どっち回り

先日、園児が職員室に入ってきて部屋の中をぐるぐる回り始めました。子どもというのは、よく人の周りとか、部屋の中をぐるぐると回ります。そのとき、ふと、そこに同席していた友人と、「いったい、子どもはとっさにどっち向きで回るのだろうか?」という話になりました。友人は、「人というのは、どうしてか左回りに回るのだよ。」確かに、部屋でぐるぐると回っている子は、左回りでした。「左に心臓があるから、それを守るように回るのじゃないの?」という話になりました。
そう思って身の回りの眺めると、右回りのものと、左回りのものがあります。東京の山手線は、丸く走りますので、「上り」「下り」ではなく、右回り、左回りといいます。そして、右回りのことを「外回り」、左回りを「内回り」といいます。これは、左側通行にすると、円の内側が左回りになるからです。
また、よく右回りのことを「時計回り」というように、時計は右回りです。時計や暦の始まりは「日時計」です。日時計は、棒などの影の動きによって時間を知るのですが、太陽が東から南を通って西に行くと、影は右回りになります。ただ、それは北半球でのことで、南半球では反対になります。しかし、このことから、時間の経過を表すような時計や、黄道12宮や十二支十干なども右回りに書くようになったのでしょう。それは、北半球では、地球の自転と公転も左回りで、ですから台風も左回りです
一般に、ねじ、ボルトや瓶などのキャップは、右回りに回すと締り、左回りに回すとゆるむように作られています。それは、右ききの場合、右回りの方が、力が入りやすいからです。人間は右利きの人が多いので、右手を使って、何かを回すには右回り方が、都合がいいのです。ほかにも、ゼンマイや、重りを巻き上げるときとか、レコードの回転方向も右回りになっています。ただし、力を入れて欲しくないときは、たとえば、一部のガス管では、しめる時に力を入れすぎて亀裂が入るのを防ぐために逆向きになっています。
では、人が回るときにはどちら方向なのでしょう。オリンピックの陸上競技でもそうでしたが、世界陸上でも学校の運動会でも、多くの陸上競技はほぼ必ずトラックを左回りに走り、野球でも左回りに走ります。じつは、トラックを左回りに走るのは国際陸連(IAAF)が競技規則として定めたのが始まりで、その国際ルールブックには「走る方向はレフトハンド・インサイド(左手を内側に)」と書いてあります。これが決まったのは1913年のことで、それまでは右回りに走ることもよくあったそうで、たとえば、1896年のアテネの第1回夏季オリンピックでは右回りに走っていたようです。
その理由にはいろいろな説があるようですが、スポーツジャーナリストの草分けである故川本信正さんは生前にそれをこう説明しています。「人間の足は左右で機能が違う。左足は身体を支える役割を持ち、右足はドライブをかけて推進する働きをする。トラックを曲がるとき、左足で身体を支えながら右足で加速して走るので、左回りのほうが理にかなっている」
どうも、左回りが人間にとって自然なようです。自分の手足で競技するスポーツはほとんど左回りで、ほかにも盆踊りも、避難するときのら旋階段も、癒しを与えるメリーゴーランドもみんな左回りです。ただし、緊張を与えるジェットコースターなどは右回りを基本に作られることが多いそうです。
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左回りに部屋を回っている子どもたちは、自然と走り回ることで、癒されているのかもしれません。