すばる

枕草子の二三五段には、こう書かれています。
「星は 昂星(すばる)。牽牛(ひこぼし)。明星。長庚(ゆうづつ)。流星(よばい星)をだになからましかば、まして」
(星はすばる、ひこぼし、明けの明星、宵の明星が良い。流れ星も少し趣がある。尾を引かなければもっとよいのだけれど。)
昂星は「すばる」のことで、牽牛とは「彦星」(ひこぼし)です。明星は、「暁の明星」のことで、夜明けに東天に見える金星のことです。それに対して、夕暮れに西天に現れる金星の「宵の明星」は、夕方に見えるということで「ゆうづつ」といいましたが、これは見える時刻によって名前を変えたというよりも、同じ金星と思わず、違う星と思っていたのかもしれません。「よばい星」とは、流れ星のことをいいます。そもそも「よばい=婚ひ」は女性に求婚する意味ですが、流れていくさまが女性のところに通っていくように見えたのでしょうか。ただ、流れ星は尾を引きますが、清少納言は、「尾などないほうがもっといいわ」というのは、どうしてでしょうね。尾を引くからいいと思うのですが。
 どの星が「いとおかし」なのかは、清少納言の意見には賛同できないところが多いのですが、真っ先に挙げている「昴」は少しわかる気がします。この「昴」は、まさに今の季節を代表する星で、その光は昔から魅了してきたことでしょう。
この昴は、「プレアデス星団」といわれるように、生まれたばかりの青白い星が百個以上も集まり、星々を青白いガスが取り巻き、たいへん美しい姿に見えます。そのようにいくつもの星の集まりということで、「すばる」という和語は「統一されている」「ひきいられている」という意味で、一つの星の名前ではなく、星団をひとくくりとしての名前です。万葉集で「須売流玉(すまるのたま)」、日本紀竟宴和歌で「儒波窶玉(すばるのたま)」などといわれるように、玉飾を糸でひとくくりとしたものを「すまる・すばる」と呼びました。
 肉眼でも5?7個の星に分かれて見えることから、ギリシャ神話では、「プレアデス星団」の話の中でのプレアデスは、「オリオン」に追われて星になった7人姉妹だとされています。このため、「プレアデス星団」には、7人の姉妹と、父「アトラス」、母「プレイオネ」の名前が残っています。 プレイアデスは女神アルテミスに仕えていました。この「プレアデス星団」は、おうし座の背中に輝いています。また、同じくおうし座にあるヒアデス星団のヒアデスの7姉妹は、アトラスとアエトラの娘たちであり、プレイアデス姉妹とは異母姉妹の関係です。
 いよいよ、今日で今年も終わります。来年はどんな年になるのでしょうか。世の中は不況だと騒がれています。先行きが不安になることもあります。そんなときには、広い、雄大な空を眺めてみましょう。人間は、大きな夢を持てる生き物です。大きな空を眺めて、壮大な物語を語り、寒い夜でも、そこに瞬く星の美しさに感動してきました。
 来年は、世界天文年で、丑年です。夜空に輝くおうし座の背の「昴」を見つめていると、いくつかの星の集まりが美しい光を作っているというように、子どもたちがそれぞれの光を放ちながら、その集まりがより美しい光になるようにと願ってやみません。
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今日の月