夢と職業

 東京都杉並区和田中学校校長には、リクルートからの民間登用で藤原 和博氏が就任して、様々な試みを行ったことで有名ですが、08年4月からは、代田昭久氏が就任しています。彼も、リクルートに入社しましたが、「いい大学に入って、いい会社に勤めれば一生安泰」という時代に、深く考えることなく志望校を選択し、就職した自身の経験から、キャリア教育の必要性を感じ、大学生向けの就職塾事業などを手がけます。その後独立しますが、昨日のブログで紹介した村上龍氏の本「13歳のハローワーク」に共鳴し、05年10月「13歳のハローワーク公式サイト」を立ち上げます。そして、それらの教育事業の一環で和田中とかかわったことから、一昨年から和田中学校校長に就任したのです。
 この公式サイトは、だれでも利用できますが、書籍同様に、自分の好きなことなどから職業が選べるようになっていたり、大人に質問ができたり、書籍の中ではできなかった双方向のやり取りが可能になっており、就職するうえで参考になる多くのメニューが用意されています。
 人は、好きなこと、好きなものを続けることができるような職業を選ぶのは大切ですし、そのような職業につくことができるのは理想かもしれません。しかし、小中学生のころから、どうせそんな職業はないだろうとか、生活のため、収入を得るために職業に就くしかないのだとか、諦めから働く意欲を失っている若者を多く見かけます。意欲を持つために、卒園、卒業の時に「将来、何になりたいか」ということを文集に書いたり、発表したりすることだけでも効果があるといわれます。どんな職業に就くかということは、夢を持つことであり、いろいろな職業があるということは、それだけ夢を持てるということです。
 そんなことで「13歳のハローワーク」では、「なにが好き」というような、好奇心を起点に、その周辺にどのような職業が存在するかをグループで学びます。こうして、職業のつながりを知ることで、将来の仕事の選択肢を広げようとしています。しかし、どんなことが好きかといっても、必ずしも人の役に立つようなことではないことがあります。それどころか、人に危害を加えるようなことが好きな場合もないとは言えません。しかし、この本では、そんな特別な趣味や好きなことを持っている人にも適職を見つけようとするところが面白いところです。もちろん、そこには著者の村上氏の独断と、彼のパーソナリティーが色濃く出ていますが。
例えば、「ケンカが好き」という子には、どんな職業が向いているかという助言はこうあります。
経営者:ケンカは非常にリスクの高いコミュニケーションで、かつエネルギーも必要だ。だから、モノやサービスを「売る」という仕事に、そのエネルギーを活かすことができれば、成功することもある。だが、当たり前のことだが、ケンカが好きというだけで、優秀な営業や経営者になれるわけがない。
警察官、自衛隊、消防官:いずれも治安や安全や平穏な生活を守る大切な職業だ。だが、意外にも、子どものころはよくケンカをしていたという警察官や自衛隊員や消防士は少なくない。そのくらいエネルギーを使う職業だということかも知れない。しかし、当たり前のことだが、ケンカが好きというだけで警察官や自衛隊員や消防士になれるわけがない。
教師:少年漫画には、かつて不良だった教師や、子どものころケンカが好きだったという教師がよく登場する。数は少ないが、子どものころは番長だったという教師もいる。ケンカが好きだったという教師は、ケンカが好きな子どもの気持ちがわかるかも知れない。だが、当たり前のことだが、ケンカが好きというだけで、教師にはなれない。