身長と火

 今、私は、保育室のスケールがどのくらいがよいのかを検討する委員会に幹事として参加しています。それは、とても面白いのですが、なかなか難しいものです。というのも、じっとしている人のスケールと、何かをしている人の必要なスケールが違うからです。そして、何かをしているというと、何をしているかによっても違うのです。もし、学校の教室のように全員が席に座って先生の話を聞く場合と、グループで子どもたちが話し合うときと、子どもたちが作業をするときとそれぞれ必要な大きさが違うからです。
 かつて、やはり保育園の建築基準を検討する委員会に出ていたことがありました。そのときに、避難階段の幅をどうするかという検討をした時に、一人の大人が下りることのできる幅があればいいかというと、実際の園では、大人は子どもを抱っこしたり、手をひいたりして下りることになるので、幅は広くとる必要があります。
 また、人のスケールは、年齢によって違うだけでなく、国によっても、時代によっても違います。私の園には、エレベーターがありますが、それに乗る時にみんな気にするのが、乗る人が多すぎて、いつ「ブー」となってしまうかです。どのエレベーターにも定員と、最大総重量が書かれてあります。エレベーターの積載量は、500キロとか900キロとか1トンとかで定義されていますが、定員はそれを「ひとりあたり65キロ」で計算されています。これは、「建築基準法施工例第129条の5」と「JIS規格」によって決められています。しかし、全員が65キロ以上の男の人だけで乗る場合とか、体重が多い外国の人が乗る場合はどうするのでしょうね。少し前のデータですが、厚生労働省健康局によると、年齢によって違いますが、一番重くなる30?39歳での平均が、男性が170.6cm68.2kg、女性が157.6cm53.5kgというようになっていました。日本では、やはり65キロが妥当なのでしょう。
ただし、現代の米国人の体格は非常に増えていることに危機感があるようです。米国立保健統計センターによると、20?74歳の成人について、平均体重は男性が60年の75.4キロから86.6キロに、女性も63.6キロから74.5キロに増えています。そんなアメリカのエレベーターの基準体重はどのくらいでしょうね。
身長にしても同様なことがいえるようです。キッチン台の高さも、ちょうど良い高さは、身長の半分に5センチ足した高さといわれています。ですから、当然昔よりも平均身長が高くなっている今は、キッチン台も昔より高くなっているようで、80センチから85センチが多いようです。身長について、先週の金曜日の朝日新聞のコラム天声人語に「人間の身長と火について」面白いことが書かれてありました。
「人間の定義は様々だが、「火を使う動物」とも言う。太古から火の扱いに長じてきた。その理由について作家の池澤夏樹さんが、「人の身体サイズは火を使うのにちょうど良い大きさだった」という説を引いている(『母なる自然のおっぱい』新潮社)▼人がもしネズミのようなサイズだったら、身の丈に合うのは極小の焚(た)き火だ。消えないようにするのは至難の業だったろう。逆にゾウのように大きければ、山火事の心配のない焚き火場を見つけるのは難しかったに違いない▼つまり人間は、燃やし続けやすく扱いやすい火の大きさに、ぴたりのサイズに生まれついたのだそうだ。」
 最近、火事が多いのは、人の身長が伸びすぎて、火との関係がアンバランスになってきたからかもしれませんね。