落語

 最近、私は講演することが多くなったので、少しは慣れてきた気がします。しかし、最初の頃は、余りうまく話すことが出来ませんでした。そんなときによく母から「少しは落語でも習ったら?」と言われました。全国には、話し方教室なるものがいくつもあります。人は、どうしても他の人とコミュニケーションをとらなければなりません。しかし、それが苦手な人は余り人と話しをしなくなります。ひとりで閉じこもることが多くなります。ある話し方教室の宣伝文句にこんなのがありました。
 「なりたい自分になる!話し方でお悩みの方。人間関係でお悩みの方。話し方が変われば、生き方が変わります。生き方が変われば、話し方も変わります。一歩踏み出す勇気があれば、あなたもきっと変われます。」
 話し方で生き方が変わるのですね。
 落語から「相手を意識した対話の大切さ、人前での表現力、江戸文化も学んでいる」というような実践報告が新聞に掲載されていました。その実践を行っているのは諏訪市立城南小学校の6年生で、総合的な学習の時間で落語劇に取り組んでいるそうです。児童たちは、地域の人たちとのかかわりを学ぶため、地元の噺家であるすし職人の小平晴勇さんに自ら講師を依頼し、行事の企画もしています。どうしたら表現できるか、何を意識して話したら人に伝わるかなど落語の基本を担任が解説します。「どんなキャラクターを演じるか、子どもやおばあさん、男の人など、自分がその役になる工夫が要るね」。声の大きさ、強さ、高低、速さとリズム、所作など。江戸文化の中では大家と店子など人間の上下もある。「上からの目線というと変だけど、落語では上手と下手も使い分けるよ」
 この授業を通じて講師の小平さんは、「子どもたちが人の目を見て話すようになったとか、先生の話をよそ見しないで聴くとか、効果を耳にしますよ。笑いを無くしたといわれる今の小中学生たちに、落語文化や笑いの大切さを伝えたい」と話しています。
 話し方を落語から学ぶという書籍も、いくつも出版されています。野口 卓 (著), 春風亭 正朝 (監修)の「落語に学ぶ話し方と名文句」(日本実業出版社)や、松井 高志 (著)「人生に効く!話芸のきまり文句」(平凡社新書) (新書)などがあります。
 また、落語からは、話し方を学ぶだけでなく、人生や人としての生き方、子育て、教育の考え方など学ぶことが出来ます。落語は江戸時代に生まれたものですが、単に面白いだけで楽しませるだけではなく、最後にはほろりとさせるものや、感動を覚えるものもあって、人間の本質を上手く捉え、時代を超えて共感を呼ぶ作品が多くあります。思わず笑ってしまう中から、先人たちが残した困難に打ち勝つ知恵や、心に深く響く学びのヒントを掴みとることさえできるのです。ですから、童門 冬二 (著)「人生で必要なことはすべて落語で学んだ」(PHP文庫)の本の宣伝文句に、こんなことが書かれています。
「こんな旅をしてみたい」「ダメ亭主ダメ女房」「嫌な奴を笑わせてやりこめる」「キレイな金の使い方」「“それを言っちゃーおしまいだよ”を言っちゃった時」など、家庭円満の秘訣や人間関係を円滑に保つ方法を、落語から学ぶ一冊。職人や商人、侍が織り成す落語ワールドは、まさに生きる知恵の宝庫。大の落語ファンが名作落語を引き合いに、軽妙に語る上手な生き方。「どうぞ“落語人間”におなりください」。笑いは本人を幸せにするだけでなく、周りも幸福にします!
落語でも聴いて、日本固有の笑いの奥にある生き方を考えてみることも必要かもしれません。