平成8年に環境白書が環境庁より公表されました。その年の白書は、前年度の環境基本法、環境基本計画により示された環境政策の基本理念と枠組み、長期的な政策の方向を具体化し、その実現に向けて軌道に乗せていく実質的な初年度でした。そのために、真に実効性の高いものとしていくためには、社会のすべての主体的に、また、公平な役割分担と責任の下に、連携しながら取組を進めていくパートナーシップの構築が不可欠であると提案しています。そして、様々なパートナーシップの事例から学ぶようにと事例を出しています。
諸外国における取組の例として、ドイツのミュンヘン市の実践が紹介されています。それは、ミュンヘン市の教育活動を行っている「遊びの文化協会」の活動です。遊びの文化協会では、都市計画に遊びの要素を取り入れるため「都市における遊びのネットワーク」の計画、実践に向けた活動を行っています。これは、遊びの活性化と遊び空間の設計とを密着させ、遊びを「子どもの文化」と位置付け、社会文化的な観点と教育的な立場に基づき遊びを取り入れようとするものです。ミュンヘン市では、1989年に「遊び空間のある都市」をテーマに、遊びバス、遊びの日、遊び活動家と教育家たちの監修による遊びの家と冒険グラウンド等を設けました。
この白書の中で紹介されている「遊びの文化協会」が主催している「羊とのふれあい体験を通して」という活動を、今回、ドイツミュンヘン市の英国庭園に見に行きました。全長8㎞もあると言われる公園の中を責任者であるグリューネヴァルド市の案内で歩いていると、以前のブログで紹介した野尻湖畔の癒しの森を歩いているような気分になり、市街の中心部からわずかな距離であることを忘れそうになります。次第に足もとに羊のふんが多くなり始めたかと思うと、向こうのほうに毛を刈り取られたばかりの羊の群れが見えてきました。
その群れの近くでは、子どもたちが先日刈り取った羊毛を水でよく洗い、木の枝に干していました。

それが終わると、今度はそれをブラシで伸ばし、槌で幾層にも重ねて叩いていて、毛布にしていました。羊毛と言えば、私は、「シュタイナー教育」を思い出します。シュタイナー教育では、多くの手仕事をします。幼稚園では、自然素材の羊毛を洗い、草木染めで色をつけ、木の枝に編みこんで模様を作ったり、フェルト化してボールを作ったり、太毛糸で指編みをしたりします。草木染めされた自然素材の羊毛や綿を手で感じながらの作業は子どもたちに癒しを与えます。また、命のある素材を扱いながら、子どもたちは感覚を磨き、自分自身と向き合いながら世界を体験しているとシュタイナー教育では言われています。また、手仕事は、単調な繰り返しの作業です。しかし、その単調な繰り返し作業に没頭し、その繰り返しの作業から生まれる規則正しいリズムは、人間の生命力を強めます。
今回のドイツ研修でも、一か所、ザルツブルグにあるシュタイナー幼稚園を見学しました。独特の曲線で構成されたドアを入ると、とても落ち着いた色調で、自然物が遊びの素材として用意されている中で、羊毛で作った装飾が飾られていました。
白書には、昨日のブログで紹介した冒険遊び場も紹介され、こうした遊び場は、世界的な広がりを見せていますが、その背景としては、優れた環境が本来持つ「遊び」を可能にする機能が、現代社会の中で見直され、人の手によって守り伝えられていく必要性が次第に認識されてきたことがあると考えられると書かれてあります。
『優れた環境が本来持つ「遊び」を可能にする機能が、現代社会の中で見直され、人の手によって守り伝えられていく必要性が次第に認識されてきた』という言葉に、なるほどと思わされました。子どもにとって遊びが勉強であるならば、羊との触れ合いも素晴らしい遊びであり勉強ですね。環境白書と遊びの関係は何となく意外に感じましたが、ミュンヘン市の取り組みは興味深いです。こうした体験を、私自身がやってみたいと思いました。
もしも私が市会議員だったら、議会で『我が町もドイツのミュンヘンのように遊び空間のある都市に』と演説をぶってみるところですが、実現するのは難しいでしょうね。子どもの遊び空間だから教育委員会かといえば、それは公園課の所管だと逃げられ、そんな大がかりなら土木課だろうとたらい回しにされそうです(笑)。まるで映画「生きる」の世界ですね。やっぱり「遊びの文化協会」のような在野の活動で行政を動かしていくしかないですね。でも、市街地の近くでこんなに羊を飼ったら臭いだの、子どもが触ったら不潔だのとやかましく言われそう…。子ども中心という点では、日本は到底ドイツには叶わない、それが実感です。
ミュンヘン市の真ん中に全長8キロもある英国庭園の公園があり、そして羊の群れもいるなんて、考えられません。東京で、その広さに匹敵する公園は新宿御苑や日比谷公園くらいしか思いつきませんが、さすがに羊がいて、子ども達が羊毛を取り、それでボールを作ったり、指網が出来る環境を用意してあるのですね。そんな羊との触れ合いの中で、羊毛を使って色々な物を手作業で作ることで、人間の生命力を高めるのですね。そして手で作る事が受け継がれ、次の世代に伝えられて、守られていくのですね。
ミュンヘン市の「遊び空間のある都市」づくりには関心をそそられます。日本の都市が「遊びの空間」づくりを考えた場合、商業主義的テーマパークになるか、公園等に大型遊具を入れたり、あるいはアスレチック施設を導入したり、というところで落ち着くような気がします。英国庭園の「羊の群れ」はそれだけで子どもたちの無限大の興味関心を引き起こすでしょうが、さらに羊の毛を刈って羊毛作りに発展させる。そして出来上がった羊毛は装飾等に用いられる。とても素晴らしい取り組みですね。東京の新宿御苑でもやってみたら、と思うのですが・・・。「冒険遊び」、大賛成です。大人になった今も街中を散策することを楽しんでいますが、そのもとは子どもの頃に経験した「冒険遊び」だと思います。ウォークラリーは立派な冒険遊びですね。