好奇心2

 日本の学力低下は、OECDが行うPISAの学力調査によって言われることが多いのですが、私は、将来を見通しての教育改革を行う場合は、その結果を恐れる必要はないと思うのですが、どうもどうもあたふたとして、短期的な対策を練ろうとしている気がして心配なところがあります。それよりも、今の子どもたちは、学ぶ意欲をはじめとして、全体的に意欲がないことが気になります。その意欲は、昨日のブログでも書きましたが、大人が、子どもの好奇心の芽を摘んでしまっていることが多いような気がします。それは、少子化によって、子どもの世界に大人が過干渉になっているということが影響しているでしょう。
 それと、好奇心には、大人と子どもとの間の強い信頼関係が影響してきます。赤ちゃんの時から、子どもたちは大きな好奇心を持って、物事を見たり、触ったり、体験をしていきます。その時には、初めて体験することが多いのですが、当然、好奇心の裏には、恐れとか、失敗とか、マイナスになる可能性もはらんでいます。その恐怖を乗り越えて取り組もうとするためには、いつでも助けてくれるであろう大人が見守っていてくれるという安心感、信頼関係が育っていないといけないのです。つまり、好奇心を育てるためには、昨日書いたように環境を用意すること、大人の見守りが大切なのです。その見守りは、いつでも見てもらっているという信頼関係と、危険なとき、人に危害を加えるときなどにいつでも助けてくれるであろうというだけでなく、行動の規範を教えてくれるということもあります。しかし、むやみな制止は、子どもが持っている力を失わせることも多いことを知る必要があります。
 赤ちゃん学会の理事長である小西さんが、こんなことを書いています。「ハイハイが上手にできるようになった赤ちゃんは、自分の興味の向くままにどんどん移動するようになります。運動能力が育つと同時に、好奇心もどんどん強くなり、行動範囲がますます広がっていくのです。おもちゃなど興味の対象となるものを見つけると、一目散にハイハイで突進します。途中に、少々の高さの物や、時には人が寝転がっていても、乗り越えて目標に向かいます。こうした赤ちゃんの行動を見ていると、どんなところでもかまわずに移動してしまうかのように思えます。」好奇心は、危険を顧みずに突進していこうという力を生み出します。しかし、危険なところや不可能なことは大人がのぞいてあげたり、教えてあげなければと思います。ところが、赤ちゃんには「どういう所なら通れるのか」を判断する力が先天的に備わっていると小西さんは言います。
それは、ギブソンとウォークらにより考え出されたレッドクリフではなく、ヴィジュアルクリフ(視覚的断崖)という仕掛けを使った実験でわかっています。実験の内容は、台の半分を透明ガラスにした状態で、「台の地柄」と、「ガラスを通して見える地柄」を、同じ柄になるようにしておき、奥行きを知覚して、ガラスの手前で止まるかどうかをテストするものです↑具体的には、乳児を台の真ん中にのせ、両側からそれぞれ、母親に乳児を呼んでもらいます。すると、ガラスではない奥行きが無い方では、ハイハイしてくるのに対し、ガラスの奥行きがあるほうの台では、どんなに呼んでも止まってしまって、それ以上、動きませんでした。また、二つの台を間隔をとって置き、台と台に板を渡しておくと、赤ちゃんはその板の上をハイハイしますが、板を透明にすると赤ちゃんは渡りません。つまり、板を渡していなければ崖から落ちてしまうことが、赤ちゃんにはわかっていると小西さんは言います。
そして、こうしたことを判断する力は学習ではなく、赤ちゃんが生まれながらに持っているものだといわれています。それを大切に残しておこうという考え方が最近の育児の在り方のようです。