昨日の日曜日に、妻と高尾にある「多摩森林科学園」に行ってきました。ここは、大正10年2月、宮内省帝室林野管理局林業試験場として発足しました。その後、昭和22年には、林政統一により農林省に移管され、林業試験場浅川支場となり、その名称も昭和32年には、「林業試験場浅川実験林」となりました。現在は、森林・林業・木材産業に関する試験研究機関である独立行政法人森林総合研究所の支所の一つとして、森林環境教育の場における動植物の多様性保全・生態系の役割解明に関する研究を行っています。
ここ多摩森林科学園のサクラ保存林は、わが国の桜の遺伝子を保存し、後世に伝えるために、昭和41年度から造成されたもので、様々な約250種、約2000本の全国の桜を見ることができます。広さも日比谷公園の約3,5倍の57haもあり、ちょっとしたハイキング気分です。そこを散策しながら、途中の満開の花の下で手作りのお弁当を頬張りました。ただし、アルコール類は禁止ですので、いわゆるお花見客はいず、多くは、私たちのような年配の人であふれています。しかし、私は、昔は非公開で、ある時から、大阪の造幣局のように、桜がきれいだからその季節だけ公開していたように記憶しているのですが、現在は、年間を通して一般公開しています。
ここの桜の種類が多いということは、花の咲く時期や、色、大きさ、形などがそれぞれ違っていて、長い期間楽しむことができます。たとえば、秋から冬にかけて咲くものや、緑色や黄色の桜、匂いのある桜もあります。今の時期に咲く緑の花の「御衣黄」が人気がありますが、新緑の木々の中を歩きながら、時たま美しい桜の林に出ると、それぞれ桜ならではと思われる優雅な名前を読みながら、その由来を考えるのも楽しみです。

今の時期でも、まだまだ満開の桜が多いのですが、その中でもひときわ目立つものに「八重桜」があります。この桜は、野生の山桜に対して人里の桜ということから里桜とも呼ばれています。一番人気の黄緑の桜「御衣黄」も八重ですし、同じようにうす黄色の桜「鬱金」もあります。この花は、音では「ウコン」といい、色を表しているのですが、なんだか「鬱(うつ)の金」という感じがして、写真を撮りませんでした。他には、「普賢象」「楊貴妃」「一葉」「八重紅虎の尾」などがありますが、何と言っても有名なものは、「関山」という品種です。それは、桜湯に使う塩漬けにした花はこの種類が多いからです。
園の近くの小学校や幼稚園の入学式に参加すると、控室に通されて、まず「桜湯」が出てきます。桜湯は、お茶の代わりにおめでたい席によく出されますが、見合いや婚礼などの一生を決める祝いの席では、その場だけ取り繕ってごまかす意味の「茶を濁す」ことを忌み嫌うことから、お茶を用いず、代わりの飲み物として桜湯を用います。この桜湯に用いる桜の花の塩漬けは桜漬けとも呼ばれ、がくを除いた花全体を梅酢と塩で漬け込んであります。入れる前は茎の部分が表面に表われた丸まった状態ですが、湯のみ茶碗に入れて湯を差すことで塩漬けの塩が溶けだし、花びらが開いて湯の上面に浮いてくる姿と、同時にほんのりお湯が桜色に染まる様は、まさに日本の伝統美を感じます。
「いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に 匂ひぬるかな」(伊勢大輔 詞花集 百人一首)
郵政記念日の今日は「切手趣味週間」記念切手の発行日です。今日のブログの最後に紹介されていた「伊勢大輔」も1960年の「切手趣味週間」の図案として採用されています。「見返り美人」や「月に雁」は高値の花で未だに入手しておりませんが、「伊勢」は何とか手に入れることができた一枚です。さて、「桜湯」です。先日私も二度賞味する機会を得ました。白湯に溶け込んだ塩と桜香がこの上なく上品な風味を醸し出し、それだけで何だか厳粛な気分になりますから不思議です。高尾にはまだ縁なく訪ねてはおりませんが、いつかは高尾山及び「多摩森林科学園」にお邪魔してみたいと思っております。おもしろうそうな所ですね。「八重桜」はにぎやかです。「奈良の都」以来の桜花。八重の華やかさは古えの香を現代にもたらしてくれます。
今日のブログに刺激を受けて、桜のことをいろいろ調べてみました。桜前線のスタートは、もちろん沖縄ですが、1月上旬には、本島北部の八重岳のカンヒザクラが咲き始めます。沖縄は冬でも暖かいので、気温の低い山の上の桜のほうが平地より早く開花するとか。面白いですね。では、桜前線のゴールはどこでしょう。北海道の東端の根室あたりかと思われますが、実は、北アルプスや南アルプスなどの高山地帯の「タカネザクラ」は、例年8月でも花をつけていることもあります。実に、半年以上かけて、桜前線は日本列島を移動するんですね。南北に細長い国土の日本ならではですね。
「御衣黄」の写真を見ましたが、本当に緑色なんですね。ちょっと感動しました。桜の種類が250種もあることにも驚きました。自然というのは奥が深いです。分かったつもりになっても、すぐにそこから先の世界が広がります。このように、分からない・不思議な世界の存在というのは、私たちにとって貴重なんでしょうね。
この年になって、やっと桜を見て感動できるようになりました。ですが、もう少し早くそういう感覚を身に付けたかったと思います。「多摩森林科学園」のような公園や植物園などに行って、250種類もある桜を見て感動できたと思うからです。それにしても桜に250種類もあるというのは本当に驚きました。普段、学校や川沿いに植えてある桜は、ほとんど全て一緒ですし、まれに違う種類も見ますが、だからと言ってそこまで多いとは思ってもいませんでした。今年はもう桜の時期は終わりますが、来年は是非とも純粋に桜を見るのを楽しもうと思います。