理系の北斎

受験世代としては、どうしても理系か文系が気になるところです。それは、学問として研究をする場合は、文系は、主に人間の活動を研究の対象とする学問の系統とされており、理系は、主に自然界を研究の対象とする学問の系統とされているからです。しかし、世の中に出ると、それは大学とか研究分野がどちらかというよりは、文系的発想か理系的発想かを考えることが多くなりました。男女の脳の違い同様、人によって、理系と文系的な発想か異なるような気がすることがあります。実際は、両方の発想が必要ですが、どうも人によって違うためにチームが必要な気がします。今回の学習指導要領で重視された「聞く力」「話す力」が必要であるということは、文系の人は理系的発想をする人の意見を聞く力が必要ですし、理系の人は、文系的発想を聞く力が必要なのです。
今月号の「サライ」で、面白い記事を見つけました。「浮世絵の見方」という特集です。その最初の記事は、「北斎・広重 二大絵師徹底比較」ということで、浮世絵の風景画における二大巨頭である葛飾北斎と歌川広重について、どうして彼らの浮世絵を西洋印象派の巨匠たちが絶賛し、彼らの絵の何が江戸庶民を熱狂させ、西洋画壇に衝撃を与えたかということを探るというものです。
浮世絵における風景画の二大巨匠である北斎と広重は、ライバルとして同時代を生きたと言われ比較されますが、実際は北斎の方が37歳も上です。北斎は「富岳三十六景」、広重は「東海道五十三次」が有名ですが、さの作風の違いを学習院大学教授で、千葉市武術館館長の小林さんは、こう分析します。「北斎の“富岳三十六景”は、洋画の遠近法を大胆に活用。加えて舶来の化学染料ベルリン・ブルー、通称“ベロ藍”と呼ばれる鮮烈な青を使った実験的な作品で、風景表現に新しい魅力を開拓しています。もちろん、広重も遠近法は駆使します。しかし彼は、人々が見たいと願う視点で、風景の美しさを詠嘆的に、情緒たっぷりに描いて成功しています。」
この2人の違いを、この本の中ではこう書かれています。北斎の方は、「画面構成は力強く、緊張感に満ちて劇的だ。一見すると演出過多なほどだが、そこに描かれる植物・動物・事象はきわめて写実性が高い」それに対して広重の方は、「いかにもそれらしく描かれながら、むしろ写実とは違う。それでも、大方の人が共感する詩的な情緒表現においては、広重は一段と優っている」この二人に違いを「理系の北斎」と「文系の広重」と形容させる所以であると言っています。
この「理系」と「文系」の違いは、花鳥画を見ればもっとはっきりすると書かれています。北斎の「芥子」という作品は、数輪の花が風にたわむれる様子を動的に描いています。広重の切手でも有名な「月に雁」は、詩情豊かな秋の情景を切り取った画であるといいます。北斎は観察眼に優れて、その絵は現実的にして合理的。広重の絵は誰もが共有できる情趣をうまく絵にのせている点で俳諧的だといいます。小林さんは「現実的という意味で北斎が、“俗”なら、広重は“雅”。あるいは北斎が知性の技の人なら、広重は感性の技の人といえると思います」といっています。
2人の絵をじっと見ていると、なんとなく理系的発想と文系的発想がわかる気がします。園の私の部屋には、富士山の上、空高く昇ってゆく龍を描いた北斎の「富士越龍」が飾られています。

理系の北斎” への4件のコメント

  1. 浮世絵と言うと、昔、マッチの絵柄でよく見たなぁぐらいの印象しかないのですが、あらためて北斎と広重の代表作を比べてみると確かに違います。北斎の「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴」などは大胆な構図で雄大な自然を表現しています。かたや、広重の五十三次は宿場町の風情だけでなく、そこを通る旅人の息づかいまで聞こえてくるようです。「自然」を対象にするか、「人間」を対象にするか、確かに理系と文系ですね。外国で「理系の絵画」と言えば、ダ・ビンチの「最後の晩餐」が思い浮かびます。これはダ・ビンチ自身が科学者だったから当然ですね。

  2. 文系理系どちらであろうとお互いの意見を聞くという、当たり前のことを再確認させてもらいました。いろんな人がいて、いろんな考えがあって、それらは対立するものと捉えるのではなく、互いに認め合うことが大切なんですね。このように考える判断の軸がまだ定まっていないことを痛感しました。この軸は生き方そのもののような気がします。まだまだです。

  3. 「理系の北斎」「文系の広重」とは実に興味深い表現です。私はよく絵画を鑑賞します。そしてその絵画が出来上がるまでのエピソードを読みます。そうした鑑賞方法によってわかったことは傑作を描く画家たちは構図や配置、色使いなどなどを緻密に「計算」した上でカンバス等に筆を走らせている、ということです。西洋絵画のアカデミズム、印象主義、象徴主義、キュビズム、シュールレアリズム、などなどさまざまなネーミングをもって表される絵画手法のどれもが私の目からすると時として数学的です。中学数学の分類のしかたとして「数式」「関数」「図形」とありますがこれら絵画の中に感じることがあります。音楽にも同様のことが言えます。「理系」「文系」の両者を兼ね備えた分野が「芸術」でしょう。そうした意味では北斎も広重も理系文系の両方にまたがる総合系?藤森先生も「総合系」ですね。真似ができません。

  4. 葛飾北斎、歌川広重は歴史の教科書で知ったくらいです。じっくりと二人の作品は見た事がありませんし、二人がライバル関係であったということも初めて聞きました。ブログを通して二人の関係や作品の違いなどを知りましたが、絵でも理系と文系で分かれるというのは、とても面白いです。藤森先生は理系ですから、園長室に葛飾北斎の絵が飾られてあるのですね。二人の絵を比べて見たことがないので、早速ネットなどで調べて見てみようと思います。一応、文系なので歌川広重の方を好むかもしれませんね。

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