五教

 長崎からの帰りには、長崎空港を使いますが、この空港は少し不便な所にあります。というのは、長崎市内からは大村湾をはさんでほぼ反対側の大村市にあるからです。先日、帰るときに飛行機に乗るまでに少し時間があったので、いつもは素通る大村市を散策してみました。歩いていると、途中に「五教館御成門」という重文の門がありました。
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「五教館」は、大村藩の藩校です。大村藩4代藩主純長公が寛文10年(1670)に大村城郭内に「集義館」を文武の教育のために開設しました。その後、「静寿園」と改められ、寛政2年(1790)9代藩主純鎮は規模を大きくし、学問所を「五教館」、武道場を「治振軒」の2つとしました。この五教館には、藩令により藩士の子弟に限らず,農民や町人の子弟も入学していました。歴代教授の中には著名な学者もいて、同館から多くの人材を輩出しているそうです。その後、現在の場所に移り、現存しているのは、藩主の出入りに使用されていた通称「黒門」と呼ばれている門だけです。
「五教」とは「五倫」の道を教えるという意味です。昨日のブログで書いた「助長」の考え方を示した孟子が唱えた考え方で、「人倫五常」と呼ばれるものです。これは、人との関わりのあり方を示したものです。「五常」とは、「四徳(仁・義・礼・智)」に「信」が足されたもので、「五倫」とは、「親・義・別・序・信」の五つで、大辞林では、孟子の「教似人倫、父子有親、君臣有義、夫婦有別、長幼有序、朋友有信」から、儒教における五つの基本的な人間関係を規律する五つの徳目であると書かれてあります。
まず、「父子有親」は、親子関係を表しています。それを「親」といっていますが、これは、「一つになろうとするしたしみ」であるといわれています。この関係は主に子から親に対しての心構えを言っていますが、最近の子ども虐待のニュースを見聞きするたびに、親子というだけあって、「親」の情を持ってほしいと思います。つぎの「君臣有義」は、君臣間の関係をよく維持するための最も大事な心構えは「義」であると言っています。これは、上杉でも大切にされていたもので、「状況に応じた正しい行動をする」ということです。最近では、なにも君主に対してということではなく、仕事をする上での心構えのような気がします。「夫婦有別」は、夫婦の在り方を言っていますが、この「別」は、当時としてはとても面白い考え方だと思います。それは、「各々の本分・職能を乱さない区別」ということのようで、夫婦は、なにも一心同体ではなく、それぞれの役割を持って、共に生きることであることだと思います。「長幼有序」というのは、よく言われますが、年配者と若者の間の順序をわきまえるということです。それは、なにも年長者が偉いということではなく、年長者は年長者の自覚を持ち、その年輪に対して敬意を払うということでしょう。さいごの「朋友有信」は、友達との関係は、「信」という「偽りのないまことの心」で接するべきであるということです。
この「五倫」は戦国時代に崩れてしまった家族倫理・社会倫理の立て直しを計って孟子がそれ以前の教えに基づいて具体化したものですが、しかし、人との関係性が希薄になってきている今、これをそのまま当時の考えの通りに使うわけにはいきませんが、このような考え方に耳を傾けるべき多くの知恵が含まれています。

五教” への5件のコメント

  1. 人間関係にもいろいろあり、それを5つに分けて示しているのはいいですね。その人との関係によって接し方は様々です。それぞれで心がけることがあることを忘れてはいけないですね。とくに「夫婦有別」は考えさせられました。それぞれに役割があって決して同じであることを求めるのが夫婦のあり方ではないとのこと。反省することがたくさんあります。

  2. 「五倫」をよくよく眺めてみると、人が社会生活を送るにあたって経験する「関係性」をうまくまとめてあるのがわかります。幼少の時期は、親との関わりから始まり、長じて社会に出ると、会社や組織との関係を経験します。結婚をして夫婦になれば、妻という異性との関係に悩むことも(笑)。年長の人には、尊敬を持って接し、友人との信義にも厚いことが社会人の要件ですね。決して、古い倫理観ではないと思います。ただ、それを自然に修得する機会が今の教育には無いような気がします。

  3. 里見八犬伝の「仁、義、礼、智、信、忠、孝、悌」八つの玉の文字を思い出しました。
    持ち場立場で、家庭はもちろん、色々な人とコミュニケーションをとることが大事ですね(頭でわかっていても…心がついていかないことがある(笑)…)
    ※「魚沼」のコメントで、「soul」と打ちたかったのに「soui」になってしまいました。 大変、失礼いたしました。

  4.  「五倫」の教えはとても勉強になりました。「親・義・別・序・信」の一つ一つの意味が、今後の人生でどれも参考になる内容ばかりです。どれも、とても大切な事なのですが、個人的に特別に感じた言葉は「義」と「信」の二つです。この二つは今の自分にはとても重要な事だと思いました。まず、子どもと接する上で「状況に応じた正しい行動をする」「偽りのないまことの心」というのは、常に持っている必要があると感じました。
     今日のブログも初めて聞く内容でいたので、とても勉強になりました。

  5. 藩校の名前には興味深いものを感じます。今回のブログで紹介された大村藩の藩校「五教館」もその一つです。文字面だけを読むと「5つのことを教える学校」ということはわかりますが、じゃぁその「5つ」とは何かという疑問が頭をもたげます。そしてブログで説明されてあったように再び「孟子」先生登場!「人倫五常」は「人のみち(倫)は五つを常とする」ことですから「仁義礼智信」「親義別序信」は私たちが「人」として生きて行くうえで基礎としなければならないことですね。そして当たり前ですが、しかしとても大切なこと、すなわち適当な関係づくりを行うこと、が「五教」の真髄にある。「人との関係性が希薄になってきている今」にこそ必要です。しかし今の「教育者」は「仁義礼智信」「親義別序信」を子どもたちにどう伝えることができるのでしょうか???これらを伝え得るためには「子どもは自ら育つ主体であることを信じ、その主体が自己実現が可能となるように適当な教育環境を構成・設定する」ことを理解し実践することが必要でしょう。

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