ミュンヘンの大きな本屋に行くと日本と違う風景を見ることがあります。それは、厚い本を何冊も抱えて、階段の踊り場に行く人を見ます。それは、踊り場に会計があるのではなく、ソファーが置いてあります。そこは、立ち読みではなく、座り読みをするところです。そこでは、脇の床の上に何冊も本を積み上げて、ゆったりと何人も座って本を読んでいます。あたかも、図書館にいるようです。
立ち読みは日本の法律でも犯罪ではありませんが、なんだか後ろめたさを感じます。昔は、よく本屋さんに「立ち読み禁止!」という張り紙が貼られていましたし、立ち読みをしていると、その本屋さんの店主がハタキを持ってきて、本の誇りを払うふりをして、読んでいる本もハタキで払う漫画がよくあります。しかし、そこにはなんとなく、頑固おやじの象徴として描かれ、お金がない子どもに対しての思いやりが感じられ、ほほえましくもありました。ですから、そのころの立ち読みは一つの文化でした。
また、立ち読みは、本来、買う本を選ぶときに中身を吟味することです。そう考えると、ミュンヘンで見かける座り読みは本を選んでいるようには見えず、中身すべてを、買わないでその場で読み終わってしまう行為に見えますが、本屋は何も言いませんし、その場所を用意してあげるのです。
最近、日本では、立ち読みができないようにビニールで覆ってしまったりすることもありますが、それよりも本屋さんの頭を痛めているのは、万引きをする人が増えたことのようです。万引きは、立派な犯罪です。また、最近デジタル万引きという行為も増えているそうですが、それは、カメラ付き携帯電話で本のページを写真取りすることです。映画をビデオ撮影することは強く取り締まっていますが、このデジタル万引きは今のところそれを取り締まる法律は整備されていないようです。
最近、同じように万引きで困っているのが図書館です。図書館は、本を万引きするのではなく、返さない人が多いということですが、返さないということは、その本をとってしまうということになります。図書館というものは、自由に好きな本が読めるというとてもありがたい施設です。特に、ほとんどの公共図書館で採用されているような「開架式図書館」では書架が開放されており、来館者が本をその場で読む事ができるように、読書のためのスペースが用意されています。自由に本を取りだして読めるように開放しているということは、来館者の良心を信じているという善意の行為です。その良心がいつまでも続いてほしいと思います。
図書館の中で「移動図書館」という書籍などの資料と職員を載せた自動車や船などを利用して図書館を利用しにくい地域の人のために各地を巡回する図書館のサービスがあります。この移動図書館をザルツブルグを訪れたときに見かけました。
この移動図書館は、バスを使用していますが、このように移動手段として自動車が用いられることが多いことからbookmobileとかmobile libraryと呼ばれていますが、他にも船や列車、1930年代以前には馬車も用いられていたそうです。ずいぶんと古くからあったのですね。
日本では、1948年7月、高知県立図書館で始められた「自動車文庫」が初めての移動図書館だったようです。この移動図書館は、本を身近なものとし、なかなか本が買えないような地域、図書館まで遠い地域の人に本を提供するのに大きな力になりました。しかし、日本では最近、減少傾向にあり、東京では区部における移動図書館が2005年3月末をもってすべて終了しましたが、世界的には移動図書館を必要とするところはまだまだ多く、特に発展途上国ではニーズが高く、日本で廃車になった移動図書館車が譲渡されているようです。
藤森先生も書店めぐりがお好きなようですが、ドイツの本屋さんでもいろんな発見があったようで。「立ち読み厳禁、座り読みなら歓迎」ですか…。興味のある本を何冊も拾い読みして選ぶのには便利ですね。お店によっては、店内に泉があって、その周りにソファーやテーブルが完備しているとか。もちろん自動販売機もあるので、本好きの私ならコーヒーを飲みながら何時間でも粘れそうです(笑)。日本にもそんな本屋ができてくれば、ネットではなく本屋に足を運んで購入する人も今より増えるかもしれませんね。
読みながら、ミュンヘンの本屋さんの風景を思い出しました。用意されたソファーだけでなく、階段のいたるところに座って本を読んでいる人を見かけたときはびっくりしました。万引きの心配はないんだろうかと思ったりもしましたが、実情は分かりませんが、本屋とお客さんとの信頼関係がないとなかなかできないことですよね。私も真似して階段に座って読んでみましたが、慣れない行為で落ち着かなかっただけでなくドイツ語が読めないので、何をしているのか分からなくなり何だか変な感じでした。
ブログにも書かれていますが、日本の本屋では立ち読み禁止という張り紙をよく見ます。それがドイツの本屋では立ち読みが禁止でなく、むしろ座って読むスペースがあるとは信じられません。ただ、店のシステムも日本と全く違うのは、日本の本屋では万引きあると思いますが(今ではデジタル万引きという犯罪もあるのですね)、おそらく、そのような事をする人がいないと店側が完璧に信じているから、座って読むスペースが設けられているのでしょうね。そう考えると、ドイツ人は初対面の人や見知らぬ人でも信じるというか、最初から相手を疑わない、と思いました。また、そういう環境だからこそ、万引きのような犯罪は起こせないのかな、とも思いました。
「移動図書館」は懐かしいですね。私が子どもの頃住んでいたところにも移動図書館車がありました。確か巡回の日が決まっていてその日を確認した上で利用していたと思います。そういえば、移動スーパーというのもあり、私たちが動く代わりに向こうからやってきてくれるというのは便利でした。今では各家庭に自家用車があり行きたい時に「図書館」でも「スーパー」でも行けます。さらに便利になりました。しかしおかげで「移動〇〇」とか「巡回△△」などのmobileサービスの文化が消滅しつつあります。ちょいとさびしいですね。そういえば、日本の本屋さんにも座って本が読めるところができましたね。古書屋さんの中には「立ち読み」OKのような中古本屋さんがあります。漫画コーナーにはいつも「立ち読み」人がいます。