芝居

 私の自宅のある町内では、割と素人落語が盛んです。たまに、町内寄席が開催されたり、落語家を読んで余生を開催します。日曜日の新聞のチラシ広告に「鹿芝居」が開催されるという案内がありました。
 芝居では、普通は俳優が演技をしますが、そのほかにもいろいろな人が演技をすることがあります。特に、同じ芝居の中でも歌舞伎のように地域で発展してきたものは、「素人歌舞伎」と呼ばれるようなさまざまな職業の人、例えば、農業、商店主、会社員等が上演する歌舞伎もあります。また、地域によっては、子どもが演じる「子ども歌舞伎」があることもあります。また、素人芝居と呼ばれるものに、作家の人たちが演じる文士芝居も有名です。
 誰が演じるかというだけでなく、何人で演じるということであれば、よく尾形イッセーが演じるような「ひとり芝居」という、一人で演じるような芝居もあります。
 そのようなさまざまな芝居の中で、噺家が芸人の面白さや芸達者ぶりを盛り込みながら楽しませてくれる、「噺家芝居」を縮めたものの「鹿芝居」というものが、明治時代から寄席などで行われてきました。「はなしか」芝居を縮めて「しか」芝居です。いかにも、噺家がやる芝居の名前らしいですね。また、落語家がやる芝居だけに、ハプニングがあったり、オチがあったり、ずいぶんと楽しそうです。これが、私の地域で催されるのです。
 この知らせのチラシには、こんなことが書かれてあります。
「鹿芝居は三遊亭圓朝の時代から、盛んに行われていました。この時代は素人芝居も全盛で、各町内や大店では余興と称し、大きな規模のモノから小さな芝居までかなり盛んだったようです。大正から昭和にかけては、有名小説家たちの文士芝居も盛んに行われました。」
 映画などなく、民衆の楽しみは芝居が中心だったようです。しかも、それは、見物するだけでなく、自ら演じる楽しさもあった素人芝居も盛んだったようです。この素人芝居は、素人だけに失敗や、あせりや、ぎこちなさも余興のうちだったようです。そんなことが、チラシにも書かれています。
「なれない草履履きで高座に上がるため、草履を履かずに外を歩いてきたり、大事な小道具を持たずに舞台に上がってしまうなんて事がしばしば起こってきます。穴を埋めようと芝居の途中だというのに、のこのこ楽屋に戻ってしまい、かえって大きな穴が空いてしまうなんて事もあります。まじめにやればやるほどお客様が大笑いするというのも、噺家役者にとってはちょいと悔しい処でもあります。」
 そんな鹿芝居の出し物は、「らくだ」というものです。
この話は、長屋に住む本名が「馬」で、あだ名が「らくだ」という人物の話です。
この「らくだ」というあだ名ですが、1821年に両国に見世物としてきたラクダを見た時に、あんなにも大きくても役に立たないと江戸っ子は考えたようです。そこから体だけでかくって役に立たない者を「らくだ」と言いだしたようです。
 この話の内容は、昨日のブログではありませんが、フグを食べたせいか、ラクダが死んでしまったということから始まります。「真打の大ネタ」と称される古典の大作のようですが、本題は「駱駝の葬礼」といわれるように、始まりから主人公のラクダは、死人として登場する珍しい話です。死というものでさえ、ネタにしてしまう落語の世界はたくましいですね。

芝居” への4件のコメント

  1. 落語というような伝統的な芸能に触れるには、うちのような田舎は絶対的に不利ですね。やっぱりライブでと思いますが、滅多にそんな公演もありません。その点、都会は羨ましいですね。昔見た映画で、がんで余命数ヶ月と宣告された落語家が、一生の思い出に、日本縦断の旅に出るという話がありました。旅の途中で知り合った医師から頼まれて、ガン病棟の患者の前で落語を披露。彼らの笑い声に励まされて、生きる意味を見つけていくというとても感動的なストーリーでした。映画の中で、「笑いはガンを退治するMK細胞を活性化させる働きがある」とこの医師が語っていましたね。「死をもネタにする」ぐらいの落語ですから、人を笑いと共に死の恐怖を吹き飛ばしてくれるんですね。

  2. 落語は一度だけ見たことがありますが、その世界や噺家の技に驚かされたのを覚えています。うまく表現できませんが、やはりプロはすごいと感じました。そんな噺のプロがやる芝居はどんな感じになるのか興味があります。1つのことを突き詰めて取り組んでいる人がそれを生かして他の分野にも取り組むことは、その経験がまた自分の得意分野にも生かされてくるということもあるんだろうと思い、考えさせられました。

  3. 「鹿芝居」、初めて知りました。何のことだろうと今日のブログを読んで行くと「噺家芝居」、略して「しか芝居」。私好みのネーミング。いいですねぇ。しかも町内寄席、というのもこれまたいい。気楽に「落語」や「噺」に触れられる。今のところやることが多すぎて「落語」をじっくりと視聴することができませんが、余生の楽しみに寄席を残して置くのもまった一興。楽しいことが次から次へと出てきますね。「死というものでさえ、ネタにしてしまう落語の世界」に私が接したのはNHK連ドラ「ちりとてちん」の中で渡部恒彦さん扮する落語家草若師匠の「愛宕山」。「ひばりがピーチクパーチク・・・その道中の陽気なこと!」。死んだ人々のご一行様の陽気な道中。本当に素晴らしいと思いました。

  4.  以前、藤森先生のブログで「落語」についてのブログを読ませていただきましたが、落語というものは日本人としての生き方を教えてくれるものと書いてあったような気がします。そのときから落語に対してのイメージが全く変わりました。そんな落語が先生の町内で素人とはいえ開かれているのは、楽しめるかもしれませんね。そして、「死」も笑いに変えてしまう落語は自殺大国の日本では役に立つのではないのかな?と思いました。

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