スイスの園

 ドイツの保育について、ブログで取り上げることが多いのですが、ある雑誌で聖徳大学の宮川さんという人がスイスの幼稚園訪問記を書いていました。スイスの幼稚園、小学校の方針は、「子どもをいかに自立させるか」であると小学校、幼稚園の長は明言したといいます。実は、この子どもが自分の力で生きていくスキルを学ばせるということの重要性は、ドイツを含めて、欧米ではどの国でも第一に挙げる方針です。また、保護者も自立を 園に対する要求として第一にあげます。宮川さんはこう言っています。
 「日本では、どうでしょうか。日本の幼稚園、保育園では、たとえば「いつもニコニコ元気な子どもに育てる」とか「情緒豊かな子どもに育てる」とか「子どもを健やかに育てる」といった園の方針が多いのではないでしょうか。勿論、日本の幼稚園教育要領や保育所保育指針でも子どもの自立は謳っています。しかしながら、振り返って、日本の状況を見てみますと、保護者や保育社の過保護とも思われる子どもに対する保育態度に少なからず遭遇します。このことは、決して悪い面ばかりではありませんが、子どもたちが成長して、社会人や家庭人になった時の真の意味での自立を妨げている可能性も否定できません。」
 最近、少子社会になったために、わが子に手や目が届くようになりました。手をかけられるようになりました。しかし、目が届くあまりに、危険や大変さに気がつくようになり、子ども自らその状況から脱しようとする前に、大人がその状況から子どもを救いだしてしまうことが多いようです。スイスの幼稚園のおやつの時間にこんな光景が報告されています。
「スイスでは、おやつは日本のように栄養士さんや先生が準備をするのではなく、2人の当番の子どもたちが、おやつの準備を始めました。男の子は、皆のためにリンゴを切る係です。小さなナイフを使って、リンゴを切り始めました。しかし今一つ上手に切れません。担任の先生は、お手本にリンゴをこういう風に切るといいと、ほんの2切れか3切れ切ってみせました。男の子は、先生から教えられたように、リンゴを切る作業を続けました。日本ではどうでしょうか。子どもが手にけがをしたらどうしよう。他の子どもたちを傷つけたらどうしようと考えてしまうかもしれません。このことを担任の先生は、次のように説明しました。子どもに危険であるから、ナイフを持たせないのではなくて、ナイフの危険を認識させつついかに危険を回避するかを、実際にナイフを使いながら学ばせるのがよい。勿論ナイフを使わせることについて、保護者に説明をして、同意を得ているとのことでした。こうした子どもたちの自立への訓練がごく自然に行われているのです。」
 昨日のテレビで、茂木健一郎氏が「育児とは見守ることである」と言っていました。見守ることで、過去の天才は生まれてきたという実例も出していました。しかし、それはとても難しいことです。というのは、傍から見ると「見守る」ことは「放っておく」ように見えるからです。そのどちらかは、見ている本人でないとわからないことが多いからです。たとえば、前述のナイフを使う場合でも、使おうとしているこの発達をきちんと理解していなければなりませんし、子どもを信じないと見守れません。もっと、子どもを信じるべきです。その心があれば、放っておくことにはならないのです。

スイスの園” への4件のコメント

  1. 昨年、私の住む県のある小学校で、高学年のクラスの子供が、同級生にからかわれたことに腹を立て、その子の背中をナイフで刺したという事件がありました。事件の背景についての詳しい報道はありませんでしたが、その後、小学校では、命の大切さを教える授業をして、教室から彫刻刀などの刃物を撤去したそうです。この子の起こしたことは確かによくないとは思いますが、彼がどういう環境で育ってきたのか、また、小学校での友人関係はどうだったのか十分に検証されたのか気になります。なぜなら、何か事があればこの子と同じように「きれて」しまう子どもたちが増えているからです。少年たちの起こす問題の原因は、多分に幼児期に「自立」と「自律」を獲得できていなかったからだと思うのですが…。スイスでは、子供たちがナイフを使って給食のお手伝いをするということですが、とても今の日本では考えられないことですね。

  2. ナイフの使用について同意を得ているということですが、保護者が園に第一に求めるのが自立なのであれば同意も得やすいでしょうね。「子どもをいかに自立させるか」ということを園も保護者も一緒になって目指す関係は、子どもにとっていい影響を与えると思います。保育者が子どもを信じて見守り、それを保護者が信頼してくれる、そんな関係作りをしていかなければいけないと思いました。

  3.  スイスの幼稚園も小学校の方針が「いかに子どもを自立させるか」ということは、やはり世界の教育方針は、子どもに自立させるという事をとても重要にしているのですね。藤森先生のブログで世界の保育内容を読むたびに日本はどうして変わらないのかな?と毎回思います。ナイフの例も日本ではそう簡単に出来ないと思います。やはり国全体が教育の理念が最終的には一緒だからだと思います。そうでなければ保護者も同意はしないですし、先生も子どもにナイフを持たせないと思います。
     私もそのテレビをちょうど見ました。茂木さんが「見守る」という単語を何度も発言をしたときは本当に鳥肌がたってしまいました。だんだんと子育てに対する考え方が変わってきているんだな、と実感しました。

  4. 今回はスイスの実践例を紹介頂き、「子どもの自立」ということが優先課題になっていることを知りました。残念ながら、わが国においては「子どもの自立」を願っているのは成人に達しようかというお子さんをお持ちの親御さんのように見受けます。幼児や小学校の生徒に「自立」を求める親御さんの例を私はあまり知りません。少子社会になり、また晩婚による高齢出産が増加している昨今、生れてきた子どもたちは大人の過剰ともいえる愛情の下で育ちます。よって親への依存は時に目を覆いたくなるほどです。またその反対に子どもへ依存する親にもやれやれと思います。共依存の親子関係の矛先は親子の依存を許してくれない場所に向きます。そうした場所に学校や就学前施設があります。

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