中小企業

 不況だと言われて久しくなりますが、そんな中でも元気のいい企業があります。中小企業庁では、現在事業活動を行っている中小企業、これから事業を起こそうと思っている人に対する支援を行っていますが、その活動の中で、「2009年元気なモノ作り中小企業300社」を選定しています。私たちはとかく大企業に目を向けがちですが、日本の企業の中で海外から大きな評価を受けているものに高度なモノづくり技術を持っている中小企業があります。また、その中には、規模は小さくても、モノ作りを通じ地域経済に貢献している企業、社会的課題に対応して新規分野を開拓している企業なども存在します。そんな企業を選んだのが「元気なモノ作り中小企業300社」です。
今年選ばれて企業の中に、今年で創業35年になる「中村ブレイス」という会社があります。この会社を講演に来たついでに訪ねてみました。あいにく、内部は見せてもらえませんでしたが、「外観はどうぞ写真を撮ってください」と言われたので、何枚か写真に収めました。
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この会社は、石見銀山がある島根県大田市で義肢や人工乳房などを製造し、国内はもとより欧米をはじめ約30カ国に出荷しています。社長の中村俊郎さんは、島根県の教育委員会委員長も務め、地元の石見銀山の世界遺産登録にも尽力し、オンリーワンの技術を磨き、石見銀山のある故郷にこだわり続ける中村さんは「若者が育つ街としてこれからも踏ん張る」と意欲を語っています。
京都や米国で義肢装具作りの修業をした74年末、生家の納屋を作業場として26歳のときに1人で起業します。義肢やコルセットは市場は小さいですが、一定の需要はあります。そんな業界の中で、丁寧な作り込みが評判となり、口コミで徐々に注文が舞い込み始めます。この会社が大きく飛躍したのには、社長の下従業員みんなで「使う人の身になって喜ばれるものを」ということで開発されたシリコーン製医療用靴の中敷きです。この製品は、骨折や扁平足や外反母趾などの治療、矯正に使われ、最近では国内外で年間5万~6万人が利用し、同社の売り上げの約3割を占めているそうです。
また、「求められるものを」との思いは事故や病気で失った耳、手の指、乳房などを製作する技術にも生かされます。そんな製品づくりは、「メディカルアート研究所」の設立をもたらし、医療と美術の両立に力を入れています。
社長の中村さんのモットーがあります。それは、従業員を何よりも大切にすることです。こんなエピソードがあります。創業まもないころに知人に頼まれて初めて雇った20歳前の青年が、朝来て1時間も働くと「疲れた」と言って帰ってしまうということが起きます。そんな青年を周囲からは、退職させることを勧められます。しかし、中村さんは、「最初の青年を生かせなければ、どんな社員も育てられない」と考え、粘り強く青年と向き合い、その結果、「怠けているのではなく、本人は一生懸命なのが分かった」ということで、青年の勤務時間は徐々に伸び、7年半後には通常勤務をできるまでになったということです。
そんな考え方で、経営悪化を理由に従業員を辞めさせたこともないということです。むしろ子育てのために退職した女性に子どもの世話が一段落した時点で、せっかく育てた人材を生かさない手はないということで、積極的に復帰させます。中村さんは「ものづくりの基本は人材」と語ります。
そして、社のモットーである「THINK(考えよ)」と書かれた紙が社内のいたるところに張られています。「何もないところからのスタートで、知恵を絞るしかない。今でも変わらないモットー」とは中村社長の原点です。

中小企業” への4件のコメント

  1. 「最初の青年を生かせなければ、どんな社員も育てられない」という考えを実践し続けてきてきたことは本当にすごいと思います。基本は人材という言葉はあちこちで聞きますが、言葉だけで終ってしまうことも多いと思います。そんな素晴らしい実践例が近くにあることで勇気をもらえます。「何もないところからのスタートで、知恵を絞るしかない。」という言葉も同じです。何もないからとあきらめるのではなく、そこがスタートと考えることでしか先は開けてきません。腹の括り方を教わった気がします。

  2. 家電商品の量販店で急成長しているヤマダ電器の社長が、私の大学時代の同期生だということをつい最近知りました。と言ってもお互いに面識はないのですが、同窓の仲間の活躍は心からうれしいしですね。彼のインタビューが総合月刊誌に載っていましたが、この会社も社員2万人の大企業でありながら、リストラをしないことを会社の方針にしているようです。「人材は人財」がモットーで、役職別に体系づけられた人材教育システムで社員を鍛えているようです。「会社の品格」は、不況の時でもどれだけ社員を大事にできるか、そんなところにも表れてきますね。

  3. 以前、何かのテレビ番組で「中村ブレイス」を知りました。人が使う義肢やコルセットなどを作る会社なんて今まで、あまり聞いたことがなかった分、強く印象に残っているのでしょうか。そんな「中村ブレイス」の社長の言葉「ものづくりの基本は人材」という言葉は、とても心に響きました。実際のエピソードを読んでも、そう思いました。これは中村社長が社員を信じ続けることが、ものづくりの基本であり、世界にも通用する物を生み出すことが出来るのだと思いました。この言葉は何も「ものづくり」だけでなく、色々なことに共通するような気がします。とくに保育や教育に関しては人との関わりが重要になる分、同じだと私は思いました。

  4. 「代わりは何人もいる!」という言葉を耳にし、また自身そう思ったことがありました。今、保育園という子ども主体の仕事場で働いていますが、職員さんがほとんど辞めずに働き続けていることは実に驚くべきことです。およその園などで離職率が高い、などと耳にすると何故?と首を傾げてしまいます。子どもという将来を担う人材を取り囲む大人たちが定着することなく入れ替わり立ち代りめまぐるしく変わる職場における「人」とは一体何か?今回のブログで紹介された「中村ブレイス」さんの社長さんの青年社員エピソードは人を使い捨ての何かのように平気で扱う今の世にあってとても光る出来事です。もっとも私が勤める職場も「中村ブレイス」さんに劣っていませんが。

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