今日、たまたま職場内を誰が掃除をするかという話題になりました。私がもう十数年前に、ホテルが運営している日本で初めての認可の企業所内保育園に取材に行った時の話です。その保育園は、ホテルの従業員の中で小さい子どもがいる従業員のための福利厚生施設として開設されていました。それは、人材確保のためにもとても効果がありました。しかし、その保育園が閉鎖されるという話での取材でした。そのホテルは、保育園を運営できるほどですので、とても大きなホテルで、従業員もたくさんいました。しかし、取材に行ってみると、なんと従業員は、数人になってしまったといいます。それは、事業の縮小ではなく、ホテル内のそれぞれの作業をすべて業務委託したためだと言いました。掃除は掃除事業者、ベッドメイク、お茶のセッティング、食事、すべて業者に委託しているために、ホテルで直接雇用している職員は数人で済んでいるということでした。
この取材はずいぶんと昔のことですが、最近、会社でも業務委託が多いようです。掃除はもちろんですが、受付とか、電話応対なども委託をしている会社が多くみられます。最近、学校などでは給食の業務委託が増えてきましたが、日本では、学校での掃除は業者に委託をしないようです。子どもたちが掃除をします。しかし、学校内を児童に掃除をさせるのは、掃除に教育的意味を見出している儒教の国だけであると聞いたことがあります。ただ、私が通っていた高校では、掃除を業者に委託をしていました。ということは、生徒は教室の掃除をしませんでした。これはたぶん、珍しいことでしょう。
日本では、掃除をおこなう人は誰であるかというアンケートでは、現在では主婦が一番目で、その次が母親の順ですが、昔は子どもの仕事でした。また、毎日掃除をする人の割合は60代以上の人が多く、掃除の仕方は家族(母親、祖母)が教えてくれたという人が多く、その他では先生です。ですから、掃除は、「生活の知恵」がいっぱい詰まっています。「ぬるま湯に酢をいれて雑巾をしぼる」「一度使った水を再度使う」「茶殻をまいて掃く」「ガラスを新聞紙で拭く」「おからを布巾で包んで拭く」などが伝承されています。子どもが掃除をすることによって、このような生活の知恵を学び、また、体や腕などの筋肉や運動能力を養っていました。そんな意味でも、子どもが掃除をすることにはとても意味あることのような気がします。
私の園では、食事の前に机の上を雑巾で拭いたり、食事の後の床を拭いたり、製作などで散らかった紙くずなどを子どもたちが掃除をしています。その姿を見たある保護者のアンケートに、「子どもに掃除をさせて、先生が楽をしている」というものがありましたが、掃除の業務委託をしている会社にでも勤めているのでしょうね。それとも、その保護者の学校時代に掃除がいやでしょうがなかったのかもしれません。
そんなわけで、家庭でも掃除を委託するのが増えてきているようです。それと、最近私の園でも購入しましたが、掃除ロボットが勝手に掃除をしてくれているのかもしれません。そのロボットを見ていると、とても感心します。あちらこちらのごみを感知して掃除をして回ります。そして、入ってはいけないところ、行ってはいけないところには、電波を出すポットを置いておくだけでそこに決して行きません。そして、充電が切れそうになると、自分から充電機に戻っていって充電を始めます。
洗濯をするときにはスイッチを押すだけ、調理をするときにも電子レンジのスイッチを押すだけ、掃除をするときにもスイッチを押すだけで済みます。
それはそれでいいのですが、それで生まれた時間は、何に使うのでしょうか。
当然ですが、掃除にどのような意味を見出しているかによって対応が変わってくる問題ですね。掃除だけでなく何かのあり方を見直すとき、それがどんなに大変なことだとしても、そのものの持つ意味を考えるとなくしてはいけないものもあります。反対に意味があっても全体を考えると優先順位が後のものもあります。そうしたことを見極めるバランス感覚も大切でしょうね。
ホテルなどの民間事業者だけだなく、一般家庭でも掃除まで専門業者に代行させる人が増えているという話です。そうでなくても、家で掃除は母親がやってくれるので(それも掃除機で)、ますます子供たちは家庭で掃除をする習慣が身につかなくなりそうです。今、小学校では、学校掃除は曲がり角を迎えているようです。掃除を嫌がる子供や、掃除道具の使い方がわからない子供が多いという指摘もあります。子どもの生活習慣のスキルを習得するという観点から、保育園での掃除の活動を見直す必要がありそうです。
小学校から高校まで掃除はありました。とくに小学校のころは「縦割り清掃」といって、1年生から6年生まで各学年2~3人が集まって掃除をしていました。その時に上の学年の人に箒の使い方や雑巾がけを教えてもらったような気がします。たぶんそのおかげで掃除用具の使い方を学んだような気がします。幼稚園ころは確かに先生がお部屋を掃除をしていた印象がなので、もしかしたら委託か、子どもが帰ったあとにでも掃除をしていたのかもしれません。今後ほとんどの保育園、幼稚園をはじめ学校などの施設が掃除の業務委託をしていくのは、どうかと思います。それは掃除だけでなく給食もそうです。それはお金の損や得とかでなく、正規職員だからこそ、分かち合えるものというのを大切にしていきたいと思います。
最近休みの日に家内が所要で出かけることがあります。息子と二人でいるのですが、流しの洗いものや洗濯物を干したりしていると息子が「どこを掃除する?」と箒と塵取りをもって尋ねてきます。私は、じゃぁーあそことあそこを頼む、と言い、私自身も掃除機で掃除を始めます。男二人での作業ですが結構楽しいものです。そうしたお掃除の一環で「ガラスを新聞紙で拭く」ということを試してみました。確かにガラスはきれいになります。化学洗剤を使用するよりはいいですね。もっとも閉口したのはガラス磨きを終えた後手が真っ黒になっていたことです。新聞紙のインクが手についてきたのでしょう。園への掃除専門者を入れることが職員さんたちの美化意識の向上になれば、と願っています。