木箱

 今週の読売新聞の日曜版に青森県の弘前市が特集されていました。その中で、生活に溶け込んでいる「りんご文化」について書かれている部分があります。
 マツの木で作る「リンゴ箱」は、プラスチック製品が普及した現代でも、農業の必需品だそうです。この箱は、「乱暴に扱っても壊れないし、何しろ1箱300円前後で安いから。プラスチックのコンテナは、1000円くらいするからね。」と青森資材の社長さんは言っています。また、箱だけではなく、ヒバやヒノキを使った脚立も、農家には欠かせないそうです。「金属の脚立だと、肌触りが冷たくて使いにくいからね。高齢化にあわせて、木材を細くして軽量化するなど、今でも工夫していますよ。」と言うのは、建具店の人です。そのほかにも、ネマガリダケで作るリンゴかごなど、先日のブログで紹介した秋田杉を使った商品に限らず、この土地独自の文化から生まれた生活の知恵は、今でも進化しているようです。
 先日、いただいたリンゴは、ダンボールに入っていましたが、昔は、リンゴやみかんは、木箱に、おがくずや籾殻を、お互いがぶつからないようなクッション代わりにしたりもして送られてきました。八百屋さんの裏のほうには、それに入れられて運ばれてきたであろう木箱が積まれていました。
また、リンゴ箱やみかん箱の大きさは、逆さにするとちょうど机に良い大きさになるので、「三畳一間にみかん箱一つ」というように、学生の生活ぶりを表現したりしました。みかん箱は、そのように苦行振りを表すのには良いようで、むかし、ソフトバンクグループ創業者の孫正義は、自分が設立したユニソン・ワールドという会社で、アルバイト2人の前でみかん箱の上に乗って演説をしたことが知られていますし、民主党の小沢一郎代表が地方遊説の際にみかん箱の上に乗って演説をして回ったことが話題になりました。最近では、レトロブームで、インテリアとしても使われるようで、ネット販売で多く取引されています。
りんご箱は、基本的に、長い辺を「ガワ」といいますが、62cmあり、短かい辺のことは「ツマ」といい31cmあり、高さは31cmの木箱です。材料は、先に紹介した弘前のマツは、木が硬く、長持ちをするので高級品とされています。普通は、昔からブナやスギが一般的に使われていました。しかし、最近ではブナが稀少になったことからマツが主流となり、スギは価格を安く抑えたいときに使われるようです。リンゴは木の箱に入れると「色があがる」といわれていますが、特に脂分を多く含む松材がその効果は一番あるようです。また、柱などに木を使う場合とおなじように、その木の乾燥具合も影響します。「乾燥板」と呼ばれる板を使うと、箱にした後の狂いが少なく、隙間のない上質のものを作ることができますが、コストが高くなるため、余り乾燥させていない「生板」で製作し、それを乾燥させるのが主流だそうです。このように、材質や乾燥の具合によって値段は違います。
 「箱打ち名人」と呼ばれている人は、いまでも一日150個の箱を作り続けているそうですが、「機械打ちの箱に比べて、やっぱり手打ちの頑丈さにはかなわない」といいます。最後は、やはり人間の技ですね。