防災無線

 八王子市では、夕方「夕焼けこやけ」の曲がどこからともなく流れてきます。それは、夕方になる場合は、小学生にそろそろ帰る時刻になったという知らせでもあります。私が子どものころは、住んでいたのが下町でしたので、夕方になると夕食のみそ汁の具のために豆腐売りがラッパを鳴らしながらやってきます。そのラッパの音がするのを合図に家路についたものでした。
それぞれの自治体では、さまざまな曲が流れます。今日の新聞によると、岩手県宮古市では、シューベルトの子守唄が午後9時に流れていたそうですが、今月いっぱいで中止になるそうです。そこで、見出しには、こんなタイトルが付けられています。“「眠れー眠れー」眠れない子守歌中止へ”というものです。なんだかシャレになりませんが、「眠れー、眠れー」と流れる曲が、大音量のために、若い夫婦は「せっかく寝かしつけた子どもが起きて困る」、早朝の漁に備える漁師らは「寝たのに目が覚めてしまう」など「うるさい」と苦情が増えたためだそうです。とりわけ網戸にする夏場には苦情が殺到するそうです。確かに毎日午後9時に流れるというのは騒音かもしれません。市の担当課は「多くの市民のやすらかな眠りのためには、しかたありません」といっているそうです。
しかし、この曲はなにも住民を寝かしつけるためではないのです。市町村が防災行政のために設置・運用する防災無線である「市町村防災行政無線」の点検のためです。防災無線とは、人命に関わる通信を確保するために整備された専用の無線通信システムで、公衆通信網の途絶・商用電源の停電の場合にも使用可能なように整備されています。その中で、市町村防災行政無線は、市町村が整備するもので、3系統あります。一つは「移動系」と呼ばれるもので、防災情報を収集するため自動車へ搭載し、持ち運び可能な移動局と役場などの基地局とで通信するものです。「同報系」と呼ばれるものは、屋外スピーカーや戸別受信機で、住民に対して防災情報を周知するものです。今回の苦情から取りやめたのは、この系統に対してです。そして、「テレメーター系」というのは、観測点と指令所を結び、降水量・河川の水位測定などのデータを収集するために使用するものです。
どんな災害の時に住民に知らせるのかというと、「大規模災害発生時の避難勧告、避難命令などの告知」「緊急地震速報や武力攻撃等の緊急事態における国民への情報伝達」「火災発生の知らせ、消防団員の招集、鎮火報告」「戦争犠牲者追悼のための鐘・サイレン(8月15日、8月6日、8月9日)」などがあり、東京では、「光化学スモッグ注意報等の告知」に使われたり、地方では、「運動会の延期連絡」に使われることもあります。
また、各地でよく聞く音楽は、「朝・昼・夕(07:00・17:00が多い)の時刻を知らせる音楽・鐘・サイレン、児童の帰宅を促す放送」で、この設備が故障していないことを確認するための試験のために毎日放送されているものです。曲としてどんな曲が使われているかというと自治体によって違いますが、多くは「夕焼小焼」とか「ふるさと」です。あと、「家路」「赤とんぼ」「蛍の光」「エーデルワイス」などのようです。朝夕曲を分けるところもあり、朝は「メヌエット」というところもありました。また、夏は「やしの実」、秋は「この道」、冬は「浜地鳥」というように季節によって変えるところもありました。モダンなところでは、「イマジン」が流れるところもありました。
まあ、どんなに良い曲であっても、点検のためであれば仕方ありませんが、なにも午後9時に流すとか、朝晩流さなくてもいい気がしますが。