれ違います。好きなことが、趣味になるのか、職業になるのか、成長していくうえでの通過点であるのかもそれぞれ違います。今、園で様々な子どもたちを見ていると、これから先どんな職業について、どんな人生を送るのだろうかと考えてしまいます。そして、そのために、今をどのように過ごさせればよいかということを考えないといけないとも思います。子どもが現在を最も良く生きることを保障するのは、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うためなのです。
レンガ積みの寓話と言うのをご存知でしょうか。ある旅行者が夏の炎天下、アメリカのある村を歩いていると、3人の男が汗をたらして働いていた。旅行者は、一人目の男に「あなたは何をしているのか?」と聞いたところ、男は面倒くさそうに、「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるだけだよ」と答えた。さらに二人目の男に聞くと、「レンガを積んで塀を作っているんだよ」と淡々と答えた。三人目の男にも尋ねたところ、「私は教会の塀をつくっているんだ。素晴らしい村の教会ができたら、村の人々が喜んで来てくれることを楽しみにしているんだよ」と、汗を拭きながら目を輝かせて答えた。ゴルフの石川遼君のように好きな趣味が職業になれば幸せでしょうが、そんな人はほんの一握りです。どんな仕事であっても、そこに自分だけの価値を見出して、喜びを創造していくことが大事だと思います。
興味を持った分野を集中して勉強して、その職業につく人もあれば、全く違った職業につく人もいます。違った職業に就いたからとって勉強したことが全く意味が無いかといえば、決してそんなことはないと思います。趣味として楽しみ続けたり、思わぬところで役に立ったり、ものの見方の基礎になっていたりと、いろんなところで意味を持ってくるのが面白いところだと思います。他人の気持ちを考えることができるのも、様々な勉強や体験があってこそ深まってくることだと思っています。興味をもって意欲的に取り組むことに無駄なことなんてないんでしょうね。人生の基礎をつくっていく乳幼児の環境は難しいです。でも、だからこそやりがいもあります。
合格率6.3%の試験を13歳の男の子が合格したのは、本当にすごいです。自分の大好きな事を、ここまで追及することで、こんな偉業を成し遂げるのですね。子どもの力は計り知れません。RAG FAIRはもちろん知っていますが、まさか「気象」のブログにRAG FAIRの名前が出た瞬間、どう関係あるかと思ったら、おっくんが気象予報士の試験を合格しているのですね。とても驚きました。
子ども一人ひとりの将来の夢は現時点では分かりません。もしかしたら、ノーベル賞を受賞できる人材が出てくるかも分かりません。ただ、子ども達が好きな事を思う存分できるように、してあげたいと思いました。
園の子どもたちが将来どんなふうになるのか、とても楽しみですねぇ。子どもたちはいろいろ様々な可能性を持っています。その可能性の一つでも引き出せるように私たち乳幼児の教育擁護に関わっている者は彼らを取り巻く「環境」を用意しなければなりません。日本の乳幼児施設の多くは環境が貧困といわざるを得ません。それは二つの理由があると思います。一つはその乳幼児施設がモデルとしているのがこれまた劣を競う小学校の環境にあるからです。そしてもう一つは、乳幼児をタブラーサと捉える大人主導の価値観です。赤ちゃんは本来全ての力をもって生れてきている、という認識があれば赤ちゃんの頃から多様な環境が用意されているはずです。そして幼児から脳の臨界期まではその後に繋がる「環境」が普段にあるべきでしょう。貧しいながらも私のためにいろいろ様々な環境を用意してくれた祖父母父母には感謝してし過ぎるということはありません。我が子や園に集う子どもたちにできる限り様々な環境を準備しましょう。