自尊感情3

 こどもにおける様々な問題点を考察したときに、その原因が保護者にあることは当然ですが、もう一つ、学校教育システムにあることが多いようです。それは、なんだか最近のテーマになっていて、何度も同じことを言っているような気がしますが、それは、どの切り口から見ても同じところに原因があるということになるのです。
 子どもの幸せ度を測るQOL得点は、「身体的健康」「情緒的ウェルビーイング」「自尊感情」「家族」「友だち」「学校」の6領域で評価するものですが、どの項目においてもオランダの子どもたちは日本の子どもたちよりもかなり高い得点を得ています。その理由を古荘純一さんは「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか―児童精神科医の現場報告」(光文社新書)の中で、こう分析しています。
 家族の項目が高いのは、オランダでは家族と過ごす時間が長いからではないかと言っています。実際に訪れても、昼休みに父親が自宅に帰って、子どもたちをサポートしたり、夕方に父親が子どもと買い物に行くことが認めらていたり、夕方以降の市内の店舗はほとんどしまってしまい、街を歩く人もなく、コンビニなどほとんどなく、家族団欒の時間が多いのです。これは、ワークシェアが進んでいるベルギーをはじめとした北欧ではほとんど国でもそうですし、ドイツでも同じような状況があります。
 学校の項目も日本では得点が56.0であったのに対してオランダでは77.1とかなり高くなっています。この理由の一つは、一人一人の子どもが、自分の発達に応じて個別の学習を進めることができる授業の仕組みが大きく影響しているのではないかと言っています。日本とオランダの教育環境の大きな違いは、一斉教育か個別教育かの違いがあるといいます。一斉授業は、発達の早めの子どもやもともと能力の優れている子どもであればよいのですが、授業の進度から遅れがちな子どもにとっては、取り残され感が強く、毎日毎日、自尊感情を下げるために学校に行っているようなものであるとまで古荘さんは言っています。
 今世界で行われ始めた教育は、子どもたち一人一人が自分の発達の段階や学習の進度に合わせた課題に自発的に取り組むことができます。オランダの教育システムの改革の道のりをリヒテルズさんはこう言っています。民主的な市民社会に関する議論が高まり、その中で「インクルージョン」という概念が出てきたそうです。これは、社会の成員が互いに受け入れあう、という概念です。その考え方から、子どもたちが互いに個性をもったユニークな存在として受け入れあうことが目指され、教師と生徒も「教え」「習う」という関係ではなく、同じ社会の成員として受け入れあう関係になるべきという方向に変化してきました。親子、教師と生徒、その関係は権威主義ではなく、互いに学び続ける社会の一員として尊重しあうという意識が生まれてきたのだといいます。
 この書籍の中で、日本の一斉授業の在り方は様々なところで子どもに閉塞感を与え、古荘さんが子どもたちの精神的相談を受ける中で問題が多いのではないかと指摘します。これは学校教育についての調査ですが、幼児教育の場でも調査方法が検討されています。
 今日からドイツに来ています。幼児教育の観点からですが、ドイツから幼児教育における日本との違いを明日から報告できたらと思います。

自尊感情3” への5件のコメント

  1. 無事にドイツに到着したようで安心しました。
    インターネットも繋がるようですね。
    ドイツでの日々、一緒に体験できるのを楽しみにしています。

  2. 小学校の授業を見て、この子はきちんと理解しているんだろうかと思うことがあります。理解していないとしたら、どのようにそこをクリアして次に進む方法をとっているんだろうと疑問がわいてきます。もし個々の理解度に関係なく次々と進んでいくとしたら、その子の不安は大きいでしょうね。それでも全体として授業が流れてしまうところに一斉授業の怖さを感じます。

  3. ネットでリヒテル直子さんの講演記録を読みました。オランダが「寛容」の心を社会に根付かせることができたのは、宗教的な背景があるようですが、いわゆる「学校闘争」を経て制定された憲法23条(教育基本法)がとてもすばらしい。「設立の自由」「理念の自由」「教育方法の自由」の3つの自由が保障されています。特に、「教育方法の自由」は使う教材や教科書といった狭い意味ではなく、教室をどうするか、クラス編成をどうするか、あるいは先生対子どもの関係をどのようにデザインするかという大きな意味での教育方法を自由なものと定めています。よって、学習の目標は国が決めますが、それを達成するためにどの方法を使うか口出しすることは「憲法違反」になります。日本のように、学習指導要領でがんじがらめにされた教育現場とは全く趣を異にします。子どもの主体性を論議する前に、学校や教師の主体性を保障する制度も合わせて考える必要がありそうです。

  4. 「子どもを王様にしないで下さい!このことを家庭にしっかりと言っていかなければなりません。」と学校の先生に言われたことがあります。この「王様にしない」とは、簡単に言えば、躾けを徹底する、ということのようです。つまり、アンダーシャツをはみ出さない、2歳児のように駄々をこねない、先生の話を聞く、同じ事を何回も注意されない・・・・。そしてその先生の授業を拝見しました。一斉に教科書を音読します。その後先生が質問し、子どもたちは「ハイハイ」と自分を指してもらおうと必死です(我が子もその中にいましたが手を挙げません、やれやれ・・)。先生のコントロールのもと授業は進み行きます。一番前に座る我が子はしきりと欠伸をしています。前の晩寝るのが遅かったからでしょう。

  5.  QOLの家族の項目と学校の項目の得点が日本よりオランダが高いのは、ブログに書かれているように、父親が昼休みに自宅に帰り子どもと過ごしたり、買い物に出かけたり、学校では個人の発達に応じた個別の授業の影響など、日本では父親が昼休みに帰ったり、学校の授業が個別授業にシフトするなど、なかなか難しい事だと思います。ブログに書かれていますが、教師と生徒も「教え」「習う」という関係ではなく、お互いが学び合うという事を大切しようと思いました。

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