塩2

塩は、いくら体に良いからといっても、それだけで食べるものではありません。ただ、激しい肉体労働をする人は、汗で大量の塩分を失いますので、塩をなめながら仕事をするということはあるようですが。しかし、特に日本では、塩はそのままで食べないで、いろいろなものに利用されています。日本の伝統食である味噌、醤油、漬物、梅干等に使い、食を豊かにしたり、保存食としても重要な役割を果たしています。世界1と言われる日本人の平均寿命を支えているのは伝統食世代であり、この人たちが長生きするようになったことが長寿世界1の一番の要因と考えると、塩こそその陰の存在ともいえるかもしれません。
徳川家康はある日、側に仕える阿茶の局に、「この世で一番うまいものは何か?」と尋ねた答えに、「それは塩です。山海の珍味も塩の味付け次第。また、一番まずいものも塩です。どんなにうまいものでも塩味が過ぎると食べられなくなります。」と答えと言われています。塩はさじ加減ひとつで、他のものの味を引き出します同じように。指導者もまた、家臣の心を巧みにとらえ能力を引き出すことが肝心ということを、暗にほのめかした局の答えに、家康は深く感銘し、以後教訓としたといわれています。それは、教育にも言えます。教師が強すぎず、教師という環境が子どもの持っている力を引き出すのです。また、それが「いい塩梅」なのでしょう。
人間の体は塩を必要としていますが、塩の過剰摂取は、高血圧、脳卒中、さらには胃ガンなどを引き起こす恐れもあり、体にとって良くないということは一般的によくいわれます。人が一日に体外に排出する塩分は1.3gだと言われていますので、、健康体であれば、最低でもそのくらいの塩分が必要になります。ではその適量とはいったいどれくらいなのでしょうか? 人が一般的に美味しいと感じる塩分濃度は0.8%だといわれています。これは人間の細胞外液の塩分濃度の数値に一致します。 つまり適塩を守る=体液濃度を維持すること そのために守るべき摂取量は10g、すなわち小さじ2杯分です。
ナメクジに塩をかけると縮んで死んでしまいます。それは、ナメクジの体の殆どは水分で構成されているため、塩をかけると浸透圧の関係で水分を失わらせてしまうからです。ですから、すっかり元気がなくなることのたとえとして、また、苦手なものの前に出て萎縮してしまうことのたとえとして「ナメクジに塩」と言いますし、同じように塩をかけると縮んで死んでしまう「ひる」にたとえて、「ひるに塩」といって、忌み嫌う苦手なものに直面して縮こまることのたとえとしてや、弱って足腰が立たなくなることのたとえとして使います。同様に、青菜に塩をかけると、葉や茎に含まれた水分が外に吸い出され、しおれてしまいます。そこから、急に元気をなくしてしょげるさまを、「青菜に塩」と言います。
体に良いものは、その使い方で悪いものになってしまうことが多いのです。「塩たらず」という言葉は、「塩はほどよい量を使わないと食べ物の持ち味を引き出せない。塩が足りないと間のぬけた味になってしまう」ということから、人がのろのろしていること、能力が低いことを表します。ヨーロッパには、「塩の豊かな人」という言葉があり、すぐれた人、教養のある人を表現するときに用いるようです。
そして、子どもは、「手塩にかけて」育てないといけないのです。自分の手で塩をふり、時間をかけて漬け込む漬物や、手のひらいっぱいに塩をつけて握りしめるおむすびのように、昔から手に塩をつけて丹念にものを作る行為には、愛情が込められています。