渋み

 宇佐の宿で、夕方少し周りを歩いてみました。夕暮れが迫る中、すでに刈り取られた田が広がり、畦の木々は色を変え始めています。そんな秋の深まり感じさせるもう一つが、あちらこちらに鮮やかなオレンジ色の実をつけた柿の木です。
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一緒に歩いていた若い男性職員が、ジャンプをしてその柿を一つもぎりとり、かじってみていました。一口かじって、奇妙な顔をしています。私は、「おいしい?」と聞いてみると、首を傾げています。もう一口食べて、なんともいえない顔をしています。どんな味か聞いてみると、「なんだか、口の中が、もわもわするような、なにかがへばりつくような気がする。」といったので、「それって、渋いということじゃないの?」「へえ、柿が渋いというのを、初めて知った。」といって感動していました。私たち子どものころは、よく軒下になっている渋い柿を取って食べたものでした。しかし、今は、柿は売っているものを買います。そのとき、渋いものは売っていません。
食物や飲み物はさまざまな味がします。これらの味覚は化学物質による化学刺激です。人間が感じる味覚は大きく分類すると、甘い、塩辛い、酸っぱい、苦いの4種類に分類することができます。料理などでは、これには、辛いと渋いは入らないといわれています。辛さと渋さは、舌が感じ取る味覚ではなく、触覚と痛覚が絡み合ってはじめてわかるもので、生理学的な味覚だからだそうです、
この中の「渋み・渋味」は、日本の美意識の1つであるといわれ、苦味・渋味の美味さは大人でないとなかなか理解できないものであるといわれています。ですから、「苦み」「渋み」は、「成熟した大人(特に男性)」の形容詞としても使われます。百科事典によると、大人っぽく落ち着いた雰囲気を表現して「渋い」と形容するようで、人として未熟なうちは 「甘いやつ」と言われ、人間が練られてくると「渋みが出てきた」とか「苦みばしったいい男」とか言われます。
ところで、柿には、渋柿と甘柿があります。なぜかというと、こんな理由があります。柿は自分の子孫を増やすため、その実を鳥や動物に食べさせ、その実の中にある種をばら撒いてもらわなければなりません。そのために実を甘くします。しかし、実の中の種が成長しないうちに食べられてしまっては元も子もありません。そこで種が成熟するまで実を渋くし、種が成熟してくるとその種から分泌されてくる成分で甘くなるという方法を考えたのです。
しかし、本当は柿が渋さから甘くなるわけではありません。柿の渋みはタンニンという成分です。そのタンニンは「水溶性タンニン」で食べた時に唾液に溶けるこため渋みを感じます。タンニンは話題のポリフェノールの一種で緑茶などにも含まれているものと同じものです。それが、熟してくるにしたがって、「不溶性タンニン」に変化してきて、唾液に溶けず、食べても渋みを感じなくなるのです。甘い柿を切った時ゴマのような黒い点が不溶性タンニンです。柿のさまざまな効用は、ポリフェノールタンニンに依存することが多いため、甘柿よりも渋柿の方が利用価値は高いとされています。
 スイート好きの男性が増えていますが、味覚を発達させる意味でも、苦味や渋みも味わって欲しい気がします。

渋み” への3件のコメント

  1. 柿が渋い理由を今日はじめて知りました。子孫を残すために様々なことが行われているんですね。そしてその仕組みに動物はきちんとしたがっていて、そんな循環ができていることもすごいと感じます。渋いものや苦いものは食べごろにはまだ早いものが多いと思いますが、人間は物によってはその味を好んで食べるというのもおもしろいです。子どもの頃は苦手でも、大人になると苦味や渋みがアクセントになったりします。植物も不思議ですが、人間も不思議です。

  2.  家の近くの公園に、柿の木があり、お腹が空いた時に友人とよく採って食べていました。その時に食べた柿は、家で食べるよりも何故かとても美味しかった気がします。私も渋柿を食べたことが無いので、口の中がどのようになるか知りませんでした。機会があれば私も体験してみたいです。
     子孫を残すために、柿は自分で実の甘さをコントロールしているのですね。そのために実を渋くさせていたとは初めて聞きました。自然の力というのは、とても凄いですね。また渋柿の利用価値は、甘柿よりも価値があるというのも、柿の優れた能力の一つですね。これから果物がとても美味しくなる季節になりますが、ただ食べるのでなく色々な種類の果物の力というのも調べてみようと思います。

  3. 確かに、「成熟した大人(特に男性)」に「渋いねぇー」とか「渋みが増してきた」等々の表現を用いたり、またそうした表現を耳にしたりすることがあります。またよく言われた表現が「甘いねぇー」でした。「渋いねぇー」と言われると自分がシックなんだと思えてやけに嬉しくなりましたが、逆に「甘いねぇー」と言われると自分の未熟さを見透かされたようで気分が落ち込みます。「渋い」がポジティブ、「甘い」がネガティブ、・・・。通常の「渋い」「甘い」から来るイメージとは真逆な関係が「渋いねぇー」。さて、柿の渋さ・甘さの話は利用価値大です。忘れないで覚えておきたいですね。種を保存する柿の変容も凄いことですが、その変容を知って柿の種の保存のために一役買っている鳥たちも凄い。もちつもたれつ、なんですね。

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