カチカチ

今から100年前の1909(明治42)年6月19日に生まれ、39年目の同じ6月19日の早朝、玉川上水から入水自殺をした遺体が見つかったのは、太宰治です。ということで、ことしは、太宰治の生誕100年で、それに合わせて、さまざまなイベントや企画が行われています。先日紹介した津軽弁で語った「走れメロス」の本もそうですが、今日のニュースで流れたのが、青森県・弘前の菓子製造販売会社「ラグノオささき」が太宰の小説「津軽」を題材にしたクッキーを完成させたというものでした。パッケージは1944年に出版された太宰の小説「津軽」の初版本を模しており、中身は100%青森産のリンゴファイバーを使ったクッキーだそうです。菓子のキャッチコピーは「これは、食べる小説です」というものです。
また、太宰が晩年を過ごした東京・三鷹市と生誕の地の青森県五所川原市で、6月20日に「第1回太宰治検定」が行われるというニュースもありました。テキストは太宰の小説「津軽」を題材に、物語を読み進めながら津軽地方や太宰について学べる仕組みで、検定の問題は「津軽」と公式テキストから出題され、択一式で100問予定されているそうです。例題には、「小泊村(現・青森県中泊町)で、太宰と(子守の)たけは30年ぶりに再会する。再会場所はどこか。(1)たけの自宅(2)国民学校運動場(3)竜神様」というような問題が提示されています。
太宰は、自ら愛人と入水自殺を何度も計ったように、男女の愛については独特の見解を持っているようです。こんな結びを書いています。
「曰く、惚れたが悪いか。古来、世界中の文芸の哀話の主題は、一にここにかかっていると言っても過言ではあるまい。女性にはすべて、この無慈悲な兎が一匹住んでいるし、男性には、あの善良な狸がいつも溺れかかってあがいている。作者の、それこそ三十何年来の、頗る不振の経歴に徴して見ても、それは明々白々であった。おそらくは、また、君に於いても。後略。」
この文は、おとぎ話の「カチカチ山」のパロディー版として書いた太宰の「カチカチ山」の最後の文です。カチカチ山は、誰でも知っている話ですが、その残酷さは、童話の多くが持っている残酷さに比べても群を抜いています。それは、ウサギが狸にひどい仕返しをするというよりも、狸が助けてくれたおばあさんを殺して、それを汁にして、おじいさんに狸汁と言ってだまし、全部食べさせてしまうなどです。
太宰のカチカチ山の書き出しではこう書いてあります。「カチカチ山の物語に於ける兎は少女、そうしてあの惨めな敗北を喫する狸は、その兎の少女を恋している醜男。これはもう疑いを容れぬ儼然たる事実のように私には思われる。これは甲州、富士五湖の一つの河口湖畔、いまの船津の裏山あたりで行われた事件であるという。」
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カチカチ山から見た河口湖
ここに書かれている河口湖畔の「カチカチ山」に日曜日に妻と行ってみました。ロープウェイで登ったカチカチ山である天上山公園は、河口湖の全景や、富士山の裾野まで見渡せる絶景のロケーションでした。
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  カチカチ山から見た富士山
特に、快晴だったこともあって、あの残酷なカチカチ山の話も、美しい富士と、山頂に設置されているかわいらしいウサギとタヌキの置物で、おとぎ話だったのだということを思い起こしました。
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カチカチ” への5件のコメント

  1. 古くから親しまれているおとぎ話とか童話と言われる中には、この「カチカチ山」のように結構怖い話が多いですね。グリム童話の「赤ずきん」でも狼はおばあさんを食べてしまい、おばあさんの姿に化けて、赤ずきんも食べてしまう。最後は、猟師に助けられるのですが、決して明るい話ではないですね。おとぎ話は、子どもたちに人間は善だけでなく醜い悪の部分も併せ持っていることを教えようとしたのでしょうか。人間の心に巣くう「悪」の心-太宰治は小説を書くことで、それを乗り越える道を求めた挙句、失意のあまり入水したのかもしれません。(勝手な想像ですが)

  2. ○○検定というものをよく聞くようになりました。地域の特色を生かした取り組みはいろんなところで行われていますね。こうした取り組みが定着して地域が元気になることは、今特に求められていると思います。楽しみな話題ですね。
    太宰治の男女観はおもしろいですね。女がウサギで恋する男がタヌキ、分かる気がします。カチカチ山の話がこんな風に展開していくとは、やはり小説家の感性はすごいと思います。

  3. 何年か前に、河合隼雄の「昔話の深層」を読みました。藤森先生のカチカチ山の話を読んで、”そうだ…”と思い出し、さっつきまでさらさら~と読みかえしてました。
    この本を読んで、子供向けでない「日本昔話」の童話セットを買い読みました。
    グリム童話もそうですけど、確かに残酷な終わりの話が多いですね。
    人の「心」ほどわからないものはないですが、人間、笑い続ける事も、泣き続ける事も、怒り続ける事もできない。と思っています。だから、なかなか心を開いてくれない親御さんにも”相性が合わない”ではなくて、真実で接しようと心がけています。
    …頭で思っているほど簡単ではないのですが…(笑)

  4.  「カチカチ山」のお話はよく母た祖母に読んでもらった記憶があります。そして「♪カチカチ山の狸さん…」と歌もよく歌っていました。
     そんなカチカチ山というのは実際にある山なのですね。おとぎ話の中だけの山だと思っていたので、驚きました。それよりも本当の「カチカチ山」のお話がこんなにも残酷で恐ろしいものとはショックを受けました。他にも私が知っているおとぎ話も本当はとても怖い内容かもしれませんが、できれば知らずにいたいと思います。小さい頃におとぎ話を楽しんで聞いていたままの記憶でいたいです。

  5. 本当~に富士山は美しい山です。こうした美しい富士山のある国に生れたことを今回のブログの写真を観ながら感謝した次第です。天山上公園から見た「河口湖」の風景も良いですね。行ってみたくなりました。さて、太宰治です。中学時代の愛読書が太宰作品で中学三年の時『斜陽』の読書感想文を書き賞を戴いたことがありました。しかしながら、爾来太宰治の小説を読む機会がありません。従って小説内容を忘れてしまっています。生誕100年、ということもありますから再読してみようかな、と思います。「カチカチ山」が本当に存在することに驚きました。そういえば今回の富士山の向こう側にある御殿場付近には「鉞かついだ金太郎」の山があります。富士山周辺の童話の世界。何だかロマンです。カチカチ山への「ロープウェイ」にも乗ってみたいものです。

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