世界の教育改革

今年の3月、日本では「学習指導要領」「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」が告示化され、新しい時代の保育、教育を目指そうとしています。今回の日本における改定はどのような意味を持つでしょうか。OECDが行ったPISAの学力調査結果によって、いわゆる先進国といわれている国々は様々な教育改革を行っています。では、そのほかの国々はどうでしょうか。ちょっと古いデータ(2001年ユニセフ)ですが、余り見る機会が無いので、とても面白く読みました。
 まず、バングラデシュの学習法です。この国の課題は、初等教育の就学率に加え、中途退学です。少なくとも小学校の5年間は子どもが自分から学校を離れていくことがないような学校づくりが求められています。そのために、どうしたら楽しくかつ十分に基礎教科が学習できるかということで、「M I理論」に基づいた多角的教授・学習法【Multiple Ways of Teaching and Learning:M W T L】と呼ばれるアプローチが試みられています。MI理論とは、「人間は、ものごとの認知や学習を通じて少なくとも7つの知能がはたらく」とするガードナー博士(ハーバード大学)の説です。7つの知能とは、「言語」「論理・数学」「視覚・空間」「音楽・リズム」「身体・運動」「対人関係」「自己内省」です。
「教師が話しつづけ、おうむのように繰り返させるだけの授業では、すぐにあきてしまいます。今は、歌う、踊る、演技するなどの活動を取り入れながら教えています。子どもたちはすぐに集中し、学習の手応えも感じられます。」と実践した教師は語っています。そして、この新しい授業をはじめてから、出席率が次第に上がってきて、子どもたち自身が「学校に行こう」と熱心になっているといいます。読み書きのできない環境からやってくる子どもたちは学校に対して何の準備もありません。従来の教科学習を突然はじめられたら、まったくついてこれなくなってしまいます。それを、参加型活動をベースにした授業をおこなうことによって、子どもたちが自分で何かを思いついたり、興味を持ったりすると、学習が早くなるのです。ある教師は、「私たちは、いかにおもしろく、これまでと違った授業ができるかを考えなければなりません」と話しています。ただでさえ学校をやめざるを得ない状況が子どもたちを取り囲んでいる中、せめて学校を子どもにやさしい、子どもが本当に学べる空間にするための取り組みが広まっています。
 この国のように、学校が面白くないと思っている子どもたちが日本でもたくさんいます。バングラデシュでは、家庭の事情や、社会の状況がその理由の中にあるかもしれませんが、ずいぶん前から調査では、日本では子どもたちが学ぶ意欲がなくなってきていることが言われています。それを、ただ子どもが悪い、親が悪い、制度が悪いというのではなく、もう一度授業のやり方を見直すことも必要な気がします。今の子どもたちが興味・関心を持ち、自ら学ぼうという意欲を持った子にするのは、教師が、ただ淡々と黒板に向かって物を書いたり、教科書を読み上げるような授業をしていたら、今、面白いものが巷に満ち溢れている時代では、子どもたちは興味を持つわけはありません。
 教育改革の動機は、国によって事情が違いますが、その試みは参考になることが多くあります。明日は、タンザニアの試みを紹介します。

世界の教育改革” への4件のコメント

  1. 学校の入り口で興味を持てなかったら、教育にどんな目的があったとしても意味が半減してしまうでしょうね。最初から興味を持って取り組めるのが大切だと思います。バングラデシュの教育をはじめて知りました。問題点をきちんと押さえ、その解決のためにはどうすれば言いか考え具体的に動いているところはすごいですね。日本でも、今ある問題を大人が本気で問題と考えるところからスタートしなければ変わっていかないと思います。子どもの問題ではなく、私たち大人一人ひとりの問題です。子どものために、国のために、本気を行動で見せなければいけない時期なんだと思います。

  2. 知能といえばIQと思っていましたが、MI理論によれば人には多様な知能(可能性)があって、その発達を促すのが教育だということを理解できます。世のいう「天才」と呼ばれる人たちには、一面発達の偏りによる障害を抱えていた人もいたというのもうなずけます。この理論に基づいた教育は、当然画一的なものではなく、「個に応じた教育」ということになります。これまでの日本の学校教育は、一斉に同じことをさせる画一的なものでありながら、アメリカよりも高い学力を維持してきました。ガードナーはその理由を、放課後の塾や家庭教師(あるいは親)の力によるところが多いと言っています。ところが、最近になって、授業がうまく成立しなくなったり、経済的格差で塾にいけなかったり、子どもを顧みない親の増加で、その援助も期待できなくなっていると言います。結局のところ、学校教育の在り方、具体的には授業を子どもの興味関心を促す形に変えていくことが求められると思います。学習教育要領の改訂というと、学習内容が増えたり減ったりということばかりが話題になりますが、今度の改定で授業の手法にいくらか変化が生まれるのでしょうか。

  3.  以前、藤森先生は子どもが授業をちゃんと受けれない理由は子どものせいでなく、子どもが興味を持つような授業をしない担任の先生がいけない言われていましたが、私もそう思います。バングラディッシュの教育方法は私も初めて知りましたが、やはり世界はどこも似たような形態なんですね。いかに子どもが集中できるような授業を先生が用意するかが一番大切だと改めて思いました。日本は今のところ先進国に入っていますいが、教育に関しては本当に世界から遅れていますね。
     私は学生から社会人になって二年目ですが、世の中にはとても面白いものがたくさんあると、ようやく気づきました。そんな面白いものを子ども達にたくさん教えてあげたいと思います。

  4. 20代30代の頃はよく東南アジア、南アジアの国々に行っていました。今から十数年前あるいは四半世紀前のことですが、その時、各国の子どもたちや青年と接して強く感じたことは、学校に行って勉強する、勉強してさまざまな知識や思考を身につけてよい職業に就く、という気概を漲らせている、ということでした。今日のブログではバングラデッシュの学習法が紹介されました。「おうむ返し的繰り返し学習法」では自分たちの生活が良くならないと認識する子どもたちは親の願いや子ども自らの判断で「中途退学」してしまいます。家を助けるため少しでも収入が欲しいからです。しかし政府の考えは違います。一人でも多くの優秀な人材の登場こそが国を築き上げると考えています。すると「教育」の意義が大変重要なものとなります。「中途退学」者をひとりでも出すということは国の未来を危うくすることに繋がります。

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